シリーズ追跡 飲酒運転どう防ぐ
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まず自覚、環境整備も

 飲んだら乗らない。飲酒運転の撲滅に向け、本人のモラルが真っ先に問われるのは当たり前。しかし、厳罰化の機運が高まる中、酒を提供する飲食店にも厳しい目が注がれている。県内でも一部店舗が既に対応に乗り出しているが、まだまだ業界ぐるみの取り組みとは言えないようだ。「飲ませたら乗せない」ための工夫の現状を探った。

飲食店の対応=工夫も足並みそろわず 「客商売」「負担」ネック

飲酒運転抑止につなげようと、代行運転を利用する客に割引券を手渡す従業員=高松市一宮町の「海鮮うまいもんや 浜海道」
飲酒運転抑止につなげようと、代行運転を利用する客に割引券を手渡す従業員=高松市一宮町の「海鮮うまいもんや 浜海道」

 「代行でお帰りでしたら、次回ご来店時にお使いください」
  高松市一宮町の「海鮮うまいもんや 浜海道」。ほろ酔い加減で清算するグループ客を前に、従業員が差し出したのは店の食事代割引券。酔客が代行運転で帰ると把握した場合に、車一台につき千円分を渡している。サービス分は丸々、店の持ち出しだ。「正直きついが、こんなご時世でしょう。店として飲酒運転防止に協力する姿勢を出すのはもちろん、客の違反や事故があれば結局は店の存続にかかわる」。経営者は取り組みをこう説明する。

 初摘発に動揺
  「浜海道」が県内三店舗でサービスを始めたのは今年七月。死亡事故を起こした客に、車で来店したと知りつつ酒を出したとして、坂出市内の飲食店経営者が道交法違反(飲酒運転ほう助)容疑で逮捕された直後のことだ。
  県内初の「ほう助犯」摘発。さらに九月、福岡市で幼児三人が犠牲になった死亡事故があり、酒を提供する側のモラルがいよいよ問われる中、駐車場のある郊外の居酒屋やレストランは対応に頭を悩ませている。
  高松市香西南町の「炭焼工房 禅」は、九月中旬から地元の代行業者と連携したサービスに乗り出した。代行業者が発行する七百円割引券に店側が三百円を上乗せ。利用者は代行料金が千円引きになる。飲酒運転取り締まりが強化された九月以降、売り上げが落ちたという同店。それだけに、「帰りの足の負担を気にせず、安心して飲める店として、お客を呼び戻したい」(店長)との思惑もあるようだ。

 強制できない
  酒を飲んだ客に運転させない。そのために店側はどこまで踏み込めるのだろうか。
  県内に十六店舗を展開するファミリーレストラン「ジョイフル」(本社・大分市)は、九月に接客マニュアルを改め、酒類のオーダーを受けた際に「飲酒された方は運転しないようにお願いします」と声掛けしている。レジでも再度声を掛け、依頼があればタクシーや代行業者に連絡を取る。
  ただし、「酒類がメーンでないので、取り締まり強化でも売り上げに影響はない」と同社が話すように、こうした声掛けは酒と食事、どちらに比重を置くかに左右されそう。「客商売で立ち入ったことは聞けない」。酒類を主力としている居酒屋などにとっては、これが本音のようだ。ある居酒屋の従業員は「客が飲酒運転すると分かれば、止めなければならない。でもトラブルになるのも怖いし、客離れも怖い。それなら運転しようがしまいが、聞かない方が身のためでしょう」と明かす。
  「代行の割引券でもあれば多少は声を掛けやすいのだが…」。店側からはそんな声も聞かれるが、発行しているのは一部業者にとどまる。県内大手のテクノは既に、携帯番号を登録した会員向けに独自の割引制度を導入済み。担当者は「飲食店との連携は検討中だが、いま以上の割引は厳しい」と話す。

 自助努力頼り
  現在のところ、酒を出す側の工夫は店ごとの「自助努力」にかかっている。小豆島のホテル・旅館業者でつくる小豆島観光旅館組合(三枝邦彦理事長)が、宿泊客や宴会客のアルコール濃度をチェックしてから車のキーを返却する取り組みを始めると決めたが、肝心の飲食業界は動きが鈍い。
  県内の居酒屋やレストランなど約千五百店が加盟する県飲食業生活衛生同業組合(榊久雪理事長)は九月、加盟店に掲示してもらう啓発ポスター三千枚を作製した。「個々の店での対応には限界がある。組合として何もしなければ、業界全体が衰退しかねない」。榊理事長は危機感を募らせる。
  しかし、会員の飲食店には経営規模の大小があり、「一律のサービスを展開できるかどうか。打つ手は限られる」(榊理事長)という。内々にはタクシーや代行業者との連携を模索しているというが、実現の見通しは立っていないのが現状のようだ。

厳罰化は進むけれど…=乗せない機運必要 高い再犯率、矯正制度を

 県内では今年、飲酒運転による事故で既に二十四人が犠牲になっている。前年四人の六倍という異常事態だ。県警は九月に続き、十八日から二度目の「取り締まり強化週間」を設けるが、今回初めて実施場所に「郊外の居酒屋周辺」と明記。郊外店に向けられる目は一層厳しくなる。
  当の店側は複雑な表情だ。「パトカーに張り付かれた日もあったが、そうなると客は入ってこない」「もう店がもたない。業態を変えることも考えなければ…」と焦りを隠せない。これまで飲酒運転の客で商売が成り立っていたとすれば論外だが、高松市内の飲食店主によると、「違反しない客も外で飲まなくなっているのが実感」という。
  とはいえ、県警の姿勢は変わらない。「飲酒運転撲滅に向けた機運がここまで高まったことはかつてない。死亡事故の急増という悪い結果が出ている以上、取り締まりは続ける」(交通部)。

 自ら範を示す
  福岡市職員による幼児三人の死亡事故を受け、公務員への風当たりが強い。
  県内では県が懲戒処分の基準を見直すほか、高松市や善通寺市、観音寺市、三豊市でも新たに基準を定めたり、厳罰化へ。いずれも、飲酒を勧めた者や同乗者にも飲酒運転者と同様の基準を適用。四市では飲酒の程度や事故の有無にかかわらず、飲酒運転発覚で免職処分にもなる。
  「職員から逮捕者を出しましたから」。高松市では「飲酒後八時間は運転禁止」といった飲酒運転防止マニュアルも策定。消防やごみ収集業務の担当部署には、飲酒検知器を導入して業務前チェックを義務付けるなど、信頼回復に躍起だ。善通寺市でも、飲酒に対する自覚をさらに促そうと全職員に誓約書を提出させたり、職員の親ぼく団体の経費ですべての部署に飲酒検知器を導入する計画。
  ただ、気になるのがこうした取り組みの効果。内規を厳しくしたり、検知器を導入するのは、身内から逮捕・摘発者を出さないための防衛策では、との声も聞こえてくるからだ。公務員として法令順守は当たり前。内向きでなく、もっと社会全体に訴える施策が打ち出せないものか…。
  「田舎ですから、法事や親せきの集まり、地域の祭りなんかで酒を勧めたりしますよね。軽い気持ちで。今回の懲戒処分基準の見直しは、そんな場合も処分の対象になりますよ、ってことなんです」
  こう話すのは県の人事担当者。「県職員の数はわずかですが、自ら範を示すことで飲酒事故撲滅への機運を高めていくのが狙いです」。
  飲酒運転撲滅を呼び掛けるレッドカードを全職員に配布した坂出市。要望があれば、市民にも配布するというが、「まずは公務員が率先して」というのが、各自治体の共通した思いのようだ。

 周囲が後押し
  興味深いデータがある。県警が二〇〇三年から〇四年にかけて、飲酒運転違反者を対象に行った実態調査だ。その結果、違反者が目立ったのは高松市や観音寺市と合併した旧町エリア。いわゆる郊外在住者だった。「夜間に公共交通機関がなくなる」「マイカーなしでは翌日困る」といった共通事情も見て取れる。
  「確かに地域差、地域の事情はあるだろう」と話すのは、交通科学研究所長の長山泰久さん(大阪大学名誉教授、交通心理学)。
  長山さんによると、飲酒運転をしたことがあるか調査したところ、大阪では45%超、宮城25%、東京や鹿児島は15%程度と、都道府県でもかなりの地域差があった。残念ながら香川のデータはないが、「地域で酒の飲み方、飲ませ方が違う。酒に対するおおらかさも。個々人の安全に対する意識も大切だが、『ドライバーには飲ませない』という周囲の後押しも大事だ」。
  どうやら飲酒運転撲滅へのカギを握るのは、個人だけでなく、周囲の心掛けも重要と言えそうだが、何か実効性のある対策はないのだろうか。
  そんな問い掛けに長山さんは、「飲酒運転には常習性が認められ、再犯率が高いのが特徴。画一的な処分者講習だけではなく、科学的なカウンセリングの手法を用いた再教育・矯正のシステムが必要ではないか」と提案。「欧米のように中学・高校生の時期からアルコールの危険性について、学校でちゃんとした飲酒教育をすべきだ」とも話す。
  マイカーが移動手段の主となる香川。酔客の自覚のなさが一般市民を事故に巻き込む怖さを考えれば、意識啓発や業界の取り組みに任せるだけでなく、社会全体で「運転させない」ための仕組みづくりを考える時期ではないか。

私にも言わせて=自衛策、意見など募集

 飲酒運転を防ぐには、どうすればいいのでしょうか。ハンドルを握るドライバー個人の自覚が何より大切なのは言うまでもありませんが、悲惨な事故は後を絶ちません。
  そこで読者のみなさんから、外で飲む際の自衛策や心得、行政や警察、飲食店、交通機関などへのご意見や要望、体験談を募集。次回の「追跡」で紹介します。
  住所、氏名、年齢、職業、電話番号、飲酒歴を明記。〒760―8572 高松市中野町十五ノ一 四国新聞社編集委員室まで封書か、ファクス(087−833−2569)、メール(tsuiseki@shikoku-np.co.jp)でお寄せください。十二日必着。採用分には謝礼を送ります。

 広瀬大、山下和彦、戸城武史が担当しました。

(2006年10月8日四国新聞掲載)


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