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法定金利をはるかに超す利息で金を貸し、暴力的な取り立てを行うヤミ金融は、長期不況と情報化社会の落とし子といえよう。生活苦などで多重債務を背負った人たちの弱みにつけ込み、甘い誘いで地獄の苦しみに引きずり込む業者。携帯電話と口座振り込みを使い、巧みに捜査の網をかいくぐる手口は悪質極まりない。魔の手は家族はおろか親類や近所、職場にまで及ぶ。県内でも今年に入って被害が急増し、自殺者も出ているという。業者への罰則を強化したヤミ金融対策法が九月から一部施行され、被害相談こそ少なくなってきているが、新手の事犯も顕在化している。県内でのヤミ金融被害と対策の実態、根絶に向けた課題を被害者の体験談とともに伝える。

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| 多重債務者には連日、ヤミ金融業者から何通ものダイレクトメールが舞い込む。業者の間で名簿が取引されているという |
受け付け開始を待っていたかのように、次々と電話のベルが鳴る。
「二社からの取り立てがきついんですね。東京のヤミ金ですか」「警察には被害届を出しましたか」―。相談員がてきぱきとポイントを聞き出していく。
全国ヤミ金融対策会議が十月末、全国一斉に実施した「ヤミ金融一一〇番」。県内の相談窓口となった多重債務者らの救済団体「高松あすなろの会」(高松市)には、二日間で五十五件の相談があり、半数の二十八件をヤミ金融関係が占めた。
同会は今月十二日には、出資法違反や詐欺などの容疑で三百三十六業者を県警に告発した。うち二百五十九業者については、都道府県の登録を受けない無登録業者がダイレクトメールを送りつけたとして全国で初めて刑事告発に踏み切った。
前年比3.4倍
県によると、県消費生活センターなどに寄せられた「フリーローン・サラ金」に関する相談は今年四月から十月までに千三百八十三件。前年同期に比べ三・四倍に跳ね上がった。
このうちヤミ金融関連の相談は三百三十一件で、八月十八日からはヤミ金融相談専用窓口を設けて対応した。年代別では家計を支える四十代が八十七件、五十代が七十七件と多く、不況の影が色濃い。
月別の推移をみると、九月一日のヤミ金融対策法の一部施行をきっかけに減少に転じている。専用窓口への相談件数は八月に一日当たり一四・一件を数えたが、十月には三・二件となった。
同法は、大阪府八尾市で六月に起きた夫婦ら三人の心中事件を受け、出資法と貸金業規制法を議員立法で改正。上限金利29・2%を超える利息請求や無登録業者の広告、勧誘行為を摘発対象とし、罰則を大幅に引き上げた。全面施行は来年一月からの予定だが、罰則は前倒しで施行した。
県県民参画課は「電柱などに張られるビラが一時期に比べ、ぐんと減った。広告規制が利いているのだろう」と目に見える効果を挙げる。
ただ、相談件数のデータだけで被害が沈静化していると断じるのは早計だという。「新規の相談者が減っているだけで、フォローを続けている延べ人数はどんどん増えている。背景となっている多重債務の問題はあまり変わっていない」。
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見えない顔
ヤミ金融業者は、主に携帯電話とダイレクトメールで勧誘、口座振り込みで取引し、借り手から顔が見えない。多重債務者の情報を基に、貸していないのに取り立てを迫る「カラ貸し」、口座に一方的に現金を振り込んで返済を要求する「押し貸し」も横行している。
ヤミ金融対策法の施行に伴い、手口はますます悪質・巧妙化してきた。「業者の側も手を変え品を変え、ターゲットをつかまえようとしている」(県県民参画課)。少ない貸し付けで暴利を搾り取ろうとばかりに、荒っぽい方法が目立つ。
法施行後に増えてきた手口に、保証金詐欺と呼ばれるものがある。信用の実績を積むためにと、法外な保証金をあらかじめ入金させ、振り込み後に全く連絡がつかなくなるのだ。
詐欺的行為とはいえ「『後で融資するつもりだった』などと言い逃れができ、警察も手を出しにくい」(高松あすなろの会)という。
さらに、パソコンをクレジットで買わせ「高く買い取るから」といって現物だけ受け取って行方をくらませたり、債権回収業者を名乗り多重債務者を脅して金を振り込ませるケースが県内でも報告されている。
県警生活保安課は「ヤミ金融の商売が変わってきていると推測するしかない」と分析する。孫や息子を装って電話をかけ、高齢者らから金をだまし取る「おれおれ詐欺」も、実はヤミ金融業者が関与している事例が多いとみられている。
「法改正で一定の抑止効果は表れているが、周辺に被害は拡散、拡大している」と県県民参画課。法律はヤミ金融対策の一里塚にすぎないようだ。

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| ヤミ金融被害者からの電話相談に応じる相談員=高松あすなろの会事務局 |
ヤミ金融被害を食い止めるため、県警も業者の取り締まりに懸命だが、捜査には大変な手間と時間がかかるのが実情という。
ほとんどの業者はインターネットで売買される仮名や借名の口座、被害者名義の携帯電話などを使用しており、業者にたどり着くのも一苦労。また業者の実態がつかみにくく、犯人の特定や役割分担、金の流れなどを明らかにするまでに数カ月を要するという。
県警が今年、摘発したのは県内の二業者。県内の被害者の大半は東京など県外の業者によるもので、県外というだけで長期の捜査には支障が増す。
生活保安課の捜査員は「背景まで解明しないとトカゲのしっぽ切りに終わってしまう」と苦り切った表情をみせる。
県は九月、ヤミ金融の被害防止のため、県警、県弁護士会など関係八機関で連絡会を設立した。これまで業者の口座閉鎖を金融機関に要請。さらに悪質業者のデータベース化を行うなど、情報の共有を進める考えだ。
高松あすなろの会の鍋谷健一事務局長は「ヤミ金融は戦えば必ず勝てる」と、き然とした対応を呼び掛ける。「電話や口座の番号を変えても、職場や学校などに取り立ての被害が拡大するだけ」。
同会では、法定金利を超える過払い金額を被害者が業者に返還請求し、数十万円を取り戻した例もある。ただし、返還に応じたのは登録業者で、無登録業者の場合は望みは薄い。
ヤミ金融対策法は法定金利以上の契約は利息を支払う必要がないとしている。これに対し、被害者は「元金も返さなくていいようにしてほしい」と要望するが、「モラルの低下を招く」との慎重論もあり、見直し論議はこう着状態だ。
ヤミ金融業者は、多重債務者を食い物にする。県内の自己破産者は年間千人を超え、多重債務者は一万五千人から二万人との推測もある。被害者の予備軍は多い。

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| ヤミ金融業者による脅迫的な取り立ての通話内容を被害者が記録したノート |
雑誌の裏の広告を見たのが発端だった。中讃の五十歳代の男性会社員は約十カ月にわたり、ヤミ金融業者への支払いと、その後の脅迫的な取り立てに苦しんだ。
年越しを控えた二〇〇二年十二月、まとまった金を用意したいと広告の業者に電話した。「三百万円の融資枠をとった。ただし保証金を振り込んでほしい」という説明。「おかしいな」と思ったが言う通りにした。
三回で計三十一万円。指定の口座に振り込んだ後、電話をすると業者は「確認が取れていない」ととぼけた。次から電話はつながらなくなった。
三十一万円は友人から借りて用立てた。妻には内証のため、返済のあてはなかった。
年が明け、タイミング良く、ヤミ金融業者から勧誘のダイレクトメール(DM)が郵送された。「友人に金を返さないといけないから、困って、借りてしまった」。
年利数千%
業者から一万円借りると、利息が一週間で一万五千円に膨らんだ。または三万円の利息が一週間で二万五千円。年に数千%という暴利だ。
返済は一週間から十日後。すぐに期日は迫る。支払いのために別の業者から金を借りた。あっという間に「返すために借りる、借りては返す」の自転車操業に陥った。
返済日が近付くと、狙い定めたかのように他の業者から連絡が入った。多いときは一日に十五通のDMが届き、携帯電話も頻繁に鳴った。
男性は「業者名は違ってもグループになって、裏で情報を回しているのでは」と推測する。
業者は数十万円の融資をちらつかせながら、実際は少額しか貸さない。「信用をつけるため」と一万円から始まり、返済すれば二万円、さらに三万円と増やす。
「少額だから絶対に返せるという頭がある。気が付いたときには遅い。もうはまっている」
返済の際には、前日に業者に確認の電話を入れる決まりだった。一度、清算してしまおうと業者に連絡なく元金と金利を振り込んだ。
だが、業者は「元金は決済できない」と言い、払い戻してきた。完済を許さず、法外な金利を払い続けさせる方が、業者のうまみは大きい。
DMを送ってくるのは大半が東京の業者。連絡は携帯電話を使用した。対応は二十代ぐらいの若い男が多く、丁重な言葉遣いに聞こえた。
地獄味わえ
八月末には、返済済みの業者と、返済の残っている業者は、合計二十二社に膨らんだ。ここまで遅れず返済してきたが、金策に行き詰まった。県消費生活センターに電話し、高松あすなろの会にも相談。九月半ばに弁護士に対応を依頼し、業者への返済をやめた。
それを境に業者の態度がひょう変した。電話やファクスによる取り立ては執ようだった。
「死ね」「金を返せ」「生き地獄を味わえ」
親類、勤務先、近所宅にも業者から脅しの電話がひっきりなしにかかってきた。ファクスが何枚も立て続けに送られる。電話の呼び出し音を聞いて小さな子供は泣いた。退職も考えたが、上司に引き留められた。
どこで調べたのか、孫の通う保育所にも電話がかかってきた。「血の気が引いた。もう許せんと思った」。それまでは危険があってはいけないと逃げ腰だったが、徹底的に戦う覚悟を決めた。県警に告訴もした。
ある業者は「これから二人やるから待っとけ」と脅した。東京からわざわざ来ることはないと分かってはいても、家族はやはり恐怖を感じた。
自宅、携帯の電話番号を変えて、十月末ごろ、ようやく業者の取り立てがやんだ。
過払い100万
生活苦やギャンブルで消費者金融に何社も借金し、多重債務を抱えて、やむにやまれずヤミ金融に手を出す人が多い。
男性は多重債務者ではなかったが、二十年ほど前、サラ金の借金の清算で、家族に迷惑を掛けた経験があった。
男性は返済に追われた心境を振り返る。「冷静だったら、はまらなかったと思う。でも、自分の弱いところだが、世間の目が気になった。穏便に事を済ませたかった」。初めから妻に相談すればよかったと思う。
ヤミ金融業者に対し、法定利息を超える過払いが百万円以上あり、返還請求する予定だ。「金が返るとは思わないけど、けじめにしたい」。
福岡茂樹、谷本昌憲が担当しました。
(2003年11月23日四国新聞掲載) |