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優しさをつなぐ

2017/03/27 17:09:06
 長女の結婚が決まったある日、娘からウェディングドレスをどれにするか選んでほしいと言われ、心弾む気持ちで会場へ約束の時間に出かけて行った。ドアをあけると係りの方が出てきて案内され、中では楽しそうな声が響いている。彼と彼のお母さんが「これが良い、あれが良い、どれも似合うね」と一生懸命娘に似合うウエディングドレスを選んでいた。

 私は、その姿を見てうれしさと心暖まる気持ちが込み上げてきた。一緒に長い間過ごしてきた娘が、新しい家族に迎え入れてもらい、新しい家庭を築く一歩を踏み出しているように感じた。

 私自身も夫の母と同居で、優しい母にいつも温かく支えてもらった。静かで楽しい母と一度のけんかもなく、いつどんな時も一緒であった。

 母は耳が次第に遠くなり、テレビのボリュームは次第に大きくなっていった。娘は、そんな祖母といつも一緒に横に並んでテレビを見ていた。ある日、娘が「お母さん、おばあちゃんはかわいそうやなぁ」と声をかけてきた。理由を聞くと「耳が遠くて、小さい音が聞こえないから」と祖母を思いやっていた。大きなボリュームのする横で祖母と一緒にテレビを見ていたのは、祖母を気遣っていたのかと思うと娘の優しさに、涙が込み上げた。

 母からは、私が結婚して家族になった時「今日から絹さん、食事の用意をよろしくお願いします」と頼まれた。しばらくたって仕事から帰り母の部屋へ行くと、母は氷まくらをして寝ている毎日だった。母は長い年月病院生活を送っており、私が結婚する前に退院したことを後から知った。

 私が母を支えよう。私は、一人心に誓った。

 母は、手を引かないとほとんど一人で歩けない状態だった。長女、長男が生まれ、成長するにしたがって子どもたち2人が母の杖になってくれた。母は何度か認知症になったが、その度、子どもたちへ「おばちゃんと会話をするように」と頼むと、学校から帰るとすぐに競うように祖母のところに行き話し続けていた。
そればかりか、祖母を囲んで朝まで2人が寝ていることもしばしばあり、1カ月ほどすると、母は見事よみがえった。

 母は、亡くなるまでに認知症を3回患った。ある日の朝、母の部屋へ行くと、日課にして読んでいる新聞を横に置き、目はうつろにどこに焦点があるのか分からなかった。それから1カ月間、その状態が続いた。

 四国八十八カ所奥の院「誉田寺」に認知症防止のつげでできたブレスレットがあると聞き、母の手に祈るようにつけても、いつの間にかなくし、なくしては買ってきて付け、その度、どこでなくしたのかいくら探しても出てこなかった。しかしそんな中、また突然、母はよみがえった。

 母が病気のため、私の一番の悩みは仕事と子育ての両立だった。長男が生まれた時、長女の保育園探しをはじめ、ある保育園が受け入れてくれた。仕事の関係で娘はいつも一番に園に入った。当番の先生が来ていない時もあったが、娘は私が仕事に遅れるのを知っており、何一つ文句も言わず一人先生が来るのを待っていた。寒い中、ぽつんといる娘の姿に何度も涙がこぼれた。

 当時、車の免許を取得しておらず、仕事が終わるとすぐに保育所へ駆けつけ、娘を背中に背負って電車へと走った。途中、買い物に寄って知人に声を掛けられ話していると、「ママ、他の人と話しては駄目」と寂しそうな目で私を見た娘の顔がいまも目に浮かぶ。家へ帰ると娘より母と話すことが多い中、娘は一緒にいる時くらい一人占めしたいと思っていたのかもしれない。娘の気持ちを思うと今も心が痛む。その分、帰ってきた時は少しでも温かく見守っていきたいと考えている。

 その娘も今は2人の子どもに恵まれ、仕事と子育てに奮闘している。何よりも彼や彼のお父さん、お母さんや妹さんたちが子どもたちを大切に育ててくれているのに心から感謝している。

 お陰で兄弟がいつも一緒に過ごし、仲良くしている姿がとても微笑ましい。わが家に来ると自ら、小さい体で、足が充分立たなくなった柴犬の食器をぴかぴかに洗ったり、ふんの始末など一生懸命世話をしている姿に心暖まる思いが込み上げてくる。娘が祖母を大切にしていたように、子どもたちも心優しく育っているのに娘の後ろ姿と家族の愛情を感じる。

 私が母(夫の母)と仲良く過ごし、母に支えられ社会活動ができるようになったように、娘も出会った彼や彼の家族と共に幸な家庭を築き、子どもたちを立派に育て、これからも社会に貢献してほしいと心から願っている。 (永峰 絹江)
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