machi(まち)じまん/詫間町エリア

2019/06/11

 三豊市の臨海部に位置する詫間町エリア。粟島や志々島、荘内半島は穏やかな瀬戸内海に緑の木々が映え、周辺には風光明媚(めいび)な景観が広がる。今年1月には、荘内半島にある紫雲出山の山頂から瀬戸内海を望む写真が米紙ニューヨーク・タイムズ電子版に掲載され大きな話題になった。今、紫雲出山は国内外から大勢の観光客が詰め掛けている隣町の父母ケ浜(仁尾町)に続く観光エリアとして、注目を集めている。


新観光スポット続々
 今春、花見シーズンに県内有数の桜の名所・紫雲出山を訪れた人たちは2万人を超えた。「例年に比べて外国人観光客の姿が目立った」と市の担当者。思いがけず舞い込んできた観光客の波を地域活性化のチャンスとみて、受け入れ体制の構築に向けて準備を始めた地元の民間団体や住民たちの活動に拍車が掛かっている。
米紙ニューヨーク・タイムズ電子版に掲載された「瀬戸の夕映え」(三豊市観光交流局提供)
米紙ニューヨーク・タイムズ電子版に掲載された「瀬戸の夕映え」(三豊市観光交流局提供)

■米紙電子版に掲載
 米紙ニューヨーク・タイムズ電子版が1月に発表した「今年行くべき52カ所」の7番目に「瀬戸内の島々」が選ばれた。掲載写真には、さぬき市のアマチュアカメラマンが2011年に紫雲出山の山頂から満開の桜と春がすみ、日没直前の瀬戸内海を捉えた「瀬戸の夕映え」が採用された。

 選出のきっかけは、市の外部組織「三豊市観光交流局」がホームページ(HP)でPRしていた写真が選考担当者の目に留まったことだった。

 同交流局は、17年4月に市観光協会と市国際交流協会がそれまで行っていた観光客誘致や情報発信などの事業を引き継ぐ形で誕生した民間団体。会員制交流サイト(SNS)やHPを使い、水面に映った人影や夕空が「インスタ映え」するとして話題の“父母ケ浜ブーム”を演出するなど、写真を積極的に活用した観光情報の発信に力を入れている。
島の魅力を発見できる「粟島探検ツアー」の参加者
島の魅力を発見できる「粟島探検ツアー」の参加者

■島しょ部にも注目
 同交流局の石井紫チーフマネジャー(37)は、これから注目すべき市内の観光スポットに粟島と志々島を挙げる。

 粟島では毎年、新緑が美しい初夏の季節に、同交流局が「粟島探検ツアー」を企画している。島内の魅力を発信するとともに、県内に住む外国人との国際交流を促すのが目的で、島内最高峰の城ノ山(標高222メートル)へのハイキングやバーベキューなどを楽しんでいる。9回目の今年は6月1日に開催し、日本を含む10カ国の計73人が参加して島の自然を満喫した。

 また、志々島には樹齢約1200年とされる大クスを筆頭に、瀬戸内海を見渡せる展望台や花畑の丘など、観光客の興味を誘うようなスポットがそろっている。同交流局では、花畑周辺の水道設備費を集めるため、今秋にインターネットで資金を募るクラウドファンディングの実施を計画しているほか、島民対象の観光ガイドの育成も併せて行うことにしており、観光客の受け入れに向けた環境整備を急いでいる。
塩生山の植樹に取り組む「塩生里山を楽しむ会」
塩生山の植樹に取り組む「塩生里山を楽しむ会」

■古里の山を桜色に
 40年ほど前までの塩生(はぶ)山(標高141メートル)には、サツマイモや除虫菊を栽培する畑が広がっており、住民たちのコミュニケーションの場でもあった。しかし、農家の減少に伴って、畑は竹林に変わっていった。そこで「古里の山ににぎわいを取り戻したい」と立ち上がったのが、地元自治会の住民らでつくる「塩生里山を楽しむ会」(小林寛司会長)だ。

 同会では今年2月、親子連れら約80人の協力を得て、竹林を伐採した約8千平方メートルに、ヤマザクラとウバメガシの苗木を合わせて約2千本植樹した。現在は、月1日程度を活動日に設定し、苗木周辺の草刈りのほか、さらにもう1ヘクタールの竹林の伐採を進めている。来年以降も継続して植樹を行う計画にしており、ヤマザクラを植える範囲を少しずつ広げていくという。

 小林会長は「将来、塩生山が桜が咲き乱れる公園になれば、紫雲出山のように観光地として認知されるはず。地元住民と観光客が交流できる場所にしていきたい」と力を込める。

酒蔵改装、マルシェ… 地域で稼ぐ仕組みづくり
 市内を訪れる観光客が増えるのに伴い、地域経済への仕組みをつくろうと奮闘している地元住民もいる。今夏には酒蔵を改装した観光拠点「三豊鶴」がオープン予定。5月のプレイベントでは、地場産品を取り入れたレストランを営業し、市民ら約千人が酒蔵の雰囲気を楽しみながらフランス料理を味わった。
酒蔵を改装して観光拠点を整備している「三豊鶴」のメンバー
酒蔵を改装して観光拠点を整備している「三豊鶴」のメンバー

■酒蔵を観光拠点に
 酒蔵を改装し、観光拠点として整備するプロジェクトが進んでいるのは粟島、志々島行きの定期便が出航する須田港近く。手掛けるのは市内で地域商社や建築会社、農業などを営む若手5人。9月28日から粟島などを会場に開かれる瀬戸内国際芸術祭2019の秋会期をにらみ、8月中のオープンを目指す。

 5人は、酒蔵で約20年前まで造られていた日本酒の銘柄「三豊鶴」の名称をそのまま施設名に使うとともに、同名の合同会社を設立。オープン後は近隣に点在する宿泊施設の補完機能として飲食店営業や土産販売などを行うほか、みそ造りや地引き網、野菜や果物の収穫など体験メニューの提供を予定している。

 市内で桃やキャベツなどを栽培するメンバーの細川貴司さん(34)は「以前から農業と観光の相性はいいと思っていた。観光客にレジャー感覚で農業に親しんでもらえたら」。同じメンバーで、市の地域商社・瀬戸内うどんカンパニー代表の北川智博さん(33)は「酒蔵の雰囲気や構造を生かして、地域の価値を発信する場所にしたい」と話す。

■カメの館長が誕生
 一方、地元の住民団体「まちづくり推進隊詫間」(本田進理事長)は、旬の野菜や魚、地場産品を使った料理などを販売する「箱裏マルシェ」を2015年から定期開催している。団体が管理する箱浦ビジターハウスを中心とした地域のにぎわい創出が狙い。三豊、観音寺両市内から毎回約30店舗が出店し、大勢の親子連れらが詰め掛ける。

 昨年8月には、荘内半島に伝わる浦島伝説にちなみ、同ビジターハウスにカメの館長が誕生した。東かがわ市のしろとり動物園から譲り受けたケヅメリクガメで、名前は公募で寄せられた中から「トワ」に決定。全国各地でネコの名物駅長などが話題になる中、地域の新たなマスコットに期待がかかる。

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