讃岐うどん遍路

うどん天国 空前ブームの深層

2.学会発足

文化のにおい発信へ

日本うどん学会の第1回全国大会では、うどんの魅力やうどん店巡りの楽しさが報告された=善通寺市、偕行社
日本うどん学会の第1回全国大会では、うどんの魅力やうどん店巡りの楽しさが報告された=善通寺市、偕行社

 「えーなー。のんびりしてて。行列をつくらせて店側が申し訳ない、申し訳ないと言っている。讃岐うどんの周りについているお接待の心、雰囲気、気分が何とも心地よい。食べるのは速いが、スピリットはスローフードそのもの」

 社会派の評論から食文化まで手掛け、テレビのコメンテーターとしても活躍するコラムニスト勝谷誠彦さんは、讃岐うどんの魅力をこう分析した。

 十一月八日、善通寺市で開かれた「日本うどん学会」の第一回全国大会は活発な意見や研究報告で盛会だった。学会は空前のブームを受け、マーケティングや栄養学、食文化の切り口から学問的研究を進める目的で今年六月に発足した。会員数は五十七人で、うどん業界や大学関係者、一般の愛好者らが集った。

 開会あいさつで同学会会長の三宅耕三・香川短大教授は「ブームがなければこういう機会もなかった。うどんという素材を科学的に研究していきたい。うどん産業に間接的に貢献することが使命」と設立の目的を説明した。

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 研究発表で、ひときわ異彩を放ったのが高松市の会社員、崎洋之さん。一九九六年に勤務する会社内で参加者を募り、始めたうどん店巡りの趣味が高じて、「うどんツアー社」という同好会を設立した。

 案内したのは六年間で友人、知人のメンバーとその家族約百七十人。全国のほかドイツ、オーストラリアなど海外組もいる。案内したうどん店の数は八十二店。延べにすると約四百七十人、三百七十店を案内したことになる。

 参加者たちは、いろんな讃岐うどんがあることに皆声をなくして帰り、仲間を連れてリピーターになって帰って来るという。

 「まさに巡礼。客同士の交流や店主らとの何げないやりとりが、都会から来た人にとっては懐かしい田舎の光景に出合ったようで、何ものにも替え難い魅力のようです」

 森貞俊二・東雲女子短大教授は文学などの中に見るうどんを取り上げた。壺井栄の小説「二十四の瞳」の中に出てくる、うどん屋で売られていたという風邪薬「うどんや風一夜薬」を紹介し、風邪とうどんの深い結び付きに触れた。種田山頭火の詠んだうどんの句、吉永小百合さんが出したレコード「うどんの歌」にまでうんちくを傾け、文化的なアプローチの面白さを話した。

 同学会副会長で製麺(めん)業の福田豊さんは、つくる側の立場からうまさの秘密を解説。グルテンをいかに上手につくるかで麺のこしが決まり、熱対流が良い丸釜を使って高温でゆで上げると角の立ったうどんが出来上がるなど、知っていて役立つ豆知識を披露した。

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 雑多なようで、奥が深く、面白い要素を秘めた研究発表は、そのまま讃岐うどんの魅力の証明でもあろう。

 勝谷さんは指摘する。

 「究極のとか、こだわりのと言い出して、そばはどんどん高騰化して先細りした。うどんは何でもありが魅力」

 うまさの追求はもちろんだが、新メニューやうどんに合う副食物の提案、国内外の麺を通した比較文化論などを面白がったり、真剣に研究するのも学際、業際の大きなテーマに違いない。学会設立の動機ともなった「うどんに文化のにおいを」の幅広い活動成果が待たれる。

(2003年12月2日掲載)

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