天気予報を見る
 
新聞購読申込
連載TOP > 連載 > 田勢康弘 愛しき日本 > 記事詳細

連載

 
 
 

佐川氏喚問

2018/03/29

「拒否」から見える真実

 官僚が己の判断だけでリスクを冒すことは絶対にしない。ジャーナリストとして半世紀近く夥(おびただ)しい数のエリート官僚と付き合ってきた経験からそう思う。「刑事訴追の恐れ」を理由に47回も答弁拒否した佐川宣寿元財務省理財局長の証人喚問ではあるが、彼が放った言葉を眼光紙背に徹すると、おぼろげながら真実の姿が見えてくるような気がする。

 これまでたくさんの証人喚問を見てきた。虚偽の答弁をすれば罪となる証人喚問で、証人の精神的重圧は想像を絶するものがあると思う。宣誓書に署名する際に手が震えて名前が書けない証人もいた。佐川証人はその意味では驚くほど冷静に見えた。「誰が何のために改ざんしたのか」という肝心の部分は答弁拒否したが、どこかにやましいものを抱えた人間が、あれほど堂々としていられるものだろうか。

 そういう前提に立って、佐川氏が嘘(うそ)を言っていないのではないか、という角度で彼が述べたことを検証してみた。改ざん前の文書と佐川局長(当時)の答弁内容がまったく異なることから、虚偽答弁の疑いが濃厚と言われていたが、佐川氏は「答弁は正しかったといまも思っている」と言い切った。8億円値引きした土地取引も、正当な取引であるとの認識を示した。

 世の中の人の過半が明々白々と感じているようなことをなぜにかくも堂々と否定しきれるのか。彼の言葉を反すうしてみる。まず謝罪の言葉は「改ざん問題で国会が混乱し、行政への不信を高めたことは当時の局長として責任は私にある」と述べた。深く推察すれば、局長としての責任はあるが、改ざんそのものに関わってはいないというようにも聞こえる。また現在の太田充理財局長が「改ざんに佐川氏の関与が大きかった」と国会で答弁していることに対し「答弁内容は承知していない」と突っぱねた。

 安倍首相からも昭恵夫人からも、また政治家や総理官邸筋からも一切の働きかけもなかったと言い切り、理財局内部ですべて行ったことと断言した。この佐川氏の答弁の繰り返しを聞いていてふと思った。すべての彼の答弁には「私は」という言葉が隠されているのではないか。「私には」政治家からの圧力や働きかけはなかった、「私は」改ざんに関わっていない、だから虚偽答弁といわれようと当時の「私の」答弁は正しかった、そう言っているようにも聞こえる。

 首相に関する部分がある国会答弁で首相官邸とすり合わせをしないことなどあり得ない。文書から昭恵夫人に関する部分や政治家の名前などを削除する際に、理財局だけの判断ではやれないというのが他省庁の官僚たちの見方だ。すべての部分に「私は」が抜けているのではないかと考えてみると、「私」以外の他の人がしたかもしれないと示唆しているように思えてくる。佐川氏が理財局長に就任したのは2016年6月17日、国と森友学園の土地売買契約は3日後の6月20日である。つまり大詰めの土地取引に関する交渉は佐川氏の前任の迫田英典局長の時代である。

 佐川氏の本音としては、森友問題の方向性は自分が理財局長になる前にすでに決まっていた、と言いたいのではないだろうか。佐川氏の国税庁長官辞職の際の辞職理由にも理財局長として混乱の責任を取る、としている。森友問題そのものに距離を置いている。そこで迫田氏の役割がどうだったかという疑問から野党が迫田氏の証人喚問を求めている。迫田氏は安倍首相の郷里である山口県下関市出身で財務官僚の中でも安倍氏に近いといわれている。安倍首相夫妻への「忖度(そんたく)」のようなものが働いたとすれば、迫田理財局長時代ということも考えられなくもない。佐川氏の答弁にどこか他人事のような響きが感じられるのは、すべては自分が就任する前の出来事なのだ、と言っているからではないか。

 「追い詰められるとインテリやエリートほど嘘がばれる。顔にでるからだ」という話を昔警視庁記者だった頃、刑事さんから聞いたことがある。国のことを思いながら官僚になった人物があれほど平然と嘘をつけるとは考えにくい。訴追を理由に答弁拒否したのは、己の身を守ることもさることながら、だれか同僚をかばおうとしているからではないかというようにも思える。同時に、喚問の場で他人に罪をなすりつけるような印象を与えることは得策ではないと思ったか。政府・与党は乗り切れたという表情だが、一方で真相解明のためには昭恵夫人、迫田氏らの説明がこれまで以上に求められることになる。

(政治ジャーナリスト、四国新聞特別コラムニスト)

47CLUB(よんななクラブ)

47CLUB
全国の良質な品々を厳選してお届け

盆栽

盆栽
産地香川から盆栽文化をお届け

オンラインショップ情報

ショップ情報
オススメの買い物サイトをご紹介

讃岐囲碁サロン

讃岐囲碁サロン
ネットで世界の囲碁ファンと対局!

みみより新聞

みみより新聞
視覚障害者向けニュースサイト

住宅展示場情報

住宅展示場
家造りに関する情報盛りだくさん

健康新聞

健康新聞
元気な暮らしに役立つ情報を紹介

ちょこっと広告・パネット

パネット
四国新聞を伝言板として使おう!

求人情報紙・ジョブ

ジョブ
週刊発行!チラシタイプの求人情報

おりーぶ通信

おりーぶ通信
女性通信員のページ

▲このページのトップに戻る
購読のお申込みは0120-084-459

SHIKOKU NEWS 内に掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。 すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。

Copyright (C) 1997- THE SHIKOKU SHIMBUN. All Rights Reserved.