シリーズ追跡 花粉症 香川の特性を検証
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市街地では再飛散も

 花粉症のシーズン真っ盛り。鼻水やくしゃみに悩まされている人は多い。毎年春先になると花粉の飛散情報や対策が話題になり、薬局には花粉症に的を絞った商品が並ぶ。これまでは原因植物としてスギやヒノキが一般的だったが、最近ではイネ科などの花粉に反応する人も多くなり、夏や秋に症状を引き起こすケースもあるという。“敵”は見えないだけに油断は禁物だ。

上昇気流で舞い上がり

スギ・ヒノキ分布図
スギ・ヒノキ分布図(クリックで拡大表示)
花芽が開花したスギ。風が吹くと花粉が一斉に飛び散る=まんのう町新目、県森林センター
花芽が開花したスギ。風が吹くと花粉が一斉に飛び散る=まんのう町新目、県森林センター
花粉観測システムの自動計測器。データは日本気象協会(東京)に送信される=まんのう町新目、県森林センター
花粉観測システムの自動計測器。データは日本気象協会(東京)に送信される=まんのう町新目、県森林センター

 「昔は花粉症なんてなかった気がする…」。生活環境の変化、体質変わりなど諸説あるが、確かにかつてはあまり話題にもならなかった。
  日本で花粉症が発見されたのは一九六一年。花粉学が専門で花粉症に詳しい岡山理科大学の三好教夫教授によると北米原産でキク科の帰化植物ブタクサでの症例報告が初めてという。英国ではイネ科の牧草による発症が十九世紀から知られ、米国でもブタクサの花粉症が一九五〇年代に確認されていた。
  日本ではブタクサに続いて六三年、栃木・日光周辺で多発していた喘息(ぜんそく)症状がスギ林からの花粉症と初めて診断された。これがスギ花粉症だ。スギが花粉症の代名詞のようになっているが、ヒノキの花粉はスギと同じ抗原を持ち、花粉の発生時期はヒノキが一カ月ほど遅いものの両方の花粉にアレルギー反応を起こす人が多いとされる。
  日本の森林面積の約四割が人工林、さらにその七割近くはスギ・ヒノキで占められている。それだけに各地で患者が次々と“発見”され、花粉症が徐々に知られるようになったようだ。

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  香川は日本一小さな県だけに森林面積も大阪(五万八千ヘクタール)、東京(七万九千ヘクタール)に次いで約八万八千ヘクタールと狭い。雨が少ないため乾燥に強いヒノキ(一万四千三百ヘクタール)がスギ(千八百ヘクタール)の八倍近くを占めるが、他県と比べるとともに格段に少ない。森林の面積が七倍の高知と比較するとヒノキは7%、スギはわずか1%にすぎない。森林のすぐ近くなどを別にすれば、他県から風で運ばれてくる花粉が発症に大きく影響している。
  スギやヒノキは花粉を風に載せて運ばせる風媒花(ふうばいか)で、虫媒花(ちゆうばいか)より花粉が小さく、遠くまで飛ぶ。季節風や偏西風に乗れば予想外の距離まで運ばれることがある。大西洋の真ん中で花粉が観測された例もあるという。
  三好教授は「香川には愛媛、広島さらに九州の大分などからも花粉が飛んで来ている可能性がある」とみる。

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  「あれ、山間部より市街地の方が多いけど、なぜ」。環境省の花粉観測システムのデータを見ると、一時間ごとの観測値の一部ながら県庁敷地内の方が、まんのう町の県森林センターにある計測器の記録を上回ることがある。風で飛ばされる花粉だから、当然かもしれないが、スギ花粉といえば森林と結びつけていたのは単純すぎたのか。
  「風の影響による差異はもちろんだが、花粉の舞い上がりかも」。花粉情報を発表している日本気象協会四国支店の気象予報士樋口宜寿さんは「一度地面に落ちた花粉が再び舞い上がることがある」という。一般的に花粉は水分を含むと壊れるが、乾燥した条件下ではそのまま残る。三好教授は「乾燥した所なら一、二カ月は分解されずに残るだろう」という。
  いったん落下した花粉が、アスファルトなど乾燥した場所で分解しないまま、日光によって温められた地表近くの空気の上昇気流で舞い上がる。特に都市部では予測以上の花粉が飛ぶことがあるという仮説だ。樋口さんは何度も繰り返し飛散する可能性があるとみる。降雨量の少ない香川だけにその影響は大きくなるだろう。
  同協会が出す花粉情報は、県内五カ所の観測データや過去の飛散分布、該当する日の気象予報などを基に予想。スギは乾燥状態になると花粉を散らす。そのため、雨上がりの晴天や晴れて暖かい日が続くと飛散量が増えることなどを勘案して飛散量を推測しているが、市街地などの「舞い上がり」までは想定していない。計測法の誤差を考慮する必要はあるものの、未分解のまま花粉が吹きだまりなどで“濃縮”され、飛散量が多くなることを覚悟して行動する方が無難だ。

インタビュー

香川大付属病院耳鼻咽喉科講師・唐木将行氏
幼児期に犬飼育で抵抗力

唐木将行氏
からき・まさゆき 1993年香川医科大卒。永康病院(三豊市詫間町)医員などを経て、97年に香川大医学部助手。2005年9月から現職。日本耳鼻咽喉科学会専門医。NPO法人花粉情報協会理事。広島県福山市出身。41歳。

 ―一般に知られているスギ、ヒノキ以外で花粉症を引き起こす植物は。
  春から夏にかけてはイネ科のスズメノテッポウやスズメノカタビラ、カモガヤ、オオアワガエリなどがある。秋ではキク科のブタクサ、ヨモギなどが代表的だろう。いずれも道ばたや空き地、水辺など身近な場所に自生している。少数だが秋を象徴するススキに反応する患者さんもいる。
  これらイネ科やキク科の花粉は抗原性、簡単に言えば性質が似ているので、このうちの一種にアレルギー症状が出ればすべての種に反応する可能性が高い。近年は特にイネ科の花粉に反応する患者さんが増えている。花粉症の時期は春先だけではないということだ。
  ―抗原とは。
  鼻から吸い込んだ花粉は鼻水と混ざり、タンパク質が溶け出してくる。このタンパク質の成分と理解すれば分かりやすいだろう。成分に抗体反応することでくしゃみや鼻水などの症状が出る。
  ―どの種の花粉でも抗体反応を起こすのか。
  例えばマツはスギよりも花粉量が多い。でもマツの花粉が影響している患者さんは少ない。食べ物でもアレルギーを起こしやすいものと、起こしにくいものがある。魚ではサバのアレルギーはよくあるが、マグロは聞かない。恐らくタンパク質の性質が違うのだろう。植物もタンパク質の種類によって原因となるかどうかが決まるようだ。
  ―これまで知られていなかった新しい原因植物があれば。
  十年ほど前から問題になっているようだが、神戸の六甲山あたりを造成した際、兵庫県がヤシャブシ(カバノキ科)を植栽した。二月ごろに花粉が飛散するのだが、ヤシャブシが原因で花粉症になった人が通常の症状に加え、フルーツアレルギーになっているようだ。
  疫学的には45%の人がリンゴやキウイなどのバラ科のフルーツを食べると口が腫れたり、下痢などの症状が出ている。最近、市民グループがヤシャブシの伐採を進めているらしい。県内にも一部地域で自生しているので注意が必要だろう。
  ―なぜ、花粉症の患者が多くなったのだろう。
  幾つか説がある。その一つが、環境がきれいになりすぎているという「衛生仮説」。赤ちゃんのときからある程度、菌が出す毒素などに触れている方がアレルギーになりにくいという考えだ。
  昨年、米シンシナティ大学の内科医師らが犬を二匹飼っているとアレルギーになりにくいという興味深い論文を専門誌に発表した。喘息などの症状がある一歳児五百人をモデルにした調査で明らかになったとしている。
  犬が家の中にいるとごみなどが増えて衛生状態が悪くなるが、データを見ると二匹飼っている状態で症状が緩和されている。恐らくアレルギーに対する抵抗力がつくということだろう。衛生仮説を補強するデータといえる。
  また、二歳までに家庭内に犬などがいるとアレルギー体質になりにくく、小学生ごろなって初めて飼い始めるとアレルギー体質になりやすいとされている。これは日本アレルギー学会の試験問題にも出ているほどだ。
  ―花粉症になりやすいタイプはあるのか。
  両親のどちらかがアレルギー体質であれば、子どももなりやすい。ただ、割合的にであり絶対とは言い切れない。ちなみに、患者さんは男性よりも中年の女性が多いようだ。
  ―発症のメカニズムを。
  基本的に人は異物が体内に入ると、自己でないものは全部外に出そうとする現象が起きる。どういった形で出すかというと、くしゃみとか鼻水が多い。花粉症の症状は侵入した異物を排除しようとする自然な反応。対策としてはマスクなどを着けて花粉を吸い込まないことと、花粉が飛び出す一、二週間前から薬を服用する初期療法が大切だろう。

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 岡克典、戸城武史が担当しました。


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