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米大統領 広島へ

2016/05/16

まだ消えぬ衆参ダブル選

 いつかは、と思っていたが、これほど早く米大統領の広島訪問が実現するとは思っていなかった。世界で唯一、核兵器を使用した国の元首が、被爆地を訪問する。この歴史的訪問は日米関係ばかりではなく、これからの世界の核軍縮論議にも大きな影響を与えるだろう。

 「クミコ」という女性歌手がいる。彼女が「INORI〜祈り」という歌を歌い始めたとき相談されたことがある。この歌は広島の原爆の子の像のモデルになった佐々木禎子さんを歌ったもので、大ヒットした。「この歌を大統領に直接聴いてもらいたいけれどどうしたらいいだろうか」という相談だった。

 「愛する人たちのやさしさ 見るものすべてが愛しかった もう少しだけでいいから 皆のそばにいさせて下さい」(祈り)

 私は知り合いの米外交官にホワイトハウスへつないでほしいと頼んだ。「この歌を聴くということと広島を訪問するということを切り離して考えることはできない」というのが非公式の答えだった。広島訪問も当分ないな、と感じた。

 広島も、そして長崎も、悲劇の記憶は猛暑や蝉(セミ)の鳴き声と重なる。原爆資料館に置かれたノートにはときどき、英語で「真珠湾を忘れるな」と書いてある。米国では「理不尽な戦争にピリオドを打つためには原爆投下は必要だった」というかなり根強い世論がある。日米両国政府はここ数年、互いの世論の反応を探りながら、オバマ大統領の広島訪問の時期、方法などについて可能性を探ってきたという。

 被爆地を訪問するということは日本に対して米国大統領が謝罪するということになる。そうすると、真珠湾攻撃に対する日本の謝罪も必要になる、という議論は長い間、双方にあった。今回、米国の世論は全体的に好意的だ。主要な米紙は社説で広島訪問を歓迎している。広島の平和公園を訪れるたびに同じことをいつも考える。原爆死没者慰霊碑に刻まれている言葉についてである。「安らかに眠って下さい。過ちは繰り返しませぬから」。

 主語のないこの文章はだれが過ちを繰り返さぬと言っているのか。自虐史観だと非難する人も少なくないが、この言葉に象徴されるように投下した米国への怒りは日本人には不思議なほど多くない。むしろ真珠湾攻撃に対する米国国民の怒りのほうが強いのかも知れない。

 オバマ大統領の広島訪問は、その直前の伊勢志摩サミットを影の薄いものにしてしまうだろう。広島を案内する安倍首相のイメージも、安保法制にかける安倍首相のイメージと真逆のものになるだろう。オバマ大統領も核廃絶の必要性を世界に訴えてノーベル平和賞を受賞したわけで、その意味では広島訪問は締めくくり方としてはふさわしいものになるだろう。

 このところ持ち直した感のある内閣支持率も広島訪問でさらに上がるだろう。来年4月の消費税10%も見送りが確実で、高い支持率を維持し続けたい安倍首相としては、いまやご満悦のはずだ。マスメディアは大半が7月の衆参ダブル選挙は熊本の地震の結果、見送り論が大勢を占めている。逆張りすることで、ずっと選挙の時期を当ててきた筆者としては、ダブル選挙はまだ十分有り得る、と主張したい。

 ダブルを見送って秋の解散という説もある。私はこの説を取らない。秋、すなわち9、10月頃にはいまより経済状況が一段と悪化してくるだろう。秋には米国大統領選で、共和党のトランプ候補人気が続くようだと、絶対多数の日本の与党にもトランプ現象のようなことが起こる可能性も出てくる。

 一方で米国は英国のEU離脱の国民投票の結果、離脱論が勝利するようだと、トランプ有利に働くのではなかという見方がある。ダブル選挙にするためには6月1日の今国会最終日の衆議院解散が必要になる。その日までおよそ半月。政治も経済も激動必至だが、解散の時期、という観点で考えると、「衆議院はいつ解散するか」「いまでしょ」となる。

(政治ジャーナリスト、四国新聞特別コラムニスト)

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