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いじめ・体罰

2015/10/19

真正面から向き合え

 プロレスラーから初めて大臣になった馳浩文部科学大臣が話題を集めている。国会議員も閣僚も基本的にはさまざまな分野の人がなるほうがいい。レスラー出身というタレント議員のような扱いをされそうな馳氏だが、この人の政治家としてのキャリア、あるいは文教族としての実績は、いわゆる他の"職業政治家"のそれをはるかに凌(しの)いでいる。プロレスラーとしての引退試合のとき、リング上で「いずれ総理になってSPを引き連れてこのリングに立ちたい」と叫んだ。それが冗談でなくなる日が来るかも知れない。

 ほとんど悪い評判を聞かない馳氏だが、就任早々、2回謝った。一つは高校教師のとき竹刀で生徒を叩(たた)いたことを詫(わ)びた。もう一つは国の補助金をもらっている企業から政治資金を総額29万円受け取っていたと報道されたこと。謝罪の会見はなかなかすっきりしていた。「秘書が…」などと言い訳めいたことは言わない。体罰問題は高校のレスリング部の監督をしていたころの話で、謝るほどのことだろうか、と私は思った。

 いじめや体罰問題に取り組んで来た馳氏に少々、意地の悪いことを私の担当しているテレビの報道番組で聞いた。私が小学校6年生のときの体験である。青森県の漁村にあった小さな学校で、私は学級委員をしていた。授業中、ガキ大将たちが騒いだ。担任の先生は学級委員の私を教壇に立たせ、こう言った。「両足を開け、目をつぶって奥歯をかみしめろ」。次の瞬間、先生の往復ビンタが飛んできた。

 殴ったあとの先生の目が濡れていたのを覚えている。ガキ大将たちは私のところへ謝りにきた。先生は何も言わなかった。でも先生の気持ちは痛いほど伝わって来た。あの往復ビンタで先生と私の、そして何よりも先生とクラス全員の心がつながったような気がする。当時は「体罰」という言葉はまだなかった。小学校を三つも転校で替わり、たくさんの先生と出会ったが、一番好きなのは、そして一番思い出に残っているのは往復ビンタの先生である。のちに物書きになって「K先生の往復ビンタ」という随筆をある雑誌に書いたことがあるが、賛否両論、すごい反響だった。もちろん、体罰は悪い。だけれども、いじめがなくならないのは、先生が真正面から子どもたちと向かい合えていないからではないか。

 殴ってもいけない。言葉できつく叱ってもだめ。子どもは残酷なことを平気でするから、そんなことをしてはだめよ、などと諭したって効果はない。昔と違って先生が親から尊敬されたり信頼されたりする時代ではなくなっているし、愛の鞭(むち)と思っても世間の目がそれを許さない。だから、やれる範囲のことだけ、ということになり、体ごとぶつかってくれるような先生がしだいにいなくなっているのではないだろうか。

 馳氏は私の問い掛けににこやかにこう応えた。「でも体罰は絶対にだめです」。言葉は否定しながら、表情からは私の問い掛けにうなずいているように感じた。いじめに関していえば、いじめは絶対になくさなければならないが、年々件数が増加しているのも確かである。いじめを受けて自ら命を絶つ悲惨なニュースも続く。

 「いじめられたらやり返せ」というような指導は間違っているのだろうか。最近は、子どもが公園などで遊んでいるのをあまり見かけない。上級生が下級生の面倒を見たり、いろいろ教えている姿も見ない。集団の中で生きるという知恵はそうやって身につくものだと思う。でもいまの子どもたちにはそういう場がない。ひたすら素直でいい子に見える子どもばかりがあふれている。だから親は自分の子どもがいじめに加担しているなどと夢にも思わない。

 生意気な子どもがいなくなった。半面、いい子ぶった子どもたちは、想像を絶するような残酷なことをする。していいことと悪いことの区別について教わりもせず、考えもしないからだ。昔といまはまったく違う。そのことは百も承知でそれでも思う。私の父は軍人だったせいか、言葉よりも手が先に出た。冬の青森で裸にされ雪の中へ放り出されたことが何度もある。いまは懐かしい記憶である。

 (政治ジャーナリスト、四国新聞特別コラムニスト)

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