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きな臭い世界

2017/04/11

戦争は禁断の麻薬

 「戦争」は過去も今も、政治指導者にとって禁断の麻薬のようなものであるらしい。トランプ米大統領のシリア攻撃や北朝鮮金正恩(キムジョンウン)氏の威嚇的言動を見てその感を強くする。不安定な国内情勢に直面せざるを得ない政治指導者は、国の外に国民の目を向けさせるために、対抗や威嚇に頼ってナショナリズムを煽(あお)る。つまり子供の喧嘩(けんか)でよくある「表へ出ろ」「覚えていろ」というあの類いである。決して本気でなく、ちょっとした威嚇のつもりが、戦争になり、しまいには世界大戦になる。人間は愚かなもので過去から学んでいないのである。

 それにしても米軍の地中海の艦艇から巡航ミサイルトマホーク59発が発射されたころ、トランプ大統領と中国の習近平国家主席はフロリダ州のリゾート地帯にあるトランプ氏の別荘にいた。歴史的な初めての「トランプ・習会談」のさなかのシリア攻撃。だれしも中国が背後にいる北朝鮮を意識しての軍事行動だと確信する。米国単独でも北朝鮮に対応するとの意思表示に違いないと思う。

 オバマ政権時代の北朝鮮をめぐる6カ国協議が成果を上げられず、もはやテーブルでの交渉で北朝鮮に核兵器の放棄を求めることは不可能という点では、中国も含めた国際社会は一致していると言ってもいいだろう。

 トランプ政権は金正恩氏そのものを標的にした軍事行動をひそかに狙っているのではないかと考える。北朝鮮の核施設を爆撃破壊すれば、韓国や中国にまで計りしれない影響を及ぼす。とくに中国は北朝鮮の核施設から近いだけに神経をとがらせている。かつてイラクのフセイン、リビアのカダフィといった独裁者やアルカイダのビンラディンをピンポイントで狙った手法だ。偵察衛星や「フライ」と呼ばれるドローンの極小型飛行体、イラク戦争のころ、すでに1センチほどの飛行機にナビゲーションとテレビカメラを内蔵し、標的の居場所を突き止める。映像などの情報は無人のジャンボ機の情報収集基地に集められる。米国はすでに北朝鮮の核施設などの詳細な地理的分析をすませているだろう。また10人以上存在するといううわさもある金正恩氏の影武者の情報も得ていると見るべきだ。

 しかし、最低限でも中国の暗黙の了解がなければ、米国だけで「金正恩」駆除作戦は難しい。今回の米中首脳会談でトランプ大統領最大の狙いは、その了解を水面下の交渉で得ることだったのではないかと私は考える。結果はわからない。この手の話は表には絶対に出てこない。習近平氏が「黙認」するかしたかの可能性はあると思う。中国の指導部はいわゆる政治局常務委員7人のうち3人が江沢民系といわれ、北朝鮮の金正恩体制の後ろ盾となってきた。これに対し習近平氏は金正恩氏を嫌い一度も会談していない。北朝鮮問題には中国内部の権力抗争がからんでいるとみられている。習近平氏としては米国に暗黙の了解を与えてその結果、金正恩体制が終焉(しゅうえん)すれば、手を汚さずに中国国内の権力闘争に勝つことが可能になる。

 ただ、米中首脳会談そのものが成功したのかどうかさえ判断が難しい。トランプ大統領の早期訪中という合意をみれば成功したようにも見えるが、その他は実にあいまいだし、両首脳の表情から読み解くことは難しい。

 米軍のシリア攻撃を「日本政府は支持する」と安倍首相は胸を張った。もっともイラク戦争を含めて米国の軍事行動の際に日本の首相が「支持」を表明するのはもはや恒例行事のようになっている。しかし、このところの安倍政権の進もうとしている方向を見ると、安倍首相も禁断の麻薬のにおいぐらいかぎ始めたのではないかと心配したくなってくる。かなりきな臭くなり始めた世界情勢、米国のメディアには「第3次世界大戦」という衝撃的な言葉が散見するようになってきた。

 (政治ジャーナリスト、四国新聞特別コラムニスト)

=一部敬称略=

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