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消える小中学校

2014/01/27

どんどん減る子供たち

 縁あって郷里の中学校の校歌の作詞を引き受けることになった。引き受けてから半年、中学校とは何か、校歌というのはだれのためのものなのか、など毎日のように考えてきた。調べれば調べるほどいかにたくさんの小中学校が統廃合で消えているかに気づかされ、少子化の現状のすさまじさに愕然(がくぜん)とするよりなかった。少子化で生徒数が減り、自治体が財政負担できなくなるのが理由だが、単に生徒数や学校数の減少だけではなく、日本としてもっと大きなものを失いつつあるように思う。

 郷里は山形県の山間部の白鷹町というところである。全国的には知名度がまだ足りないが、町が誇りとしているものに白鷹山(海抜994メートル)があり、米沢藩主だった上杉鷹山(治憲)の号はこの山に由来している。私は父親を亡くした中学校2年のとき、3カ月ほど父母の郷里のこの町に住んだ。そのとき町には中学校が五つあり、もっとも大きかった私の中学校は1学級48人ほどで各学年4クラスあった。五つの中学校が統廃合され、いまは二つになった。その二つの中学校が来年4月に統合され、ついに町にはたった一つの中学校しかなくなる。その中学校の校歌を私が作詞するのだ。最後に残るこの一つでさえ、私が在籍した中学校より生徒数で3分の1ぐらいになるようだ。

 文部省の「学校基本調査」によると平成22年度から23年度にかけて全国で64の中学校が統廃合で消えている。山形、東京がそれぞれ3校、香川2校である。私は戦後のベビーブーム世代のちょっと前の世代だが、私が中学生になった昭和32年には572万人いた中学生が平成23年には357万人に減っている。

 昔は5人6人の兄弟など珍しくなかったが、最近は2人ぐらいが平均だろうか。だから生徒数も学校の数も減って当然なのだが、それによって失うものはないのだろうか。校歌を書くので統合される二つの中学校へ行ってみて、生徒たちと話をした。みな素直ないい子たちである。気になったのはガキ大将や生意気な子供を見かけないことだ。

 少子化、と一言で言い切ってしまうとそれほど深刻な問題だという印象が薄れてしまう。それほど言いふらされているということだろう。小学生の数でいうとベビーブーム世代に比べ現在ではおよそ半減しているのである。子供の数が減るということは、近い将来の生産力人口が減るということであり、国力が落ちることである。この少子化の傾向と農業の衰退が、全国的規模で「地方」の活力を削(そ)いでしまった元凶だと思う。地方の活性化とか、地方主権の確立などという言葉も手あかがついてしまって、聞く人の胸に飛び込んでこない。けれども、この二つの問題に抜本的に取り組まない限り、展望は開けない。

 私自身も農村出身である。ずっと日本の農業をジャーナリストとして取材してきて思う。だれが農業をこれほど惨憺(さんたん)たるものにしたのか。後継者がなかなか現れないような産業になってしまったのは、なぜなのか。日本の農業の水準は高いし、農産物はほとんどすべてが世界でも最高といっていいと思う。香港やシンガポールなどで人気になっているという岐阜のイチゴ農家が作る1粒5万円のイチゴを見た(食べたわけではないが)ことがある。5粒が木の箱に入って25万円。店に出るとすぐに売り切れるという。これは例外にしても、海外からの農産物の流入を防ぐことに集中してきたためか、積極的に輸出することを考えてこなかった。地方の雇用を考えるとき、もっとも可能性を秘めた農業を除外してしまうと、ふるさとを離れて職を求める若者が増える。そして出て行った人たちは帰っては来ない。地方の大家族は、ことごとく細分化され、老いた両親だけが郷里にとどまり、やがて住む人のいなくなった大きな家屋が廃屋となる。雑草の中に寂しげに佇(たたず)む家屋をどれだけたくさん見たことか。これでは地方は生き還(かえ)れない。

 そうして地方は疲弊し、東京だけがどんどん住み良い大都会になる。全国規模の交通網の整備も、いかに東京へ速く行けるか、が目的になり、ゆがんだ地方になっていることを地方にいる人々でさえ、気がつかない。だいぶ前のことだが、大分で仕事をしていて、急に高松へ行かなければならない用事ができた。いろいろ検討したすえ、結局、大分―羽田―高松と空路で行ったことがある。大分あたりから同じ九州の鹿児島へ行くのもそのほうが速いらしい。

 校歌はだれのためのものか。在校する生徒か、それとも卒業生か、それとも街全体の人のためか。まだ結論に至っていない。ぼちぼちと書き始めているがまだ完成にはもう少しかかりそうだ。

 (政治ジャーナリスト、四国新聞特別コラムニスト)

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