裁判員制度が施行された5月21日以降、香川県内では裁判員裁判対象事件として6件(計7人)が起訴され、9月には四国初の裁判員裁判となる現住建造物等放火事件の公判が高松地裁で開かれた。制度導入当初、同地裁は30件弱の起訴数を予想していたが実際は2割程度。想定より起訴が大幅に少なかったことについて、一部の弁護士らは「検察側が、裁判員裁判で確実に有罪を取れる事件だけを起訴する『罪名落とし』を行っている」と指摘している。
同地裁は昨年、高松地検の過去の起訴数の統計から今年1年間の対象裁判を36件と算出。制度開始が5月以降のため、その8掛けの30件弱を想定していた。
同地検によると、殺人や現住建造物等放火など、制度が導入されていれば対象となった事件が、08年は警察からの逮捕者受理件数で33件あり、そのうち起訴は21件。しかし、今年(1月〜11月末)は30件を受理したが起訴は13件にとどまっている。
罪名落としが疑われる例としては6月、さぬき市で父親(63)が大学生の三男(25)の首を包丁で切り付けた事件。さぬき署は父親を殺人未遂容疑で逮捕したが、同地検は傷害罪を適用した上で、起訴猶予処分とした。また、高松市で10月、父親(65)が長男(37)を日本刀で切り付けた事件では、高松北署が殺人未遂容疑で逮捕した父親を、同地検は「殺意などが認定できない」として不起訴処分とした―などがある。
対象事件の起訴件数が減っていることについて、同地検は「制度開始以降、対象事件の逮捕が13件と少ないのが実情。また、不起訴処分や罪名の切り替えについては、個々の事件を精査して判断しており、今年が特別に多いわけではない」と裁判を意識した罪名落としを否定する。
これに対し、香川県内の弁護士は「これまでなら強盗致傷罪で起訴した事件も、裁判員に認定されないとみて罪名を窃盗と傷害に切り替えるケースがあった。事件の発生が減っている以上に地検が起訴を抑えている」と話す。
裁判員制度に詳しい香川大大学院の京明准教授は「裁判員制度導入後、高裁も一審判決を尊重しており、地検が公判で負けないよう慎重になっている」と指摘。「時間はかかるが、経験を重ねることで適正な運用が進むはず」と分析している。