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彼女の誕生日に

2012/01/31 17:16:44
 「1月24日、空いてる?」。彼女に尋ねられた。「ちょっと待って」。手帳を見ながら「あ、空いてるよ」と、私。

 病気後、薬の後遺症で耳が聞こえなくなってしまった彼女。2年前、頼りにしていた夫に先立たれ、「この寂しさをお父ちゃんに味わわせなかったことだけがせめてもの救い…」と、寂しさに堪えている彼女だった。

 その彼女に誘われ、彼女が希望する日に「花の詩画展」を見に行った。「何で今日なのか後で話すからネ」。ちょっと気になる言葉だったが、私は笑ってうなずいた。

 同展は、中学校の教師だった群馬県の星野富弘さんの詩画展だった。星野さんは24歳の時、クラブ活動の指導中、頸髄(けいづい)を損傷、手足の自由を失った。

 入院をしていた26歳のころから口に筆をくわえて詩や絵をかき始め、その2年後に最初の「花の詩画展」を開いた。

 35歳で結婚し、最初の作品展以降、国内はもとよりハワイやニューヨークなど海外でも同展を開催、多くの人々に感動を与えている。

 体験からにじみ出た星野さんの詩画文は、温かくて、切なくて、共感を呼び訴えるものが多い。

 「この道は茨(いばら)の道 しかし茨にも ほのかにかおる花が咲く あの花が好きだから この道をゆこう」
 「私にできることは小さなこと でも、それを感謝してできたら きっと大きなことだ」
 「辛いという字がある もう少しで 幸せになれそうな字である」  
 「故郷を出て、故郷が見える。失って初めてその価値に気づく。苦しみによって苦しみから救われ、悲しみの穴をほじくっていたら喜びが出て来た。生きているっておもしろいと思う」

 私たちは、何度も何度も詩画文の前で顔を見合わせ、うなずき合った。聴覚を失い、夫を失った彼女。夏のころ、「あのにぎやかなカエルの声が聞けなくなった」と、寂しそうだった。

 でも、限りなく素直に「皆のおかげ」と、感謝しながら生きている彼女に、私はいつも感服している。

 帰り際、彼女が言った。「実は今日、私の誕生日やったん。あなたが『空いているよ』って言ってくれて本当に良かった! 誕生日の今日、連れて来てもらってうれしかった。有り難う!」と、とても喜んでくれた。

 ひょっとしたら、彼女にとってもうひとつの「誕生日…」が、誕生したのかもしれないな! そして、「私自身にも…」なんて考えている。                                     (香川 佳子)
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