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「創生」のために

2016/03/22

「地方」という言葉への疑問

 「地方」という言葉が嫌いだ。だから「地方創生」などという安倍内閣のスローガンも素直な気持ちで受け取れない。「地方」という言葉はあきらかに「東京」という言葉の反対語である。すなわち東京一極集中を是認した言葉という印象は免れない。地方創生という流行(はや)り言葉には、魂がこもっていないような気がしてならない。

 語源を調べてみると地方は「じかた(地方)」から来ている。その昔、江戸時代には「町方」に対して農村をそう呼んだ。そこから首府以外の土地、いなかという意味合いの「ちほう(地方)」という言葉になった。東北出身の筆者は「そうですか、地方出身ですか」とよく言われる。「地方」の二文字が頭につく言葉、地方議会、地方銀行、地方空港、地方大学、地方紙、地方競馬。やや被害妄想かもしれないが、蔑視といわないまでも畏敬の念には遠いように思える。そしてまた、創生の意味合いにはあまりにも経済的豊かさばかりが強調されすぎているように思う。地域の生き方は基本的には地域が自主的に考えるべきものだし、国の音頭取りでできるような活性化策などしれている。財政的裏付けは国に期待するにしても、どのような住み良い環境にするかは、自分たちの頭で考えるしかない。

 東京駅から出る列車、電車、新幹線もすべて「下り」である。東京のような極端な一極集中都市は世界でも珍しい。東京で手に入らないものはどこでも手に入らないといっていいだろう。料理で言えば、世界中の料理が東京では食べられるし、それも相当なレベルの高さである。住民一人当たりの緑地公園面積はなんと東京が全国一だという。わが国の国土は歪(ゆが)んでいる。たとえば、愛媛県の宇和島あたりから徳島県の南部に鉄道で行こうと思えば、どれだけ時間がかかるか。同じ四国なのに、ひょっとしたら、伊丹か羽田経由のほうが早く目的地へ着くかもしれない。

 私の郷里の山形県の町には映画館も書店もない。喫茶店もあるようなないような。パチンコ店だけは1軒ある。ないものばかりだが、東京よりあふれているのは住む人のいなくなった空き家と廃校になった校舎。

 東京や東京周辺に親類や友人など知り合いが一人もいないという人はまずいないだろう。みな東京へ出て行って、帰ってこない。「仕事がないから」と異口同音にいうが、農業や漁業、林業など自然を相手にしたすばらしい仕事があるではないか。第一次産業がきちんとした収入に結びつくものにならなければ、活性化などありえない。観光振興などでいかに東京から地域に人を呼び寄せるかばかり考えても限界がある。人寄せだけの意図が見え見えの策は長続きしない。人間が生きていくためになくてはならない農業や漁業に後継者がいない。このようなことになったのは、すべて政治の無策からくるものだ。「食糧と環境のために水田を守る」と言いながら、少しも守っていない。守ろうとしているのは「票田」だけのように思える。

 「景気はどうですか」。各地を訪れるたびに、同じ質問を繰り返している。「この辺にはまだまだアベノミクスの恩恵は及んできません」という答えがほとんどである。マイナス金利の導入で、地方の金融機関は手痛い打撃を受けている。地域の金融機関が痛手を受けている状況で、地域経済が好転するはずがない。

 大事なことは経済状況がいささか厳しくとも、その地域に生まれ育ったことを誇りに思い、そこに住む人々が郷土に愛しさを感じているかどうかだ。東京で見ているだけなので詳しくは分からないが、例えば香川県ではいま小豆島が旬なのではという気がする。高校野球の選抜で初出場した小豆島高校、そして大相撲春場所でがんばっている幕内の琴勇輝。二十四の瞳とオリーブの印象だけだったこの小さな島が、全国の注目の的になる。こうしたことが郷土の誇りにつながり、最高の集客につながっていく。春まだ浅き3月中に訪れてみようかと、ふと考える。

 (政治ジャーナリスト、四国新聞特別コラムニスト)

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