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うどん県クロニクル(年代記)第1章・それだけじゃない香川県(8)讃岐のアポロン イケメン登場で一発逆転

2017/03/18
高速道路利用客を出迎える要潤さんのウエルカム看板=三豊市豊中町高速道路利用客を出迎える要潤さんのウエルカム看板=三豊市豊中町

 そろそろ、うどん県とその年代記に戻ろう。

 2011年のうどん県宣言は驚きの一語だったが、最大の驚きはうどんイメージの変化だ。昔からうどんはのびるとだらしなくなるが、加えて麺は白く、いささか太めで軟らかく、出汁(だし)まで透明で軽やかだから困る。

 そこへ行くとラーメンはインパクトがある。たとえばみそ仕立てやぴり辛の濃いめの出汁の中につやつや輝く中華麺がメンマやモヤシや卵や海苔(のり)や焼き豚、時にはトンカツまでも従えて、値段も軽々と千円を超えてみせる。強敵だ。

 これまでの闘いはうどんに分が悪かった。この形勢を一発で逆転したのは俳優の要潤さんだ。この超イケメンがりりしい瞳で差し出す一杯の素うどんポスターに、少女もおばさんも心をとろかせた、はずだ。たぶん。

 それはまるで15世紀の花の都フィレンツェで、画壇の革命児ボッティチェリが描いた名画「ヴィーナスの誕生」くらいのインパクトで、うどん世界を一変させた。

 ヴィーナスは女神だから、要潤さんなら「アポロンの誕生」。ちなみにアポロンはギリシャの主神ゼウスの息子でオリンポス12神の1人で、あらゆる知的文化的活動の守護神で、美男子の一典型とされて無数の芸術作品のテーマにもなっている。

 ややもすればすぐのびるうどんに、ホット「釜揚げ」が登場し、これをさらに別次元のおいしさに止揚させた「釜玉」の誕生で、うどんが麺界の王者になったことを宣言するプレゼンターとして果たしたこのアポロンの功績は、うどん史に特筆すべき出来事だった。

 ちょっと力が入り過ぎたが、ともかくそれくらい、うどん県の要潤さんはインパクトがあった。
 ポスター発表の翌年には三豊市のさぬき豊中ICに縦5メートル、横10メートルの巨大なウエルカム看板が登場した。笑顔の彼と「ようこそ僕のふるさと 三豊市へ」のコピー。もう三豊の顔である。

 看板には「うどん県副知事」とあり、これまた美形で名高い高松出身の女優木内晶子さんと香川を代表するペアとして全国に知られるようになった。

 香川にはこんな美男美女がいるんだね、という期待をむやみに広めてしまったが、それまでの香川は正統派美人の産地という印象は薄かった。

 どちらかといえば、お笑い系。アイドルというよりバラドル。たとえば松本明子さん、という土地柄だっただろう。

 遡(さかのぼ)れば、戦後日本の歌謡界最初のスーパースターは間違いなく笠置シヅ子(旧引田町出身)だが、彼女も美形というより個性の勝る人だった。

 そんな昭和の、三豊の顔といえば、もちろんあの人だ。(明石安哲)

メモ
【ヴィーナスの誕生】ルネサンス期イタリアの画家アレサンドロ・ボッティチェリのテンペラ画。カトリックには異教であるギリシャの女神を成熟した裸婦として描いた画期的作品。異教的主題の作品はほとんど宗教改革で焼き尽くされたが、大作「春」とともに奇跡的に難を逃れた。縦172・5センチ、横287・5センチの大作。フィレンツェのウフィッツィ美術館蔵。

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