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日中新体制

2013/04/22

消えぬ相互の不信感

  習近平体制がスタートしたばかりの中国へ行ってきた。日中ジャーナリスト会議の8回目の会議で、2日間延べ15時間にわたっての激しい応酬となった。互いに相手の言い分は想像できるほど議論を積み重ねているのに、まだまだ理解しあえていない部分の大きいことを実感した。もはや「友好」を叫ぶだけでは解決できないところまで来ている。日中3千年の歴史の中で、いつもいさかいがあった。そのたびに知恵を働かせて付き合ってきた。そのぐらいの歴史的目で見つめないと関係改善は困難だ。

  今回は日本側8人、中国側9人のジャーナリストが(1)中国の新体制(習近平体制)(2)日本の新政権(安倍内閣)(3)世界の中の両国関係(4)ジャーナリズムの役割―の4つのテーマを設定し、議論を展開した。中国のジャーナリズムは基本的には共産党のコントロールの下にあるため、3回、4回目ぐらいまでは建前論が多かったが、近年、こちらがびっくりするような発言も飛び出すようになった。発言者と内容は公表しないというルールを設けている。前回は昨年夏、沖縄で開催したが、そのときすでに尖閣諸島問題で両国関係が危機的状況になるという予感が双方にあった。

  議論しながら互いに驚く場面がいくつかあった。中国側は安倍政権をほぼ全面的に否定した。1期目のときは「戦略的互恵関係」で日中関係を前向きに捉えようとしていたが、今回は憲法改正など右寄りの姿勢が見られ、中国以外の国々への訪問を「価値観外交」と名付けるなど、敵視している、といい、日本社会全体が安倍政権を評価するなど右傾化しつつある、と中国側全員が述べた。また日本で軍国主義が台頭するのではないかという強い不安を表明した。

  日本側は「安倍政権の支持率が高いのは経済がうまく行っているからで、右傾化を国民が求めているわけではない。軍国主義などと考えている日本人はいないし、だれも戦争しようなどと考えていない」と述べた。会議中にこのくだりをツイッターに中国側のメンバーが書き込んだところ、驚いたという反応が数十万件あったという。われわれ日本側はそのことに驚いた。

  安倍首相の「価値観外交」は、価値観を同じくする国々を訪問し、連帯するというもので、事実上の中国包囲網だ。中国側の強い反発に対し、われわれは安倍首相が訪問した国々は、それより前に習近平氏が訪問しているし、過敏になることはないのではないかと主張した。このジャーナリスト会議では「両国がどのように対立してもわれわれはジャーナリストとして互いに連絡を取り合い、いつでも話し合えるようにしよう」ということを約束している。昨年秋、尖閣諸島問題で反日デモが燃えさかった際、この会議そのものは開催できなかったが、座長の私と数名は北京に出かけ、中国側メンバーと意見交換した。実際に話し合ってみると、相当に誤解していることが多いことに互いが気づく。

  両国の関係を改善したいと政治家や経済人が中国を訪問する。その際に一番問題になるのが中国側首脳の誰に会えるのか、ということだ。会えそうもなければ訪問は中止というケースも少なくない。重要人物に会えれば会えたで、発言は甘くなり「友好」の連発に終わる。親中派の政治家や経済人はおおむねそうだ。相手を怒らせるような発言はしない。半面、国内ではナショナリズムをあおるような発言を右派の政治家がする。中国がそれに反発し、経済交流も文化交流もすべて止まってしまう。この繰り返しだ。すなわち、中国とどう立ち向かうのかという深い考えもなく、ただそれぞれの立場で振る舞っているだけでは問題は一向に解決しない。隣同士という国の位置を変えるわけにはいかないし、中国とまったく付きあわずに日本が生きていけるわけもない。ならばどうするか。日米は軍事的同盟関係だから、日中と同じというわけにはいかない。日米の関係にいささか陰りが見え始めると、決まって日中関係も問題が生じる。日中関係改善には他国との2国間関係、日米、日ロ、日韓などの関係をきちんとすることが求められるのだ。

  会議のさなか、中国側の1人が「日本は先の戦争で数百万、数千万の中国人を…」と言いかけたので、筆者はそれを遮ってこう述べた。「いい加減な数字をあたかも事実であるかのように出すべきではない。私は日本で中国に近すぎるといわれることのある人間だが、その私がこれほど怒っている意味を考えてほしい」と主張した。いささか怒気を帯びていたようで、中国側は一瞬、沈黙した。このように激しい2日間の議論だったが、次は日本で(中国側はできれば伊豆半島の温泉でという希望)開くことを約束した。中国側からこんなことわざが口をついた。「春の水の温かさはまず鴨が知る」。われわれが鴨になろうと握手して別れた。

(政治ジャーナリスト、四国新聞特別コラムニスト)

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