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メディア威圧

2015/07/06

劣化する国会議員の質

 国会議員の質が低下している。半世紀近く政治家を観察することを生業にしてきて、この頃つとにそう思う。もちろん、これまでもいかがかと思うような振る舞いの政治家は少なからずいた。だが、品は良くないが、どこかに愛すべき味わいのようなものがあった。いまは品も味わいもない政治家が多すぎる。残念なことにこの傾向は社会全体の質の低下と無関係ではないように思える。

 自民党の稲田朋美政調会長にこう言われたことがある。「衆議院議員になったばかりのころ、田勢さんに言われたことが忘れられません」。すっかり忘れていた。稲田さんが初当選したとき、小泉チルドレンと呼ばれ、83人も新人議員がいた。当時の自民党武部勤幹事長に頼まれ「新人教育のための道場を開くから、政治家に必要な心構えのようなことを話してやってくれ」と指南役を引き受けることになった。あるべき指導者の姿や西郷隆盛の話など一通り終えたところで、質疑になった。「ひとつだけ国会議員としてすべきことを教えてください」。女性議員からそう聞かれたことは記憶にあったが、それが稲田さんだったとは知らなかった。

 私はこう答えた。「国会議員になるとみな黒塗りの車に乗りたがります。なるべく電車に乗ることをお勧めしたい。地下鉄やバスに乗って、普通の人の会話を聞く。社会のことがよくわかりますよ。第一、健康にいいです。電車だとじろじろ見られるから、という政治家がいますが、それは思い過ごしで、だれもあなた方の顔など覚えていませんよ」。

 政治家の会合では何度かそういう話をしたが、実行している人にはお目にかかったことがない。黒塗りの車に高級カラオケセットなどを持ち込み、マイクで歌っている姿を見せられると、この国は大丈夫なのか、と不安がますます募る。そこへ相次ぐマスコミ威圧発言である。政府与党を批判するメディアは許せないらしい。「つぶさなきゃいかん」とはまたすごい発言をしたものだが、まともに怒る気はしない。ただただ、そのバカさ加減にあきれるだけだ。この人たちは本音で言っているのだと思う。だから、言ってはいけないなどとは言わない。どうぞどんどん言ってください。そうすれば、われわれの「選良」と呼ばれる人々、すなわち選挙でわれわれが選んだ人たちが、どの程度の人なのかがよくわかる。発言そのものが問題なのではない。そういうことを本音で考えている人たちが国家運営に当たっているということの恐ろしさである。

 与党絶対多数で驕(おご)りが出ているのではないか、という指摘がある。違うと思う。普通であれば民主主義の本質をひっくり返すようなことは考えないものだが、そういうことを考える人たちがたくさん当選してきたということなのである。安倍首相に近いとかで以前から話題になりNHK経営委員にまでなって(ことし2月辞任)、飛ぶ鳥落とす勢いの売れっ子作家の「沖縄の2紙はつぶしたほうがいい」という発言は、おそらくいまの安倍政権、今の与党の雰囲気からにじみ出てきたものだろう。自民党議員の発言もお酒の席では党幹部だって言っていたじゃないか、というぐらいの感覚だったのではないか。
 今月半ばの衆院通過をめざしていた「安保法制」の今国会成立は「絶対」とは言えなくなった。予定通り採決しようとすれば、強行採決せざるを得なくなる。久しぶりに国会での野党の座り込みや牛歩戦術、あるいは乱闘などという場面もあるかもしれない。国会議事堂を万単位のデモ隊が取り囲むような事態になっても、果たして力で押し切るのだろうか。

 世論調査を見るまでもなく、国民の多数がその成立に疑問符をつけているような問題を、力で押し切って、果たしていざというときに集団的自衛権の行使などできるのだろうか。行使を政府が決断しようとした時に、再び国論が二分するようなことになるかもしれない。

 ただ、もっと過酷な政治状況で安保改定を成し遂げた祖父の岸信介首相(当時)の悲壮感が、そのまま孫の安倍首相に乗り移っているような気がする。世論の反対が強ければ強いほど、使命感を感じるのではないかという怖さを覚える。

(政治ジャーナリスト、四国新聞特別コラムニスト)

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