今春、東京・赤坂のホテルであったフォーラムに、首都圏で働く四国4県出身の若者が集結した。呼び掛けたのも四国出身の若者。郷里の魅力を再認識してもらい、最終的には「Uターンにつなげたい」というのが主催者側の目的だ。少子高齢化で働き手の急減が危ぐされる四国4県にとっては、最高の応援団の出現だ。フォーラム開催の舞台裏に迫った。

首都圏の出身者が旗揚げ 地方の可能性に注目
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| 首都圏で四国の可能性を発信しているHIPのメンバー=東京・赤坂 |
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| 首都圏で初めて開いたビジネスフォーラム。集まった若者の意識は高く、フロアから質問が相次いだ=東京・赤坂 |
「ほんま久しぶり」。東京・赤坂のホテル会場に、讃岐弁、阿波弁、伊予弁、土佐弁が飛び交う。まるで、四国人の同窓会のようだ。それもそのはず。四国へのUターン促進が目的の「ビジネスフォーラム〜世界につながる四国の企業」は、「同窓会ネットワークを活用したUターン支援」という事業の一環。四国経済産業局と四国生産性本部の主催だが、首都圏に突如として出現した若者グループがなければ実現しなかった。
■とんとん拍子
そのグループとは「Home Island Project(HIP)」。このフォーラムを企画・運営するため急きょ結成された。その中心がニューヨークで讃岐うどんを広めた立役者「SANUKIプロジェクト」(伊藤智子代表)と、実践型インターンシップなどを手掛け、若者のチャレンジ機会を創出するNPO法人「Eyes」(松山市・横山史代表理事)だ。
伊藤さんの原点は「香川を世界にPRする」。NYでは讃岐うどんの普及・定着に東奔西走の毎日だった。ただ帰国後、「外に発信するだけでなく、香川に帰り、内から郷里を一緒に元気にしたい」という思いを強くする。それは讃岐うどんのPR活動を通じて、郷里・香川の人々と交流する中で、香川の魅力を再認識したからにほかならない。
地元財界人らを招いた勉強会を重ねるうち、「地元で育てた優秀な若者が出て行きっぱなしで戻らないことが、香川の損失になっている」ことを痛感。そして、都会の大学などに進学した若者が、香川のことを知らなすぎる現状に行き着いたという。「私だって、SANUKIプロジェクトがなかったら、気付かなかった魅力ばかり。同じような若者はきっと多いはず。Uターンを考えようにも、一体どうすればいいかが全然分からないでしょ」と伊藤さん。
「まず、同郷の若者同士がつながるプラットフォームをつくらなければ…」と活動の焦点を絞りつつあった中、舞い込んできたのが今回のフォーラムだった。四国経産局の担当者をはじめ、横山さんら四国他三県の人々とも、すぐに意気投合。とんとん拍子で事が運んでいった。
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同窓会ネットワークを活用したUターン支援の概要(クリックで拡大します) |
■高いニーズ
「本当に願ったりかなったり」。四国経産局産業人材政策課の坂井照明課長は、HIPに大きな期待を寄せる。
四国の生産年齢人口は、二〇〇五年以降三〇年までに6・5%減少すると推測されている。全国よりも十年ほど早い高齢化や若者の流出を食い止めなければ、四国の明日はない。こんな危機感から生まれたのが、同窓会ネットワークを活用したUターン支援事業だった。アンケート調査ではUターンを希望する若者や地元企業は多く、これを踏まえ、実効性の高い支援システムを構築するのが狙いだ。
これまでも自治体などが各種Uターン支援策を講じてきたが、どの事業も限定的で重複していた部分もあり、成果は芳しくない。そこで今回は事業全体を六つのカテゴリーに分け、県など関係機関の役割を明確化した。「新たに何かを実施してもらうのではなく、本業部分をうまくリンクさせて、無理のない支援システムを構築しようとしていることが最大の特徴」とは同課の三野英樹係長。全国的にも非常にユニークな取り組みとして注目を集めているが、首都圏などで帰郷意識を促してくれる活動主体がなかなか見つからず、この部分の事業が進んでいなかったことも事実だった。そんな時に伊藤さんらと出会う。「やってもらっているのではなく、同じ思いを共有する若者が自発的に組織したグループがHIP」(三野係長)。それだけに、四国の関係機関にとっては何とも心強い応援団と言える。四国経産局によると、ここに来て、関係機関から自発的な連携の申し出が続出しているという。
ただ、HIPメンバーは至って冷静だ。「目の色を変えてUターンを唱えても、嫌がられるだけ。まずは郷里の魅力を知ってもらわないと」と伊藤さん。「かえる、かなえる、香川」。夢をかなえるため、香川に帰る。そして、香川はそれができる場所。「Uターンという言葉が持つネガティブなイメージも払拭[ふつしよく]しないといけないから」。現在、さらに大規模なイベントを計画中で、HIPの動きから目が離せない。

目立つ「郷里で起業」 4県の連携体制がカギ
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| 四国へのUターンを希望しますか(クリックで拡大表示します) |
さて、今回のビジネスフォーラムには、職人の手仕事から生まれる唯一無二の家具をつくり続ける桜製作所(高松市)の永見宏介社長、使用電力すべてを風力発電でまかなう「風で織る」タオルで有名な池内タオル(今治市)の池内計司社長ら四国四県の企業トップらが登壇。四国の可能性を熱っぽく語りかけた。
参加した若者の反応はどうだったのか。参加約百人へのアンケート(回収五十人)をみると、Uターンを「希望する」は52%と、まずまずの好感触だった。「四国にも世界を視野に頑張っている企業がたくさんあることを知り、励みになった」「可能性は地方にある」などの意見が寄せられており、Uターンを考える契機には十分なったようだ。
また、郷里での起業を考える若者も目立っていた。香川出身の二十三歳の男性は「高校時代はないものばかりが目に付いたが、今はないことが逆にチャンスに見える」と郷里での起業を目指す若者の心境を代弁する。四月に庁内に人材Uターンセンターを開設した県は「就職、生活情報のほか、起業担当課とも連携して、こんなニーズにも幅広く応えていきたい」(小河恵朗県労働政策課長)とセンターの一層の充実を約束する。
今回の取り組みは、四国四県で連携して取り組もうという点が特徴。道州制を見据えれば当然とも言えるが、まだ足並みがそろっているとは言い難い。
出身県に自分を生かせる企業があるとは限らず、県単位の取り組みに限界があったのも事実。四国の自然や歴史・文化など、他にない地域資源を生かし、U・J・Iターンに結び付けるためにも、四県でUターン希望者や企業情報などを共有する支援システムを構築する意味は大きい。だが、財政難もあってか、今のところ踏み込んだ議論にまでは至っていないという。
四県出身の若者は首都圏で手を握り、「My Homeisland(四国)」のために、「自分たちでできることから取り組もう」と立ち上がった。これにどう応えるのか。次は四県の出番だ。
【取材】山田明広
(2008年5月11日四国新聞掲載)
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