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甘利氏辞任

2016/02/01

問われる政治家の生き方

 週刊文春の記事を読んだとき、これは辞任まで発展するな、と感じた。「罠(わな)にはめられた」という見方もあったが、事実だけが持つ迫力のようなものは否定できない。永田町の世界は嫉妬が渦を巻いている。甘利氏の閣僚辞任で攻め手を欠く野党が「まだ辞めないでほしかった」と本音をもらしているのに対し、かえって自民党内部には「安倍側近で調子に乗りすぎたんだよ」とやや他人の不幸は蜜の味という空気があるのも事実だ。

 それにしても、と思う。文春の記事を読む限り、あきらかに告発してやろうという意図が見える。あまりにも証拠になるような写真が多すぎるのだ。だとすれば、なぜ、大臣室や地元の事務所などで金品を手渡されたりするのだろうか。羊羹(ようかん)を渡され開けてみたら50万円が入っていたという時代劇の「越後屋、そちも悪よのう」レベルのことが、いまの時代にも存在しているとは。

 「記憶がはっきりしていない部分がある」と甘利氏は当初語っていたが、おそらくそんなはずはなく、記憶は鮮明だっただろう。もし覚えていないとしたら、そのようなことがよくあるからか、それとも記憶喪失気味かどちらかだろう。

 政治家は因果な職業だと、長い間夥(おびただ)しい数の政治家を見て来て思う。なぜか。まず、職業としてあまり尊敬の対象にならない。大勢の前での挨拶(あいさつ)を政治家に頼むのは、その肩書に対してお願いするのであって、人物識見に対してではない。次に「職業としての政治家」は経済的になかなか成り立ちにくいということである。国会議員の給料は月額129万4000円。このほかに期末手当が635万円、年収にするとおよそ2200万円ほどである。これに加えて通信交通費が月額100万円、これは無税でしかも領収書不要である。このほかに政党交付金として議員1人当たり年間4000万円ほどが政党に支払われる(共産党だけは受け取っていない)。政党によっては議員に一部支給しているところもある。

 一般的な感覚でこれらの数字を見ると、国会議員はもらいすぎ、といいたくもなる。しかしながら、よく調べてみると、事務所で働いている秘書やスタッフの給料をどのように工面しているのかその台所具合がわかって来る。

 国が給与を支払う公設秘書は3人まで。この3人だけですべてを運営している事務所はごくごくまれだ。与党なら選挙区も含めると10人はいる。中には総勢40人という事務所もある。大半が選挙区の陳情の処理など票集めにつながる仕事だ。10人スタッフがいると仮定して3人は国が払ってくれる。残りの7人は雇い主である国会議員が払わなければならない。

 以前は公設秘書に夫人の名前を載せたり、あるいは支援してくれる企業から給料向こう持ちで社員を派遣してもらったり、運転手付きで車の提供を受けたりというケースもめずらしくなかったが、いまはそれらが政治資金と見なされるようになったので姿を消したようだ。

 スタッフ1人を雇うには社会保険料などを含めて年間500万円はかかる。7人雇うと3500万円。これだけで議員の歳費を超えてしまう。だから、法律の範囲内で運営しようとすれば、かなり厳しいものになる。

 どこの事務所も資金繰りで苦労している。国会議員も個人としての生活もあり、子どもの教育費もかかる。国会議員の朝食会に呼ばれて話をすることも多いが、最近はコンビニのおにぎりにお茶というのが定番だ。こうした実態とは別に、世の中の大半の人は「国会議員はうまい汁を吸っている」と思っている。尊敬されもせず、かつそのように思われている職業を次の世代を担う若者が目指すはずがない。だからなかなか職業政治家の質が向上せず、政治不信もなくなっていかないのだ。

 いつも思う。西郷隆盛のあの言葉を。「命もいらず名もいらず、官位も金もいらぬ仕末に困る人」でなければ国家の大業は成り立たないというあの言葉を。政治不信を解消するのはそう難しいことではない。立派な生き方をしていると思う人に、有権者が頼み込んで政治家になってもらうことだ。そういう人はこの世にいくらでもいる。

 (政治ジャーナリスト、四国新聞特別コラムニスト)

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