シリーズ追跡 屋島陸上競技場の再整備7案
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J対応には課題山積

 陸上といえば屋島―。陸上競技の経験がなくとも、香川に住む人なら、そんなイメージを抱くだろう。開設から半世紀。「陸上の聖地」として慣れ親しんだ屋島陸上競技場が揺れている。震源は、高松市が発表した競技場の再整備案。サッカーJリーグの試合も可能なスタジアムへのリニューアルも含め全7案。ところが、J対応スタジアムには異論が続出した。屋島にサッカー場は必要ないのか。競技場の将来像を探る。

行方

中体連「締め出し懸念」 カマタマーレ「提案は心強い」

Jリーグ対応のサッカー場を併設したスタジアムへのリニューアルを含め、再整備計画に揺れる屋島陸上競技場=高松市屋島中町
Jリーグ対応のサッカー場を併設したスタジアムへのリニューアルを含め、再整備計画に揺れる屋島陸上競技場=高松市屋島中)

 「屋島は陸上競技場として充実させるべき」「Jリーグができるような立派な競技場が本当に必要なのか」。市が屋島陸上競技場の再整備案を提示した二日の市議会総務消防調査会。議員の発言は、Jリーグ対応のサッカースタジアム化の是非に集中した。
  市国際文化・スポーツ局は「市の基本的な考え方を示す段階であんなに意見が出るとは」と予想を超える反応に困惑を隠さない。

東部復活案も
  調査会の委員の一人で保守系最大会派同志会の幹事長を務める鎌田基志市議は「課題を残したまま、サッカー場ありきの計画という印象を受けた」と改修に対する市の姿勢に疑問を呈する。
  最大のネックとして挙げるのは、交通アクセスの問題だ。Jリーグ対応となると、J2でも一万人、J1なら一万五千人収容の観客席が必要となる。それに対し、市案によると、駐車場の収容台数は、周辺の公共施設を活用した臨時駐車場を含めても最大二百九十台で、絶対的に不足する。JRと琴電の駅から近いという立地を考慮しても、交通アクセスの問題は不安が残る。交通渋滞へのハード面での対策も必要だろう。
  課題は、交通アクセスだけでない。競技場は市街地にあるため、サポーターの応援に伴う騒音やナイター照明による光害の対応策も欠かせない。地元自治会関係者は「人が集まるのはいいが、騒音が発生したり、交通がまひしては困る。市には問題解消に向けた具体的な対策を示した上で住民の意見を聞いてほしい」と訴える。
  こうした課題の多さに、「東部運動公園にサッカー専用の競技場をつくればいい」と提案するのは、市議会市民フォーラム21の山崎数則会長。
  しかし、同公園は、市が二年前に財政難から整備計画を縮小した際、サッカー場を併設した陸上競技場の整備も取りやめ、国の補助金を減額した経緯がある。市公園緑地課は「いったん減額した補助金が復活する可能性はゼロではないだろうが、聞いたことがない。市単独でも整備できなくはないが…」と口ぶりが重い。
  さらに、計画縮小に伴い、公園のコンセプトを、公式競技場から市民が気軽に使える運動公園に変更しており、Jリーグをやるがために市民が気軽に使えないのでは、公園の存在意義自体が問われかねない。

年度内に結論
  それでは、当の当事者たちはどう考えているか。
  まずは、大西市長からホームグラウンド提供のラブコールを受けた格好のカマタマーレ讃岐。熊野実社長は「チームの運営面を考えれば、ホームはやはり高松にほしい。今回の市長の提案は心強い」と歓迎。その上で、「ただ『土地があるからサッカー場を』という議論ではあまりに窮屈。まちづくりの中でサッカーをどう生かすのかというビジョンが不鮮明」とあえて付け加え、屋島に限ったサッカー場整備の議論には慎重な姿勢を見せる。
  一方の陸上サイド。中学生の競技場の利用が多い県中体連の三宅章夫理事長は「併用型の競技場は、陸上とサッカーが同時に使えず、どちらかが我慢することになる。ホームグラウンドになれば、陸上が締め出されるのでは」と危惧[きぐ]。公共交通機関に近く、児童生徒らの練習拠点となっていることを踏まえ、「国際大会ができる大きな競技場でなく、市民に密着した競技場に」と訴える。
  市は年度内にサッカー場併設の有無を含めて再整備の方向性を固め、来年度には具体的な設計に取りかかりたい考えだ。地元だけでなく、陸上、サッカーの関係者からも「自分たちの意見は十分反映されるのか」と不安の声が聞こえる。改修にあたっては、サッカー場併設の是非ばかりに目を奪われてはいけない。

7案の概要

5案でサッカー併用

市が提案した再整備7プランの比較
市が提案した再整備7プランの比較
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 市が公表した7案のうち、A、Bの2案は陸上競技場のままで一部を改修・改築する構想。トラック内に跳躍競技用の砂場などがあり、サッカー場としての利用はできない。C案以降の5案はサッカー場として併用することを想定し、全面改築する。観客席数から、C、D案はJFL対応、E―G案がJリーグ対応となる。市国際文化・スポーツ局が公表している全7案の概要と事業評価は次の通り。
  【A案】トラックは全天候型に舗装。スタンドはメーン、サイドとも耐震補強中心の小規模改修。事業費は最少だが、築54年の老朽施設だけに根本的な耐震化につながらない恐れも。バリアフリー対応や付帯施設の拡充はできない。
  【B案】トラックは全天候型に舗装。メーンスタンドを耐震とバリアフリーに対応して改築する。バック・サイドスタンドは耐震補強中心の改修。陸上競技の単独施設のため、スポーツ施設充実の観点から考えると費用対効果が不十分。
  【C案】トラックは全面改修。メーンスタンドは全面改築、3500席の固定席を設ける。バック・サイドスタンドは盛り土スタンドに改修。照明は陸上公式競技に対応できる500ルクスに改善する。費用対効果のバランスの取れた計画。
  【D案】トラックは全面改修。メーンスタンドは全面改築、3500席の固定席を設ける。バック・サイドスタンドには人工地盤の芝生席を整備する。雨天練習走路を確保し、照明は500ルクス。費用対効果のバランスの取れた計画。
  【E案】トラックは全面改修。メーン・バックスタンドは全面改築、6700席と3700席の固定席を設ける。サイドは盛り土スタンドに。照明はサッカーのナイターに対応する1500ルクス。雨天練習走路を確保。高価だが費用対効果も高い。
  【F案】トラックは全面改修。メーン・バックスタンドはE案と同じ。サイドスタンドに人工地盤の芝生席、その下に50台収容の駐車場と倉庫を整備する。照明は1500ルクス。雨天練習走路を確保。事業費はかかるが費用対効果も高い。
  【G案】唯一、J1の試合が開催できる。トラックは全面改修、メーン・バックスタンドはE案と同じ。サイドスタンドも全面改築し、4600席の固定席を設ける。照明は1500ルクス。雨天練習走路を確保。最も高価だが理想的な施設。

経緯

市に移管で一躍脚光

 屋島陸上競技場は、一九五三年の四国国体にあわせ、県が高松市から土地を無償で借り受けて整備した。九七年に県立丸亀競技場ができた後も、高松以東では唯一の日本陸連公認(第三種)の陸上競技場として、児童生徒の大会や練習などに欠かせない競技場となっている。
  しかし、県にとっては丸亀競技場完成後、老朽化し、主催事業も減った屋島競技場が「お荷物」となっていたのも実情だ。昨年五月の三種公認の更新に際し、県は高松市に競技場の移管を打診。市は財政難を理由に移管を拒み、県と市が運営主体を押しつけあう中で、競技場は存続の危機に直面した。市は東部運動公園の整備計画を大幅に縮小し、計画していた陸上競技場の建設を断念していたため、高松以東には公認トラックがなくなるという最悪のシナリオも想定された。
  問題は、県が二〇〇七年度だけは県立で運営を継続し、最後の公認更新を行うことで、ひとまず決着したものの、市が「屋島はあくまで県立で」との姿勢を崩さなかったことから、陸上関係者の不安は解消されないままだった。
  解決の糸口が見えなかった事態は、高松市の市長交代で一気に好転する。新たに就任した大西市長は、昨年八月の真鍋知事との初めてのトップ会談で、県から競技場の移管を受け、市で運営を引き継ぐ考えを表明した。
  地域スポーツの振興に前向きで、Jリーグ入りを目指すカマタマーレ讃岐に対しても練習場所の提供などで「積極支援」の姿勢を示していた大西市長。移管を受ける屋島競技場については、カマタマーレがホームグラウンドとして使用することも視野に、Jリーグが開催できるサッカー場を併設した競技場へと全面的に改修する構想を打ち上げた。
  こうした市長の意向を踏まえ、市は競技場の再整備基本構想の策定に着手。そして、再整備に向けた議論のたたき台としてまとまったのが、今回公表した七つの改修・改築案だ。

【取材】福原健二、黒島一樹

(2008年6月15日四国新聞掲載)

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