シリーズ追跡 厳しさ増す高校生の就活
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未内定卒業 回避へ全力

 来春に就職を希望する高校卒業予定者の内定率が極めて悪い。昨秋からの景気低迷で求人数が急減したことが主因だが、景気回復の道筋もいまだ定まらず、二番底が懸念される中、関係者の危ぐは募るばかりだ。「未内定のまま卒業させることだけは極力避けたい」とする教師の声を拾いながら、冷え込み始めた高校生の就職の実態に迫った。

過去最大の下落幅

求人数の急減に当惑 ミスマッチ解消も課題

県内高卒者の求人数、求職者数と求人倍率
県内高卒者の求人数、求職者数と求人倍率(画像クリックで拡大)
高校生就職面談会
高校生就職面談会

 「59・8%。昨秋以降の景気低迷が影響したとはいえ、ここまで落ち込んでしまうとは」。県教委高校教育課の担当者は、そう言って、県内公私立高の就職内定率(10月末)を示したグラフを指さした。過去10年間をみると、10月末の最低は、2001年度の51・1%だが、下落幅は今回が過去最大。「厳しい就職戦線が続きそうだ」と危機感を募らせている。
  まず、高校生の就職活動の流れを説明しておこう。
  企業は6月20日以降にハローワークに求人票などを提出。7月1日以降には高校にも送付する。生徒は担当教師との面談などで受ける企業を決め、9月16日の選考開始以降、随時、入社試験に臨む。10月末までは1人1社が基本だが、11月からは同時に複数の企業を受けられる。
  高校生の就職内定率は通常、年度末には90数%となる。今年も「前年度より4ポイントほど低くはなるが、最終的には92%程度までにはなるのではないか」と予測している。「ただ、率ではなく、実数が問題」と担当者は強調する。それは、このままだと、100人を超える生徒が未内定のまま、卒業してしまうからだ。
  年長フリーターやニートの増加が懸念される中、現場で指導する教師の「卒業までに、ちゃんと就職先を決めてあげたい」という思いは強い。
  内定率が急降下した主因は、当然ながら求人数の急減だ。県内では就職予定者の9割が県内での就職を希望しており、県内求人の動向は気になるところだ。
  香川労働局はこのような事情を踏まえ、県内で就職したい求職者数と県内企業の求人数に基づく資料を作成している。1996年度以降の求人数の推移(9月末)をみると、2002年度の1430人を底に5年連続で増加していたが、08年度に減少に転じ、今回は1741人と1996年度のほぼ3分の1まで減少している。11月中旬に実施した就職面談会の参加企業も前年より28社少ない36社にとどまった。「継続的に求人があった企業から今年はまだ来ていない」。こんな現場の声も目立っている。
  ただ、香川労働局の資料によると、香川の高校生の求人倍率(9月末)は1・38倍と全国上位だ。近畿以西をみると、1・0倍を超えているのは大阪、京都、広島、香川の4府県だけ。0・5倍を下回っている県も少なくないという状況。まだ、香川は恵まれている方という。
  「生徒と企業のミスマッチも看過できない状況にありまして」とは県教委の担当者。「求人数が今後、増えるとは考えられず、高校での指導を徹底し、希望と現実を調整しながら、内定に結び付けていかなければならない」と取り組みを強化していく方針だ。

京都の試み

府が短期雇用 卒業後も支援

県内の公私立高 新卒者の内定率
県内の公私立高 新卒者の内定率
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 高校生の就職内定率の急落を受けて、京都府は11月中旬、これまでにない独自の支援策を打ち出した。
  内容はこうだ。未内定で卒業した生徒約100人を4カ月間、府が短期雇用する。その間、さまざまま職業の現場実習カリキュラムなどを受けてもらい、就職につなげていくという。
  府総合就業支援室は「未内定の卒業生が増えることは、年長フリーターの増加につながりかねず、1人でも多くの就職に結び付けたい」と話している。
  京都府の就職内定率(9月末)は41・7%と、前年同期より12・2ポイントも落ち込んでしまった。そこで府はまず、12月中に高校生緊急支援センターを設置し、生徒、学校、企業のパイプ役となるジョブサポーター8人を配置。年度内いっぱいは指導を徹底して、1人でも多くの内定を目指す。
  4月以降は、未内定の卒業生約100人を選抜して短期雇用し、月8万円の賃金を支払いながら、医療・介護保険の事務、介護ヘルパー、IT、農業など、各分野の実習カリキュラムを受けてもらい、就職に結び付けていく仕組みだ。
  民間機関のほか、農業大学校などの府が保有する公的資源もフル活用して対応する。働くことへの意識付けはもちろん、面接の対応を含め、あらゆる面でスキルアップを図っていく。
  短期間とはいえ、行政が高校生を雇用して、就職支援を行うケースは全国的にも珍しく、卒業後のケアがこれまで不十分だったこともあって、「発表以降、各地の自治体からの問い合わせが相次いでいる」(府総合就業支援室)という。

悩む現場

公私でさらに開き 技術重視で普通科苦戦

  高校生の「就活戦線」に押し寄せた不況の波。学校に届く求人は軒並み減少し、昨年までの楽観ムードは消え去った。生徒を指導する担当教師の悩みも深い。

■専門校も逆風
  製造業を中心に「売り手市場」が続いていた専門学科の公立校ですら、今年は追い風を受けられていない。
  「昨年までは、企業の『ぜひうちに』というアプローチがすごくて。対応に追われっぱなしだったが、今年はぱたりと止まった」とは、工業高校の教師。逆に企業回りに充てる時間が増えた。
  企業の「人」を見る目は確実に厳しくなっている。商業高校の教師は「昨年受かっていたレベルの生徒が落とされた」と明かす。選考基準が上がったためか、多くの学校で「一発合格」で内定を取る生徒が減った。
  「県外から良い人材が入社したんですよ」。別の教師は今年、企業の人事担当者からこんな話を聞かされた。求人状況の良くない他県の生徒が、香川の企業の入社試験を受けるケースが増えている。「今は企業側も地元を重視してくれているが、うかうかできない。負けずに良い人材を送り出さないと」と警戒する。
  公立校の多くでは、今月までに希望者の8、9割が内定を決めている。とはいえ来年以降の見通しは明るくない。ある工業高校の教師は言う。「昨年までは『いろんな分野に挑戦して』と生徒に話してきた。求人が多いとそれで良かったが、これだけ景気が落ち込むと悠長に構えていられない。自分の進む道を早めに決めるよう促したい」。

■進学に変更も
  「そうは言っても、専門学科の高校は良い方。大変なのは普通科ですよ」。関係者が口をそろえるのが、専門技術や資格を持たない普通科の求人難。特に私立校が苦戦気味だ。公立校を追いかける形で内定率は上がっているが、中には希望者の半数の就職先が決まっていない学校もある。
  私立校の担当教師が事情を説明する。「景気が良いと、企業に人を育てる余裕があった。でも不況の今は『採用するなら、少しでも技術のある生徒を』という印象だ。専門学科の生徒が優先され、求人が回ってこない」。
  輪を掛けて悪いのが、女子生徒への求人状況だ。事務系はほぼ皆無で、ほかの業種も極端に少ない。ある教諭は「今までも女子は厳しかったが、今年は最悪。希望しない職に就いて、すぐ離職されても困るし」と頭を抱える。
  毎年11月に解禁される複数の企業への同時受験。しかし、これに積極的な学校は少ないという。「もし複数の内定をもらって、一方を辞退ということになれば、翌年の求人に影響が出るかもしれない」。そんな懸念が働くためだ。
  不況時には、家庭の経済事情で進学を断念する生徒がみられるが、今年は逆のパターンも。ある学校では、数人の生徒が就職から進学に進路を切り替えた。「専門学校などで手に職を付け、数年後の景気に懸けるということ」と担当教師。こうした動きは複数の学校で起きている。
  私立校の場合、県教委の就職支援講師らによる支援は見込めない。学校独自で乗り切る必要があるが、出口の見えない状況に不安は募るばかり。教師の一人は「進路担当一人で頑張るのは限界。行政の支援をもう少し手厚くしてくれないと公立との差は開く一方だ」と訴える。

【取材】金藤彰彦、山田明広

(2009年12月13日四国新聞掲載)

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