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意外に少ないジューンブライド

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「神話」も雨に勝てず

  6月に結婚した花嫁は幸せになれるという「ジューンブライド」。もともと西洋の言い伝えらしく、日本でもすっかり定着した言葉だが、周りの友人、同僚に聞いてみると案外、「6月組」が見当たらない。県内の結婚式場でも件数は伸びておらず、ブライダルシーズンと呼ぶにはほど遠いようだ。女性が一度はあこがれる「神話」とばかり思っていたが、どうやら現実は違うみたい。結婚式のスタイルが個性化する中、いざ日取りを決めるカップルの思惑は―。6月の花嫁の不思議を探った。

カップルの本音は=「こだわり」多様化 春秋が人気/割引の月選択も

教会前でのフラワーシャワーは式のハイライト。雨を心配して6月挙式を避けるカップルも少なくない=高松国際ホテル
教会前でのフラワーシャワーは式のハイライト。雨を心配して6月挙式を避けるカップルも少なくない=高松国際ホテル

  「ジューンブライドですか。意識してないですね」。高松国際ホテルの新川美香マネジャーによると、書き入れ時は春と秋。六月は閑散期の夏場ほど少なくないが、「何件も集中する日はない」。高松市内の結婚式場を回っても、六月の婚礼数はどこもいまひとつで「中の下」といったところ。「四十年業界にいるが『ジューンブライドでなきゃ』と六月を選ぶ客は記憶にない。式場も六月は勧めません」と話すベテラン担当者もいるほどだ。

台無し
 やはりというか、六月が敬遠される理由は「雨」。最近増えてきたガーデンウエディングも室内に変更されてはがっかりだろう。
  主流のチャペル挙式も希望通りに進まない。「うちは全天候型の施設でないので雨の影響は大きい」と話すのは聖ソフィアチャーチ(高松市)の藤沢昌之支配人。永遠の愛を誓ったばかりの二人にとって最初の見せ場は青空の下でのフラワーシャワーだが、雨では台無しだ。
 何より大変なのは招待者への気遣い。移動手段はどうするのか、衣装が濡れた場合は―。式場にとっても雨対策は頭が痛い。損保会社が業界向けに、雨の場合の収益減少を補償する天候デリバティブ(金融派生商品)を売り出しているほどで、「ジューンブライドをうたい文句に六月をPRする式場はないと思いますよ」(藤沢さん)。

県内の月別婚姻数の推移
県内の月別婚姻数の推移
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ご成婚
 過去に六月の結婚がブームとなったことはあるのだろうか。県人口動態統計をみると、「ミレニアム婚」「新世紀カップル」が話題になった二〇〇〇年、〇一年は一月と十二月の婚姻数が大幅アップしているが、六月はほぼ平均的に推移している=グラフ参照=。
 六月のグラフで変動理由を説明できそうなのは、秋篠宮、皇太子両殿下がそれぞれ六月に結婚された一九九〇年と九三年。月別件数で七番目が定位置だったのが四位と五位に上昇している。両殿下の六月ご成婚は「諸々の公務を調整した結果」(宮内庁)らしいが、「ロイヤルファミリーと同じ時期に」とカップルが影響を受けた可能性は高そうだ。
 ただ、入籍届けを出しても結婚式や披露宴を行わないケースも増えており、各式場とも「皇室にならった六月挙式のブームは実感できなかった」という。

ライトアップされた屋外でのケーキカット。個性を出しつつ、気配りを忘れないのが最近の傾向らしい=高松国際ホテル
ライトアップされた屋外でのケーキカット。個性を出しつつ、気配りを忘れないのが最近の傾向らしい=高松国際ホテル

均等化
 「春は花散り、夏は腐れ縁、秋は飽きやすしとて忌み…唯冬を最も佳し」。明治三〇年代の「東京風俗志」(平出鏗二郎著)によると、かつての婚礼シーズンは冬。中でも数えで女性の年齢が増える前の十二月が定番だったらしい。
 それが今では季候の良い春と秋に移った模様だが、月別の挙式数は均等化する傾向にある。県内の婚姻数でも、万年最下位の八月をはじめ夏場の入籍が年々増加。三十年前に約五倍だった月別の格差は二倍程度まで縮まっている。
 「オフシーズンで割引が効くなら」と合理的に日取りを決めるカップルも増えているようだが、各式場がそろって指摘するのは「できちゃった婚」の増加。「うちは半分くらい」と話す式場もある。日はともかく月を選んでいる余地はないようで、おおっぴらに「スピードプラン」を売り出している式場も少なくない。

なぜ広まった=ホール婚の宣伝文句 67年ごろ業界提案

 ジューンブライドの発祥はヨーロッパ。六月「ジューン」の由来が結婚の女神「ジュノー」だったり、農繁期明けの六月に結婚が多かった…のが言い伝えの根拠らしい。教会での挙式を連想するが、ジュノーはローマ神話の神だから「キリスト教とは無関係」(四国学院大宗教センター)。ブライダル業界が閑散期の集客を狙って持ち込んだというのがもっぱらの説だが―。

海外事情調査
 「私たちが最初かも」。業界関係者らに尋ねてたどり着いたのはホテルオークラ(東京)元副社長の橋本保雄さん。自ら業界に呼び掛けて発足させた全国BMC(宴会支配人会)で一九六七、六八年ごろ、ホールで結婚式を挙げてもらうための宣伝文句として「ジューンブライド」を提案したそうだ。「いいアイデアはないかと海外の婚礼事情を調べるうちに知った言葉。それまで聞いたことはなかったよ」。
 橋本さんによると、今でこそ伝統となった神前結婚式は一九〇〇(明治三三)年の大正天皇の結婚式が始まりで、ホール婚が普及したのは戦後の話。ブライダル業が産業となったのはせいぜい五十年前で、やがて「バージンロード」といった和製語やろうそくメーカー発案の「キャンドルサービス」が次々誕生したという。
 当時、新興業界の関係者が集う勉強会だったのがBMC。「そこで出た披露宴のノウハウやブライダルフェアの企画はすぐ全国に広まった」と橋本さん。だが、ジューンブライドに関しては「昔は式場の空調も性能が悪く、やはり梅雨の時期は受けなかった」とみている。

情報誌次第で
 それでも橋本さんは「雨が降っても、最近はバスを用意できるし、映像や音響の発達で晴れやかな室内を演出できる。工夫すれば六月の婚礼はもっと増えるはず」と話す。映画や音楽、ファッション誌などで「ジューンブライド」を見聞きする機会は相変わらず多い。
 ただ、肝心の結婚情報誌はまったくと言っていいほど六月にスポットを当てない。
 ある式場関係者は「最大手のゼクシィが六月を特集すれば一気に流行しますよ。結婚を控えたカップルに与える影響はそれほど強烈」と指摘するが、当のゼクシィでは「六月にこだわる人はいるだろうが、全体のニーズでない」と特集を組む予定はない。さらに事情を聞くと「結婚を決めるタイミングはまちまち。いつ特集を組めば『六月希望』の読者に応えられるか、市場をつかむのが難しい」という。

「らしさ」重要
 「報告すると皆からジューンブライドだね、と言われた。やっぱりうれしいですね」。三日に高松市内で結婚式を挙げた女性(23)。六月の花嫁にあこがれた時期もあったというが、「六月に決めたのはたまたま。上旬なら雨も大丈夫と思って」とも。
 「合理的でドライな反面、招待者のもてなしに非常に気を遣う」。最近のカップルの傾向を、ザ・チェルシー(マツノイパレス、高松市)の渡辺喜一常務はこうみる。結婚式や披露宴も個性の時代で、キーワードは「自分たちらしさ」だが、何でも本人たちの思い通りに決めるわけでない。大安、仏滅など六輝に関しては、両親や祖父母の意見にあっさり従うそうだ。
 渡辺さんによると、昔は新郎新婦だけが主役だったが、いまや招待者、両親を含めた「参加型」が主流。二人にとって、自分たちが企画したイベントを楽しんでもらえたか、記憶に残ったかが成功の鍵を握るようだ。「そうした中でジューンブライドはだれのためか。おのずと優先度は低くなるでしょうね」。
 個性と気配りの絶妙なバランスが求められる昨今の結婚式。一生に一度(?)のイベントもいろいろ気苦労がありそう。花嫁も夢見てばかりはいられないようだ。

広瀬大、鏡原伸生、佐竹圭一が担当しました。

(2006年6月4日四国新聞掲載)


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