讃岐うどん遍路

うどん天国 空前ブームの深層

5.東京の陣

驚異的ペースで出店

うどん職人とのやり取りも魅力の「讃岐うどん大使 東京麺通団」=東京都新宿区
うどん職人とのやり取りも魅力の「讃岐うどん大使 東京麺通団」=東京都新宿区

本場で修行をした若手職人たちが、店頭で軽やかに麺(めん)を打つ。

 「こしがあって、おいしい。値段も手ごろだし。三日連続で来ることもありますよ」。近くの予備校に通う十九歳の女性二人組は、讃岐うどんの魅力にすっかりはまった様子だ。平日の昼下がり、店内には若い世代の姿が目立つ。

 東京・西新宿に九月にオープンした「讃岐うどん大使 東京麺通団」。首都圏で初めて、香川でのブームを支える製麺所型店の雰囲気を再現したうどん店だ。

 「製麺所型を輸出しなければ、讃岐うどんの全体像は見えない。自分でメニューをつくる自由さ、店員とのコミュニケーション。あの独特の緩い空気を東京で根付かせたいと思った」。うどん通らでつくる麺通団の団長で四国学院大教授の田尾和俊さんは語る。

 トッピングの半熟卵は一日に千個以上出る日もある。「常連客が増えたら、いろいろと実験をしてみたい。香川の有名店の麺を一カ月限定で出すとかね」。

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 東京で讃岐うどんブームが本格化したのは二〇〇二年の秋だった。JR四国グループのめりけんや(宇多津町)、はなまる(高松市)を先頭に、大衆セルフ型と呼ばれるセルフ式チェーン店がその後、驚異的なペースで出店を続ける。

 JR渋谷駅ハチ公口周辺は、異業種からの参入も含め十店近くがひしめく都内屈指の激戦地になった。

 セルフ式は、かけ小百円が相場という低価格が定着している。先べんをつけたはなまるの「まんまるはなまるうどん」渋谷公園通り店は一日約千人が訪れる同社一、二の繁盛店だ。

 九月にオープンしたこんぴらや(琴平町)グループの都内一号店「こんぴらや」渋谷センター街店も、かけは百円。とろろ昆布、玉ネギなど多彩な無料トッピングが人気を集める。

 今月五日には、まんまるはなまるうどんの真向かいに将八(観音寺市)が東京一号店となる「さぬき将八うどん」渋谷店を開店。かけ九十九円のセルフを中心にフルサービス、居酒屋のメニューも加える。

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 東京での讃岐うどん店は従来、フルサービスの一般店が散在していただけだったが、今やそば店やラーメン店もうかうかできない。

 全国で約百五十店を展開する最大手のはなまるは、ここ一年余の間に都内だけで約二十店を出した。めりけんやはJR東日本との業務提携で「さぬきうどん職人」を首都圏で八店出店、今月には都内初の直営店を開いた。フォー・ユーの子会社が運営し、全国約五十店を持つ「さぬき小町うどん」も都内に六店を構える。

 東京でのブームの背景にあるのは、安い、うまい、早いといった讃岐うどんの特色が大都市の生活スタイルに合う点。不況、デフレの時代も背中を押した。

 ファストフード感覚の浸透も見逃せない。学校帰りの女子高生らがハンバーガー店などと同じように気軽に立ち寄り、うどん一杯でおしゃべりを楽しむ。

 ただし、厳しい価格競争は経営の足かせにもなる。かけ小百円では通常、利益は出ない。それでもやむなく低価格路線で対抗を挑む店と、一線を画して味で勝負しようという店に戦略は微妙に分かれる。

 市場規模からすれば、東京での讃岐うどん店の参入余地はなお大きく、出店ラッシュは鈍りそうにない。「二〇〇七年に全国一千店舗」をスローガンにするはなまるをはじめ、首都圏に限れば「駅構内を中心に三十店以上の体制に」(めりけんや)「一年以内に五店くらい出したい」(こんぴらや)「直営で四、五店を」(将八)などと、各社は店舗網拡大の計画を練る。

 讃岐うどん東京の陣は、まだまだ熱くなりそうだ。

(2003年12月6日掲載)

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