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安保法成立

2015/09/22

国のあり方が変わる

 2015年9月19日という日は、日本という国のあり方が大きく変わった日として歴史に刻まれることになる。70年間、戦争をしない国であり続けた日本が、場合によっては戦争できる国になったのである。成立した安保法への賛否はともかく、専守防衛の自衛隊が、名実共に「軍隊」に限りなく近づくことは間違いない。戦後の安全保障政策は拡大解釈の歴史であった。わが国が再びあの忌まわしい戦争の当事者にならないために、国民は厳しく政治を監視し続けなければならない。

 未明に混乱の中で安保法が成立した国会。その夜、国会議事堂正門付近では、まだ反対を叫んでいる人たちがいた。なぜ、これほどの反対の中で安倍首相は成立を急いだのか。国民の大半がこの通常国会での成立に賛成していないという事実を認めながら「理解を得るため、丁寧な説明を続けて行く」と首相は語る。メディアの多くも説明が足りない、と主張する。そうだろうか。多くの国民はきちんと理解しているからこそ、憲法違反だと感じているのである。統一のとれていない政府の答弁を聞けば聞くほど反対の輪が大きくなって行く。

 憲法学者の大半が「違憲」を主張していると問われた菅官房長官は「憲法について判断するのは学者ではなく最高裁だ」と反論した。憲法判断が最高裁のなすべきことであるなら、内閣が閣議了解で憲法の解釈を変更するというのは矛盾するのではないか。内容の法的整合性よりも成立を急いだために論理の破綻をきたしている部分が少なくない。

 なぜ、急いだのか。筆者は米国の強い要請があったと見ている。そのために安倍首相は4月訪米の際の米議会演説で「夏には成立させる」と確約してみせたのである。米国は政治的にも軍事的にも世界の警察官としての役割から抜け出そうとしている。同盟国日本の力を借りたいと考えている。米軍と自衛隊の関係はもはや戦略的には同じ指揮系統のもとで動くようにほぼ一体化している。問題なのは日本の憲法上の制約だと米国は考える。なんとしても集団的自衛権の行使や、後方支援を地理的な制約なしに、すなわち地球上のいたるところで自衛隊が活動できるようにしてほしいと考えている。

 安倍政権は安保法の意義を「東アジアの情勢変化に対応するため」と述べ、中国や北朝鮮の最近の軍事的な動きを視野に入れた説明を繰り返している。米国の狙いもそうだろうか。米国は中国や、また北朝鮮も米国に戦争を仕掛けてくるとは見ていないと思う。近い将来という短期的な期間でいえば、IS(過激派組織「イスラム国」)との戦いに集中せざるをえないというところだろう。ISに米国だけで対峙(たいじ)するのは難しい。国際的な軍事体制を組んで立ち向かうことを真剣に考えている。もともとイラク戦争で倒されたフセイン政権の幹部達がつくったのがIS。米国に対し恨みを晴らすためにはあらゆる手段を講ずるだろう。ISは日本を敵視する声明を発しているし、すでに日本人を処刑もしている。このような状況で米国が協力を求めて来た場合、日本は自主的な判断で断ることができるだろうか。

 個別のケースでの野党の質問に政府側は「一般論としては」という断りをつけて答弁することが多い。さらに突っ込まれると「その場面で政府が総合的に判断する」と答える。結局は何の基準もないということなのだ。安保法成立のいまから、われわれは政府の動きを監視しなければならない。これほど反対されているにもかかわらず安保法が成立したのは、巨大な与党を誕生させてしまった有権者の責任でもある。

 すぐに危機に慣れてしまうのが日本社会の特徴。できてしまったものは仕方がない、は普通の法律ならそれでもいい。しかしながら、安保法ばかりはそれではいけない。常識的に考えれば安保法を強引に成立させたことで内閣支持率は下がるだろう。下がった支持率をなんとか挽回しようとして内閣改造でのサプライズ人事や、人気取りの政策を打ち出す可能性もある。つまりポピュリズム政治だ。その究極のものは2017年4月の消費税10%への引き上げの再引き延ばしだ。そのようなことになれば、財政再建はさらに遠のき、経済は大混乱となる。与党が圧倒的に強い政治状況が、このような現状を生み出したということに気がつかなければならない。

 (政治ジャーナリスト、四国新聞特別コラムニスト)

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