讃岐うどん遍路

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うどん県クロニクル(年代記)第1章・それだけじゃない香川県(5)へらこいの遠景 エンゲル係数も日本一

2017/02/25
都道府県の預貯金残高都道府県の預貯金残高

 「うどん県」香川と「へらこい」にはどんな関連があるのだろう。

 讃岐うどんは全国で香川だけに成立した新しい食文化だ。戦後日本でこれほど突出的に一つの食物が特定地域で進化し定着した例を知らない。

 特別な現象には特別な理由があるものだが、香川の地理風土や産物に特殊要因は見えない。残る可能性はそれを生み出した讃岐人気質。讃岐人とはいったい何者なのか。

 讃岐うどんは珍しい食品だ。自由経済の原則ではうまいものは値段が高く、安いものはまずい。ところが讃岐うどんは安くてうまくて手早い。そうでなければ讃岐では繁盛店になれないのだ。

 讃岐うどんの常食者はいくらおいしくても新参の不慣れな客が列をなす店は敬遠する。長時間待たされるくらいなら、またの機会に、という不思議なうどん通だ。

 これはそば談義に熱を上げる江戸前のそば通たちが、うまいそばを食うためならと背負い込む我慢辛抱の量とは比べものにならない薄情さだ。

 作家村上春樹さんが90年代のエッセーで「これほど深く−篤い信仰心にも似た熱情を持って−うどんを愛している県民は日本国中ほかにいない」と評したほどであるにもかかわらず、である。

 その最大の関心は文化としてのうどんではなく、食品としてのうどんにある。主義主張でなく、味と値段で食べる。実利主義なのである。

 これを印象づける統計がある。豊かさの証明といわれる食費の割合、エンゲル係数で21世紀香川は日本一を独走している。「うどんのおかげ」とする声が圧倒的だ。

 とはいえ、それだけで日本一は無理だが、これに表徴される心理が理由となった可能性は高い。その遠景に「へらこい」が浮かんでくる。

 へらこいの語義を聞き取り調査すると「欲張り」というネガティブな印象ばかりでなく、「節約、賢い、要領がいい」というポジティブな使い方も数多く出てくる。

 この「へらこい」がもっぱら使われるのは香川と徳島だけだが、2県に共通する興味深い統計値がある。「預貯金残高」で2県は過去10年間、東京とともに全国ベスト3を占め続けている。

 預貯金残高の評価はさまざまだが、要はどれだけ金持ちかという数字。

 香川は年間総収入でははるかに及ばない東京都に対し、2006年から5年連続1位。11年に東京にトップを奪われた後も一昨年、徳島に追い越されるまで4年連続で2位を維持してきた。

 これはうどんのおかげなのか。(明石安哲)

メモ
 【エンゲル係数】家計に占める食費の割合。独の社会統計学者エンゲルが1857年に提唱。数値が低いほど生活は豊かとされ、エンゲルの法則と呼ばれる。過去10年間の全国平均値は23%前後だったが、一昨年から急上昇して昨年は25%台に。直近の調査で香川は全国で1県だけ22%台を維持、ワースト1位は京都で28%台後半。東京は26%台でワースト11位。

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