
無線機の電鍵(でんけん)を打ちながら受賞作「トンツーの時代」について語る井上弘之さん=香川県庁
ずいひつ遍路宿の会(佐々木正夫さん主宰、会員134人)は29日、第1回佐々木正夫ずいひつ遍路宿賞に横浜市在住の井上弘之さん(75)=香川県高松市牟礼町出身=の「トンツーの時代」を選んだと発表した。同賞は昨年まで40年続いた「ずいひつ遍路宿賞」を改め、主宰者で作家の佐々木さんの名を冠し、今回から創設された。井上さんは「記念すべき第1回に推挙されて、感慨ひとしお」と話している。
受賞作は42年間、無線通信士として海上保安庁に勤務した井上さんが、詫間高専時代の思い出や海保時代の体験を重ね合わせながら、通信革命で姿を消したモールス符号への思いをつづった内容。「トンツーの時代」の幕引きを感慨深く描き、その構成の確かさ、分かりやすい文章力などが評価された。
井上さんは定年退職後、「しっかりとした趣味を持ちたい」と四国新聞文化教室で佐々木さんに師事。1998年に同会に入会。2004年には、四国新聞読者文芸随筆部門で年間優秀賞を受賞している。書き始めた10年前は気負っていたというが、「今は『書くことを楽しむ』がモットー。受賞に恥じない作品を今後も書き続けていきたい」と話している。
遍路宿の会は1963年に設立。季刊の同人誌「遍路宿」は、今年1月号で180号を数えている。
賞は、会の同人が昨年1年間に「遍路宿」や新聞、雑誌などに発表した随筆約320編の中から、同人でもある選考委員九人が選んだ。授賞式は、2月15日に香川県高松市内のホテルで行われる。