讃岐うどん遍路

うどん天国 空前ブームの深層

4.競争激化

デフレで経営圧迫も

半生麺や乾麺の製造に追われるうどん工場の従業員=高松市内
半生麺や乾麺の製造に追われるうどん工場の従業員=高松市内

 「讃岐うどんの名を全国に知らしめた点では、非常に評価しているんだけど…」。県内で二軒のうどん店を経営する源内(さぬき市)の藤田幸雄会長は、複雑な表情をみせながらつぶやいた。「ブームで、うちのお客さんが増えたわけではないんですよね」。

 今回の讃岐うどんブームのけん引役は、製麺(めん)所で食べさせるタイプの店やセルフサービスの店だ。県内での出店も引きもきらず、店舗数は県の調べで九百一店(七月十日現在)あり、さらに増え続けているという。

 店が増えれば競争が生まれる。ブームの恩恵を直接受けないフルサービスの一般店や、贈答用や土産用のうどんを扱う製麺業界にも影響は及んでいる。

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 「今のところ、いいことずくめですよ」。手打ち式乾麺でシェア日本一を誇る石丸製麺(香南町)の石丸芳孝社長は、ブームを素直に歓迎する。昨年の盆明けごろから半生麺や乾麺の注文がぐっと増え、売り上げがこの一年間で15%近く伸びた。

 乾麺から冷凍麺まで手掛けるさぬき麺業(高松市)も恩恵を受けた企業の一つ。香川政明社長は「乾麺類は長く減少傾向が続いていたが、去年から反転。前年比で10―15%は増えたのでは」と話す。

 このほか、ここ数年の間に、工場の増設やラインの増強に乗り出す企業が相次いでいる。

 県製粉製麺協同組合によると、今年一―九月の県内の乾麺生産量は、前年同期比で一割程度アップ。全国でも2%ほど伸びており、業界内では「讃岐うどんのおかげ」ともっぱらの評判という。

 佐々木謙二専務理事は「もともと生産量が少なかったから伸びが大きくみえるだけ」とする一方で、「乾麺はゆで時間が長く敬遠されがちで、食わず嫌いの面があった。良さを知ってもらえたら、たとえブームが去ってもあまり落ち込まないだろう」と自信をみせる。

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 対照的に、一般店はブームを必ずしも歓迎していないのが実情だ。

 乾麺類製造とともに県内でうどん店十三店を展開するさぬき麺業にしても、香川社長は「工場はいいけど店がね」と口調が重い。出店ラッシュで競合店が増えたため、「うどんツアーの客が流れてきて、客数はやっとトントン」という。

 値段の安い製麺所型やセルフ型の店への人気は、業界全体のデフレ現象を引き起こした。同社は今年、顧客をつなぎ止めるため、やむなく値下げを断行。「作業効率を上げるなどして利益を確保しているが、ブームが去ったらどうなるか」と心配顔だ。

 善通寺市の一般店の店主は「これだけ競争が激しくなると、もうかってるのは行列のできる有名店だけでしょう。あとは経営的にしんどいですよ」とため息を漏らす。

 高松市内のチェーン店経営者は、ブーム自体に冷ややかな目を注ぐ。「はやらないから水を差しているなんて言われそうだが、今のブームは何か浮わついている」とばっさり。「変わり種メニューを作ってみたり、機械打ちのうどんでどんどん出店したり。衛生的に大丈夫なのかと思う店もある」。

 波のように訪れる県外客が、県内の出店ラッシュを辛うじて下支えしている。店主たちは口をそろえ、危機感を募らせる。「ブームはまだ続くだろうが、やがては沈静化し淘汰(とうた)が始まる。本当においしいものを作っていないと生き残れない」。

(2003年12月5日掲載)

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