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「報復」連鎖の愚

2015/02/08

日本はどの道を選ぶのか

 あれから随分考えてみたが、不条理という言葉しか浮かんで来ない。人を救うためにあるはずの宗教で、なぜ、かくも無残な殺し方をするのか。「テロには絶対に屈しない」という言葉とともに報復の空爆。それに対するテロもまたあるだろう。神も仏もないような憎しみと報復の連鎖。こういうときにはきまって無辜(むこ)の市民が犠牲になる。こういうときにさっぱり知恵が出ない人間というものの愚かさに今更ながら落胆する以外にない。

 後藤健二さんには会ったことがなかった。それでも、今回のことで、彼がジャーナリストとして常に弱者の視点から報道していたことを知った。彼が撮影した子供たちの表情は、だれにも同じように生きる権利があるということと、戦争のほんとうの意味での悲惨さを伝えている。同じジャーナリストとして、わが身を恥じるしかない。命を危険にさらしながら取材・報道した経験のない身には、感動に涙をこらえながら、ただ、深く頭を垂れるしかない。立派なジャーナリストをわれわれは失った。彼らの捨て身の取材がなければ、戦争やテロ、そして逃げ惑う普通の市民の怒りや悲しみは伝わることなく終わってしまうのだ。

  それにしても、日本政府の対応に間違いはなかったのか。安倍首相が中東訪問の折、「ISIL(イスラム国)と闘う周辺各国を支援する」として2億ドルの援助を表明した3日後に、後藤さんと湯川遥菜さんの殺害予告の映像が流れた。首相の演説が彼らに日本標的の口実を与えた可能性は否定できない。政府が後藤さん行方不明を知ったのは11月1日、12月3日には拘束の事実もつかんでいた。

  折から12月14日投票の総選挙の最中。選挙結果への影響を考慮したかどうかわからぬが、事実を公表せず、対応も遅れた。このころから動いていれば、また別の方向へ向かっていたかもしれないという疑問は消えない。安倍首相は「このようなことは決して許すことはできない。罪の償いをさせる」と言い切り、日本人を標的にすると宣言したイスラム国に対し「日本人には指1本触れさせない」と大見えを切った。頼もしい発言にも思えるが、言葉だけで日本人の生命を守ることはできない。これまでわが国はアメリカとは少し違ったスタンスで中東諸国とつき合ってきた。はっきりとモノを言わないことでいずれの勢力からも一定の信用を得てきた。安倍政権はこれを大転換し、米国を先頭にした力の集団の仲間入りの道を選択した。そして日本人の命を守る、ということを憲法改正と結びつけ、改正論議を巻き起こそうとしている。

  またいつでも集団的自衛権が行使できるよう、恒久的な法制を整える考えも示している。イスラム国の残虐な日本人2人の殺害をきっかけに、国民の怒りを憲法改正にまでにつなげたいという意図が見て取れる。

  それにしてもと思う。イスラム国もヨルダンも同じイスラム教のそれも同じスンニ派。なぜ殺し合うのか。もともとイスラム教はユダヤ教、キリスト教とは3姉妹の関係である。イスラエル地域の土着の宗教が1本化されユダヤ教になる。イエス・キリストはユダヤ人でユダヤ教の預言者だった。しかし異教徒とみなされ十字架に張り付けられ、殺された。したがってイエスはキリスト教なる宗教の誕生を知らないはずだ。そのキリスト教を母胎としてムハンマドのイスラム教が誕生する。三つの宗教とも神は同じ。ユダヤ教は「ヤハウエ」が神だが、神の名を口にしない他の2宗教は神の名を出していない。キリストは救世主だが神ではないし、アラーは「神」という名詞にすぎない。

  いまや70億人の地球の人口のうち、5人に1人はイスラム教徒である。中東地域ばかりではなく米国でも、あるいは中国などアジアでもイスラム人口は急激に増えている。過激テロリスト集団イスラム国は、他のイスラム国家とも対立状態にある。イスラム国殲滅(せんめつ)のために空爆が続行されるだろうが、空爆で問題が解決するとは思えない。それにわれわれから見れば間違いなく「テロ」だが、彼らには彼らなりに「聖戦」と称している。これがどういうことなのかをやはり知っておく必要がある。何よりもアラブは「アラビア語を話す人たちと国」、イスラムは「イスラム教を信ずる人々と国教としている国」というような区別ができないと、世界で生きて行くことが難しい時代になった。

(政治ジャーナリスト、四国新聞特別コラムニスト)

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