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何なんだ!ATMの手数料

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根拠はあいまい

 ゼロ金利こそ解除されたが、地元金融機関の利息は依然すずめの涙。ATM(現金自動預払機)を時間外に使うと手数料を取られ、「元本割れ」に陥りかねない。どうして自分のお金を下ろすのに手数料が掛かるのか。一方で、ATMの振込手数料は四国内で無料化が相次いでいる。なら評判の悪い「時間外」も何とかなるんじゃないか。くすぶる不満に背中を押され、金融機関を直撃した。

なぜ「時間外」は必要?=横並び意識が元凶 地銀「コスト掛かる」も…

ATM手数料の現状
ATM手数料の現状
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 「ほんとに大失敗。絶対取られまいと決めてたんですけどね」。午後六時十分、高松市内のスーパー。仕事帰りの女性会社員(34)はATMでお金を下ろし、百五円の手数料に顔をしかめた。「今から十円単位で節約して買い物するのにもう“赤字”。預金者は切なすぎますよ…」

 百十四銀行と香川銀行のATMでお金を引き出す場合、自行のキャッシュカードでも平日午前八時四十五分までと午後六時以降、土日祝日は終日、時間外手数料の百五円を預金から差し引かれる=表参照=。
  一体なぜなのか。疑問をぶつけると、両行の担当者から同じ答えが返ってきた。「システムの稼働や警備委託などでコストが必要。手数料収入ではペイできない」。その上、申し合わせたようにこう強調した。「利便性を提供する代わり、受益者に一部を負担していただかざるを得ない」
  ただ、実際にどれだけのコストが掛かっているかには、そろって口を閉ざす。時間外の手数料収入の総額も明かさないから、「一部」として利用者に何割程度の負担を強いているかも分からないままだ。

時間外手数料の無料化が好評な観音寺信用金庫のATM
時間外手数料の無料化が好評な観音寺信用金庫のATM。でも県内地銀は…=観音寺市観音寺町

 もう一つ疑問がわく。百五円の根拠だ。両行はATMの台数も違えば、時間外に要するコストも異なるはず。料金設定は各行の自由裁量なのに、同額というのはどうしてなのか。
  百十四銀行の担当者は「明確に説明できないですよ。サービス競争の中で値上げできないし、台数が多く他行よりもコスト高なので下げられもしない」と困惑の色ありあり。一方、香川銀行の担当者は「同じサービスだから同じ額でもいいんじゃ…」と、こちらも歯切れが悪い。
  全国的にみても、一応の「基本線」は百五円。ある銀行OBは「先行した金融機関に各行とも追随し、さみだれ式に波及した」と真相を明かす。どうやら「横並び意識」が強く働いた経緯から、どこも自前の料金設定すら根拠を説明できないようだ。

 実はすでに、手数料の根拠をぐらつかせる「異変」が起きている。ここ一カ月足らずの間に、四国内の地銀などが自行のキャッシュカードによる本支店間の振込手数料について、次々と無料化に踏み切っている。
  きっかけは六月十九日の伊予銀行の発表。すると翌二十日、愛媛銀行と愛媛信用金庫が追随。間もなく高知と徳島の地銀、信金が“参戦”した。これに慌てたのが県内金融機関。様子見だった香川銀行が今月十三日に発表。百十四銀行も近く実施を打ち出す予定で、観音寺信用金庫も前向きに検討している。

ATM振込手数料の無料化を決めた四国の主な金融機関

  「振込」の料金体系はこれまで、四国内の地銀同士で見事なまでにそろっていた。今回の無料化合戦でも、見せつけられたのは「横並び」。発表のタイミングに加え、実施も同時期になっている=表参照=。
  さらに、「同一支店間=無料」「本支店間=有料」としてきた区別もあいまい。百十四銀行は四月、「オンライン化で自行内の送金コストは同じ」として、同一支店間を本支店間と同額に有料化したばかりだった。ところがライバル地銀などの動向を受け、再び軌道修正する右往左往ぶりだ。
  「手数料はコスト負担だけでなく、提供する利便性に見合ったサービス料の意味もあるんです」。ある地銀の担当者は弁解するが、振込をめぐる動きをみると、根拠は揺らぐし、競争意識さえ働けば無料化できたわけだ。時間外も「努力次第」ではないだろうか。

ずっとこのままなの?=一部大手、信金は無料 識者「利益還元の時代へ」

 時間外手数料の無料化がむちゃな相談かというと、案外そうでもなさそうだ。大手銀行を中心にサービスはかなり充実している=表参照=。
  「いつでも無料」を掲げるのは新生銀行。総合口座を持つ顧客に対し、ATMを二十四時間無料化。他行のATMで預金を引き出した場合でも、手数料をキャッシュバックする。ただし、振込は受け付けていない。
  完全実施とはいかないまでも、預金残高、住宅ローンやカードローンの利用状況、給与・年金の受け取りなど取引状況によって、時間外を無料にする優遇サービスの例は多い。
  例えば三菱東京UFJとみずほ、三井住友のメガバンクでは条件となる預金残高も割と低め。地銀でも中国銀行、徳島銀行などが同様のサービスを実施している。各行とも「利益還元の一環」とするが、顧客の囲い込みが激しさを増しているようだ。

大手行によるATM時間外手数料の無料化サービスの主な例

 県内をみると、観音寺信用金庫は時間外が完全に無料。担当者は「利便性が高いと好評ですよ。利益還元の意味合いもあります」。むろんコストは他金融機関と同様に発生しているが、「そんなに大きな負担じゃない。何も顧客からもらわなくても他で努力すればいいんですよ」と明快だ。
  高松信用金庫は平日の午前八時四十五分以前、土曜午後二時までが無料で、県内地銀よりやや優位。「ハードルは高い」(担当者)ものの、取引実績に応じて無料、半額になる優遇サービスも設けている。
  県内に限らず信用金庫には差別化が目立っており、四国内では半数以上が完全に無料か、日曜祝日を除き無料となっている。
  また、同列には論じられないが、四国労働金庫や日本郵政公社はいずれも手数料が掛からない。
  経営基盤やATMの台数は金融機関でそれぞれ異なるものの、どうやら無料化は経営判断次第で可能なようだ。四国内で起きている一連の振込手数料無料化の動きからも察しがつく。
  ただ、複数の金融機関から漏れ聞こえてきたのは「時間外の収入は振込の数倍。かなり大きいですよ」。そこには、「外堀が埋まらない限り手放したくない」との執着心が透けてみえた。

 「公的機関が減価計算の裏付けや、法的にも根拠のない百五円を取るのは許されない。横並びは独禁法違反の疑いすらある」。時間外手数料について語気を強めるのは、経済ジャーナリストの須田慎一郎さん。将来的に「メガバンクが完全無料化を打ち出す可能性があり、そうなれば全国への波及につながるのでは」と予測する。
  経済評論家の三原淳雄さんは「ATMでは窓口事務の軽減や支店統廃合などの合理化、顧客囲い込みで銀行側にメリットがあった。その費用を顧客に転嫁したのがそもそも間違い」とばっさり。「最近は利益が戻ってきたんだから、できるところから利用者に還元すべき。自由化の中、そこで差別化しないと生き残れない」と喝を入れる。
  地方はまだ横並びが根強いが、自由化は大きな流れ。地元金融機関は旧態依然としていないで、「時間外」など身近で分かりやすいサービス向上に取り組んでほしい。でないと、県民にそっぽを向かれちゃうんじゃ…。

 広瀬大、佐竹圭一、戸城武史が担当しました。

(2006年7月16日四国新聞掲載)

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