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熱中症が猛威を振るっている。今夏、熱中症で病院に搬送された人は全国で1万3千人に達し、県内も前年同期の5倍近くに上る異常事態だ。酷暑だった昨夏、香川の熱中症による死者数は人口10万人当たりで全国最多だった。今夏は節電ムードで冷房を自粛する人が多いと見込まれ、さらに熱中症が増えることが危ぐされる。

気温30度超で死亡増 室内も湿度70%から危険
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強い日差しの中を行き交う買い物客ら。県内では早くも熱中症が猛威を振るっており、病院に搬送された人は前年同期の5倍近くに上っている=高松市内
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県内で今年、熱中症のため病院に搬送された人は、県危機管理課によると、5月30日〜7月10日の合計で116人。前年同期の4・8倍に達する。
原因は6月下旬の高温。梅雨なのに8月上旬並みの平均気温になるなど気温が急上昇し、体が暑さについていけなかった。6月20日から1週間の搬送者は49人に上り、前年同期はわずか4人だった。さらに、昨年より9日早く梅雨明けした影響で、7月以降も前年を大幅に上回っている。
搬送者の年代別の内訳をみると、7歳未満の乳幼児が1人、7〜17歳の少年が10人、18〜64歳の成人が37人。最も多いのは65歳以上の高齢者の68人で、全体の58・6%を占める。
記録ずくめの酷暑だった昨夏は、熱中症による死亡者が県内で28人を数えた。人口10万人当たりにすると2・83人に上り、全国平均の2倍以上。都道府県別で最も多かった。過去10年間をみても、全国平均を上回る水準が続く。
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人口10万人当たりの熱中症死者数(2010年・人)
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暑くなると、人間の体は汗をかき、皮膚に血液を集め、熱を体外に逃がして体温を下げようとする。しかし、温度や湿度が高いと、調節ができず体温が著しく上昇。水分や塩分が失われるなど、体のバランスが崩れ、さまざまな異常をきたす。これが熱中症だ。
県立中央病院救命救急センターの佐々木和浩部長は「熱中症は死に至る危険があり、侮ってはいけない」と強調する。
死亡する人は気温30度を超えると増え始め、その後は気温の上昇に伴い急激に増加。湿度が高いと、汗が蒸発しにくいため、体温が上がりやすい。
熱中症は症状によってI〜III度に分類される。軽症のI度は、目まい、立ちくらみ、大量の発汗、筋肉の痛み。II度に進行すると、頭痛、吐き気、嘔吐(おうと)、体のだるさをもよおす。重症のIII度は、意識障害や痙攣(けいれん)、異常に高い体温などの症状が表れる。
かつては日射病や熱射病をよく耳にしたが、熱中症はその総称。日射病は強い日差しが原因だが、熱中症は室内でも発症する。室内は気温28度以上、湿度70%以上になると要注意だ。
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熱中症が起きる環境条件を研究する県立保健医療大の須那滋教授(環境保健・産業衛生)によると、香川の年間平均湿度は都市化による緑地の減少やヒートアイランド現象などにより、高松の場合、昨年は65%と約70年前に比べて10ポイント以上も低下。つまり、県民は長い月日を通じて、次第に乾いた環境に適応してきたと言える。
須那教授は「実証されたわけではない」と断った上で、「乾いた環境に慣れた体で急に高温多湿の夏を迎えると、体温調節の機能が対応しきれず、熱中症の発症リスクが高まっている可能性がある」との仮説を示している。

自覚なく重症化 一人暮らしへの啓発急務
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熱中症予防のポイント
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2010年の県内の熱中症死亡者28人のうち、70歳以上は22人と、圧倒的に多い。お年寄りへの注意喚起は喫緊の課題だ。
高齢になると、皮膚の温度感受性が鈍くなり、暑さを自覚しにくくなる。体内の水分量も少なく、若者と同じように発汗すると、脱水状態に陥りやすい。
県立中央病院救命救急センターの佐々木和浩部長によると、糖尿病のほか、肝臓や腎臓などに疾患を持っているお年寄りが熱中症を発症すると、これらの疾患が悪化して死亡することもある。また、脱水症状になると、脳梗塞の危険度も高まるというから、注意が必要だ。
お年寄りには危険性の高い熱中症だが、「私は大丈夫」という過信や「熱中症では死なない」「室内にいるから発症しない」という間違った知識を持っている人は多く、犠牲者を増やす要因となっている。正しい知識や対処方法の普及・啓発も急務という。
熱中症が怖いのは、本人の自覚がないうちに、重症化しているケースが多いことだ。熱中症の初期症状はめまいや筋肉痛などで、特有の症状はなく、見過ごしやすい。近くで暮らしている家族も分からないことが多い。「だからこそ、一人暮らしのお年寄りは、特に注意してほしい」と佐々木部長。一人暮らしでは、自分がしっかり認識していないと、手遅れになる危険性が極めて高い。
県内では高齢者のいる世帯の約3割がすでに一人暮らし。県健康福祉総務課は今後、民生委員の協力を得て、「一人暮らしの世帯を訪問する機会をとらえ、熱中症対策の啓発を徹底していく」と話している。

早めに水分、体温調節上手に
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熱中症の応急処置の流れ
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高松地方気象台の四国の1カ月予報(7月16日〜8月15日)によると、気温は平年並みより高い日が多くなる見通し。今年も猛暑となる可能性は高い。熱中症の予防法と応急処置の知識は、今夏を無事に乗り越えるためには不可欠だ。
まず予防。外出時は必ず涼しい服装を心掛け、帽子や日傘を利用する。時々、日陰で休憩をとることも忘れてはならない。屋内では室温28度を超えないようエアコンで管理する。早めの水分補給も重要だ。発汗機能が未発達な乳幼児の顔色には要注意。真っ赤になっていないか、保護者は絶えず目を配る必要がある。
お年寄りの場合、暑いときには無理をせず、喉が渇いていなくても、早めに水分を補給すること。暑さを感じにくくなっていることを自覚して、室内の温度をこまめに調べ、エアコンで適切に調整すること。
また、今夏は電力不足の恐れから、全国で節電が叫ばれており、エアコンを入れず暑さを我慢することによる「節電熱中症」の危険性も指摘されている。
お年寄りは律儀に節電を心掛けると思われることから、県立中央病院救命救急センターの佐々木和浩部長は「まず自分の身を守ることを第一にしてほしい」と強調。「エアコンは28度設定とされているが、27度でもいい。絶対に無理をしないで」と呼び掛ける。
万が一、熱中症の症状が出たら、屋外の場合は日差しを避け、涼しい場所に移動する。衣服を脱ぎ、体に水を吹き掛けた上で、あおいで体温を下げる。太い血管のあるわきの下や足の付け根を冷やすことも効果的だ。同時に水分を補給。発汗量が多い場合は塩分の補給も必要だ。スポーツ飲料なら塩分も補える。屋内の場合も体を冷やし、水分を取るのは基本的に同じ。
めまい、立ちくらみ、こむら返りなど、少しでも異変を感じたら、すぐに対応すること。意識がない人や自分で水が飲めなくなった人がいれば、迷わず救急車を呼んだ方がいい。佐々木部長は「熱中症は知ることが一番の予防。正しい知識があれば、発症者はかなり減少する」と訴える。
取材 八塚正太 福岡茂樹 山田明広
(2011年7月17日四国新聞掲載)
シリーズ追跡は今回で終了します。長い間ご愛読ありがとうございました。
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