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天国から花を

2014/03/28 12:15:16
天国から花を
 「今年は、お雛(ひな)さんを出さんと私の写真を飾ってくれ。花を見るきん」。1月初めに93歳で亡くなった、まんのう町買田の松本運(はこぶ)さんは、年末ごろから家族に頼んでいたとか。

 松本さん方の庭では今年も、50年物のシダレウメが滝の流れにも似た見事な花を咲かせ、大勢の見物客らを魅了した。これは約40年前、家の新築に併せて運さんが10年物の苗木を植樹。以来、知り合いの植木職から手入れ法やせん定のコツなどを教わり、大切に育て上げてきたものだ。

 見事な枝垂(しだ)れに、見物客が訪れ始めた20年ほど前、運さんは「花を美しく咲かせるコツはせん定」と、話していた。花の終盤に、枝を約20センチ残して切り込む。来年、再来年、3年先にどの枝をどう枝垂れさせるといいのかを見通してのせん定作業だ。

 「きれいな花を咲かせて、みなさんに喜んでもらおう、そればっかり考えて一生懸命に切るんです」と、目を輝かせながら作業をする身軽い運さんの姿が昨日のように思い出される。

 家族の心配もあり、ここ数年来は命綱を付けての作業だったが、「綱がじゃまになるぐらい」と、笑いながらせん定をしていた運さん。

 新聞やテレビ、口コミなどから、「花の名所」の一つになった松本さん方のシダレウメは20年来、多くのファンやカメラマン、諸施設の団体客でにぎわっている。

 花の時期はちょうど雛祭りと重なっている。いつのころからか、毎年お孫さんのお雛さまを座敷に飾り、両方を花見客に披露するのが恒例になっており、家族の喜びや花ファンの楽しみにもなっていた。

 それで「今年は、お雛さんを出さんと私の写真を…」の言葉になったのだろう。虫の知らせでもあったのだろうか。というのは、昨秋から体調を崩して入退院を繰り返していた運さんは「家に帰りたい」と、願って退院。懇意だった医師が毎日、家に来ては点滴をしてくれたそうだ。

 「40日も家族らと家で過ごせ、最期を迎えられた主人は幸せでした」。奥さんの言葉が印象的だった。運さんの息子三津治さん(59)も、「父が大切に育てた花、ぜひ多くの人に見てもらいたい。父も喜ぶでしょう」と、話していた。

 写真に写った運さんは花影を背に、心を込めて育てたシダレウメを目を細めながら穏やかな顔で眺めていた。(香川 佳子)
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