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ついこの間までリーグの強豪だった。そのチームが、たった1日で消えてなくなった。男子プロバスケットボール、bjリーグの高松ファイブアローズ。14日にチームの運営会社が自己破産を申請した。大口スポンサーの撤退に伴う経営難、そして成績不振。チームの台所事情が厳しかったのは事実だが、地域球団への転換を図っていた矢先だった。香川のプロバスケの灯はどうなるのか。
新たなバスケファン開拓も 支援の広がりいま一歩
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| 迫力のプレーを繰り広げる選手たち=2009年1月、高松市香川総合体育館 |
相手コートに攻め込む5人の選手。軽快なパス回し。ボールを受けた1人がゴール下に切り込み、シュートを決めた。連発される華麗なプレーに、「ブースター」と呼ばれるファンで埋まった応援席もがぜん盛り上がる。応援グッズのスティックを激しく打ち鳴らし、選手たちを後押しする。
2007年4月、有明コロシアム(東京)で行われたbjリーグのプレーオフ決勝。リーグに初参戦した高松ファイブアローズは、いきなり優勝争いに絡んだ。惜しくも頂点に届かなかったが、初陣での準優勝は今後の躍進を期待させた。3年後に突然チームが消滅するとは、プレーしていた選手も、手に汗握り応援していたファンも思ってもみなかっただろう。
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「緊急の事態に対応しきれなかった」。14日、チームを運営するスポーツプロジェクト高松(高松市)の記者会見。元二俊朗代表取締役はうつむき加減で、破産申請に至った理由を語った。緊急の事態とは、メーンスポンサーの穴吹工務店(高松市)が昨季限りでスポンサーから撤退し、昨年秋に会社更生法を申請したことにほかならない。
確かに、「支柱」を失った影響は大きかった。チームの広告収入は当初3億円超。ほぼすべてを穴吹工務店グループが占めていた。そのため穴吹工務店が撤退した今季は、10分の1の3千万円にまで激減。参戦こそしたものの戦力補強もままならず、チームの成績は低迷。成績不振は入場者の減少にもつながった。
結局、今季のチームは初の最下位に。参入当初2千人程度だった1試合当たりの平均入場者数も、半分近くにまで落ち込んだ。
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| 熱戦に沸くブースター。ファイブアローズの存在が新たなバスケファンを開拓した=2008年3月、高松市総合体育館 |
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| チーム存続に向け、署名活動を行うブースター=2009年9月、高松市香川総合体育館 |
昨年8月。高松市内の商店街などで、ビラを配り、協力を求めるファイブアローズの選手たちの姿があった。募っていたのは、1口1万円の個人スポンサー。資金不足が表面化して以降、チームは企業球団から地域球団への転換を打ち出した。呼び掛けのかいあって、個人スポンサーは今年5月の時点で572口(420人)にまで増えた。
だが、新たな企業スポンサー探しが難航する中では、資金難の解消にはほど遠かった。やはり個人の力だけで、しかも短期間で傾いた流れを食い止めるのは難しい。ただ一方で、盛り上げ方の仕掛け不足を指摘する意見もある。
「確かにスポンサーは大事だが、観客動員や資金調達に向けた多面的な取り組みはできていたのか」。
そう問いかけるのは、上杉正幸香川大教育学部教授(スポーツ・健康社会学)。地域スポーツの定着には、「いかにスポンサーに頼らない形へ移行するか、その仕掛けが重要」という。
これは野球やサッカーなどの地域クラブにも当てはまる話。とりわけ、香川で歴史のないバスケットを定着させるとなると、時間もさることながら相当の知恵と工夫が必要だった。
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ファイブアローズの場合、どうだったのか。「どこかにスポンサーへの甘えがあり、企業球団から地域球団に脱皮しきれなかった」と元二代表。「もっと早く、広告収入が減っても対応できる組織づくりを行うべきだった」と唇をかんだ。
ただ、そうは言っても、野球やサッカーに比べ浸透度の低い競技でありながら、本場・アメリカさながらのプレーは新たなファン層を開拓した。バスケットボールの認知度向上や普及に貢献したのも事実だ。
自治体にとっても、こうした地域スポーツは集客ソフトだ。現に、bjリーグに参加する沖縄県のチームが、昨季だけで地元に16億円の経済効果を生んだというデータもある。ファイブアローズに関する具体的なデータはないが、チームの存在が地域活性化、にぎわいづくりに作用したのは間違いない。このまま失うことは地域のポテンシャルを引き下げることになりかねない。
復活への熱意決め手
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| 高松ファイブアローズの歩み |
「今、自己破産を申請してきた。会社はきょうで終わり。来季はない」
スポーツプロジェクト高松が高松地裁に自己破産を申請した14日。選手たちは、正午前に会社に呼び出され、元二代表から契約解除を伝えられた。元二代表は「5、6月分の給料は払えない」とし、代わりに契約解除金として12万円ずつを配ったという。
突然の通告に納得のいかない選手たちは、破たんに至る経緯などを元二代表に厳しく詰め寄り、会社との話し合いは4時間にもおよんだ。
契約を解除されたのは、シーズン終了と同時に契約が終了していたニューマン・ヘッドコーチと外国人選手ら4人を除く日本人選手6人とチームスタッフ3人。今季、日本人得点王に輝いた岡田優選手らが、突如、職を失った。シーズン終了からわずか5日。選手から「あまりに突然。なにがなんだか分からない」と声が上がるのも当然だった。
同社の破産手続きは週明けにも開始され、破産管財人の下で資産整理に入る。一方、チームは、会社が破たんし、選手全員との契約が消滅したことで、実態がなくなった。チームの商標は担保としてbjリーグ側に渡っており、今後はリーグが中心となって新たに運営会社を担うスポンサーを探し、チームの再生を目指すことになる。
新たなスポンサーについて、同社の代理人は14日の会見で「未定」としたが、スポンサー探しはすでにリーグ主導で水面下で進んでいる。リーグは、来季に向けたドラフト前の6月上旬までには新スポンサーを決めたい考えで、リーグの河内敏光コミッショナーは「支援に関心を示している会社もある」とする。
全国展開を目指すリーグにとって、四国唯一のチームだったファイブアローズの消滅は大きな痛手。「どうしても四国にはチームを残したい」(中野秀光bjリーグ社長)というのが本音だ。ただ、チームの再建は「地域でチームを支えたいという気持ちがどれだけ強いかを見極めてから」(河内コミッショナー)となる。
bjリーグは、日本リーグを展開する日本バスケ協会とたもとを分かつ形で発足したため、同協会傘下の県バスケ協会もリーグ発足当初は前面に出てファイブアローズを支援することはなかった。しかし、チームの運営が危うくなって以降は、チケットの売り上げにも協力するなど完全に支援する体制ができあがった。
また、数がまだまだ少ないとはいえ、ファイブアローズの誕生で県内には熱心なブースターができた。チーム存続の危機が伝えられた今季は、試合会場で署名や募金活動に励むブースターの姿も見られた。
来季、ファイブアローズが香川のチームとして再び熱気あふれるプレーを見せてくれるかどうかは不透明だ。チーム再生には、河内コミッショナーが条件に挙げるように地域のバックアップが欠かせない。香川でチームを再建するには、ファイブアローズの誕生から5年で小さいながらも芽生えた、プロバスケを楽しみ、支えるファンの輪をひとまわり大きく育てる手だてと気概が必要だ。
【取材】 南原雅仁 金藤彰彦 福原健二
(2010年5月16日四国新聞掲載)
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