シリーズ追跡 瀬戸大橋料金値下げできるか
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増収との両立可能?

 世紀の大事業、夢の懸け橋とうたわれ完成してから十八年。瀬戸大橋の利用が低迷している。一九九七年度の日平均一万六千百二十六台をピークに毎年下げ続け、二〇〇四年度は同一万三千九百十台とじり貧だ。こうした低迷傾向を打開しようと、本四高速会社は民営化を機に十、十一月の二カ月間、坂出―与島、児島―与島の往復を半額とするUターン割引を実施した。結果は前年同期比で二・四倍を記録。台数の上では料金の半額効果を見せつける格好となった。「値下げより借金返済が優先」とする本四高速は、この結果をどう見るのか。また「収益を減らさずに値下げもできるアイデアがある」と名乗りを上げる研究者も現れた。双方の主張を追った。

本四高速の実情=「確実に償還」大幅割引できず

Uターン割引実施(期間中交通量)
Uターン割引実施(期間中交通量)(クリックで拡大)
瀬戸中央自動車道 橋上交通量の推移
瀬戸中央自動車道 橋上交通量の推移(クリックで拡大)
自動車交通量の増加

自動車交通量の増加(クリックで拡大)

 「与島に関していえば香川、岡山両県に力を入れていただいたこともあり、予想通りの結果。通行料金を半額にするわけですから、二倍以上の交通量が見込めないと減収になるわけで、そもそも(割引には)踏み切れなかったんです」
 こう語るのは本四高速の企画部門の担当者。同社の民営化を記念し十、十一月の二カ月間実施した企画割引の結果、与島PAでのUターン交通量が前年同期比の二・四倍となり、割引効果はあった。
 企画割引は期間中、本四三ルートで展開。瀬戸大橋では、普通車や軽自動車を対象に坂出、児島などから与島PAまでをUターン往復する場合、通行料金を半額にした。両県などが主催してイベントを実施したこともあり、土日祝日だけをみると交通量は二・七倍に増えた格好だ。
 同様の割引を行った淡路SAのUターン交通量は、一・九倍と目標の二倍に届かず苦戦。利用者アンケートでも、与島は好評だったものの、淡路は「ただ、Uターンするだけで物足りない」といった声が寄せられ、明暗が分かれた。

 継続実施を
 香川、岡山両県から本四高速に働き掛けて実現した今回の記念割引。イベントのない平日も、与島のUターン交通量は日量平均で五十三台から百十一台と倍増した。
 県交通政策課は「現行の半額(坂出IC―与島PAの場合、普通車で千九百五十円)なら、家族四人だと一人当たり五百円弱の計算。利用しやすい料金なら、平日でも十分需要が見込める」と今回の成果を分析。「気候のいい時期に定期的な実施を今後も続けてほしいと本四高速に働き掛けたい」と意気込んでいる。
 だが本四高速は「瀬戸大橋全体の交通量は一日当たり一万四千台で、今回のケースは数百台の話ですから…」と、継続実施には慎重姿勢だ。
 本四ルートでは二〇〇三年七月に新特別料金を適用。基本料金から二割引きで運用していた特別料金を、さらに一割値下げ。新たに一割以上の需要増を狙ったものの、3%程度の伸びしかなく、結果的に減収になった経緯がある。
 「一割程度の割引では利用者へのアピール度が弱く、需要増につながらない」が前回の措置で得た教訓。かといって、〇四年度末現在で二兆円を超える借金の返済に影響を与えるような大幅な割引は、“お家の事情”もあって、そう何度もできないのが実情だ。

 自由度なし
 別表のように本四間の自動車交通量はフェリー時代と比べ、二・五倍に増加。瀬戸大橋に限ってみると、本四高速は「今後も横ばい傾向が続く」と予測。大口需要は頭打ち状態で「観光目的や未利用の個人客を獲得するなど、新規需要を開拓するしかない」と話す。
 「競合路線のある他の高速道路と異なり、本四には競合路線がない」とも。自治体や利用者などから、他の路線のように通勤・深夜割引を要望する声もあるが、他の路線に逃げられる心配がないため、“固定客”は現行の通行料金でがっちりつかんでおこうという本音も見え隠れする。
 「安全に橋を渡っていただくためのメンテナンスをしっかりしながら、収入を減らさない努力をし、確実に債務を返済。大勢の方に渡っていただくことが会社の社会的使命であり、社会貢献にもつながる」
 本四高速は、こう理念を強調するが「まず償還ありきで、自由なさい配が振るえない」と悩んでいるようにもみえた。

あるアイデア=元本保証付き投資配当型回数券 新規需要創出狙う 研究者特許案

FS技術早わかりモデル
FS技術早わかりモデル(クリックで拡大)

 「幸いにも交通量が増えて収入が減らないという方法を見つけるしかない」
 関係自治体からの強い値下げ要望に対して、本四高速発足時に堀切民喜社長は実現の難しさを、こう表現した。瀬戸大橋にとって交通量の増加と収益確保が、これまでの経験則からみれば、二律背反のテーマであることを暗に示したとも読み取れる発言だった。
 この発言に注目した研究者がいる。四国職業能力開発大学校非常勤講師の曽根康仁さん。「二律背反にも見える二つのテーマを満たせば、通行料の値下げをトップが約束したんだ。ならば、自分には解決方法がある」と。
 曽根さんは修士論文で料金システムを取り上げて以来、ずっと瀬戸大橋に関心を持ち、研究。独自の理論を体系化した料金システムは今年六月、ビジネスモデル特許を取得した。名付けて「元本保証付き投資配当型回数券方式」(FS技術)。
 一例を示すと、利用者は投資する意味で一万五千円分の回数券を購入。この券では瀬戸大橋を最少四回往復できることにする。この時点では、利用者にとって割得感はあまりない。しかし、追加として、回数券の総売上高(総投資額)などに応じて、最高二十一回往復できるボーナスが株主優待的に与えられるのが大きな特徴となっている。
 ほかからの乗り換えでない純粋な新規需要を創出するために、マイカー限定とし、回数券の有効期間は三カ月、利用日は土日祝日に限定する。
 計算式に基づいたポイント表で見てみる。二十ポイントで一回往復できる。売り出し初日に売り上げ目標が達成できれば四百二十ポイントとなり、二十一回往復できる計算だ。
 利用者にとっては、最低でも元は取れ、良ければ大きなボーナスが手に入り、投資額の割に非常に安く瀬戸大橋を渡ることができる。早い時点で買えば有利なシステムのため、本四高速にとっても、早い段階で総売上高が伸びることになる仕掛けという。
 曽根さんは、「せっかく作った橋を有効活用するために、皆で知恵を出す契機になれば良い」と話す。

反応=専門家・実験の価値あり 本四高速・実態に合わない

 曽根さんの提案は、新規需要を発掘する意味では斬新なアイデアといえる。これまで、瀬戸大橋とはほとんど無縁に過ごしてきた人たちの目を向けさせ、割得感を与えることで消費してもらう狙いがある。
 ただ、素人目には「利用者も会社も双方丸もうけは理に合わない。じゃあ一体誰が損をするの」との疑問がわく。出資金を募るマルチまがいではとの疑念も出てくる。これに対して曽根さんは、「商品を注文に応じて作り出さなければならない場合は成り立たないが、橋や高速道路など既に施設が出来上がっている場合は空間が無限に生成されるから、批判は当たらない」と反論する。
 北九州市立大学大学院の井原健雄教授(経済学)に疑問をぶつけると「混雑時やシステムの広報コストなど損する場面もあり、経済学的に見て全然問題はない。本質を突いたアイデア」と評価。その上で「公団時代は民間の発想をしにくく、社会実験ができなかった。最初から駄目というのではなく、民営化した今こそやってみる価値はある」と話す。
 高松大学の大薮和雄教授(統計学)は「仕組みはうまいと思う。ただ、需要が思い通り伸びるかどうか。また新規需要客に絞ると、従来の得意客から不公平感が出るだろう。利用客全体を包含したシステムにする必要がある」と課題を挙げる。
 これに対して本四高速は「利用者の実態をみるとなかなか現実的ではない」と分析。年間二回程度、つまり、帰省の際に橋を渡る程度の利用者が最も多く、三カ月で三、四回渡る人は少ないのが現状で「新たな需要を生み出す“起爆剤”になりにくいばかりか、システム作りなどの投資を考えると経費負担になる恐れすらある」と慎重姿勢を崩さない。
 ただ、利用促進につながるアイデアについては「皆さんから意見をうかがいたい」とも話す。

 山下和彦、岩部芳樹が担当しました。

(2005年12月11日四国新聞掲載)

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