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北方領土

2013/04/08

安倍訪ロで動くか

 問題 日本で1番大きな島はどこか。

 答 択捉島。次は国後島。ちなみに択捉島は淡路島の5倍強。

 70年近くロシアとの間で論争を続けてきた北方領土問題が、もしかすると動き出すかもしれない。ロシアのプーチン大統領は柔道用語の「引き分け」という言葉で、双方が受け入れ可能な解決策を模索する考えを示している。安倍首相は4月下旬にロシアを公式訪問の予定だが、両首脳が外交当局に交渉進展を促すことになる見通しだ。「引き分け」は勝者も敗者もない決着を意味し、当然、日本も譲歩を迫られることになる。

 23年ほど前のことになるが、択捉島を訪れたことがある。旧島民が初めて墓参を許された時に、代表取材のため、船で根室から一昼夜かけて島へ着いた。ホテルがないために寝泊まりは船だったが、手付かずの自然がそのまま残っている美しい島だった。8月末でも、朝夕はかなり寒く、水温は13度だった。日本人墓地は荒れ果て、墓はほとんど倒れていたが、墓石の字はかろうじて読むことはできた。周りにはヒグマがついさっきまで横たわっていたのか、触ると体温の残る草むらがあった。ヒグマは7000頭ぐらい棲息(せいそく)しているという話だった。

 当時のロシアは、決して豊かではなく、「マルボロ本位制」などと西側では言われていた。すなわち米国のたばこの「マルボロ」を1箱あげれば、大歓迎されるというようなことだった。赤いパッケージのマルボロをたくさん買って行ったが、島の漁師に1箱あげたら、翌日、大きな鮭を10本ぶら下げてわれわれが宿泊している船へやってきた。旧島民の人たちが、昔を思い出しながら、バケツにイクラの醤油(しょうゆ)漬けを作り、毎食、イクラどんぶりだった。

 夕方船に戻ると何もすることがないが、白夜で夜は長い。島で漁師だったという人たちに教わりながら、釣りをした。船の甲板から釣り糸を垂らす。餌はたしか花咲ガニの身だった。すぐにビクッと手応えがあり、糸を巻こうとすると、まだまだ、という。そのままにしていたら、今度は何倍も大きな引きだ。懸命に巻き上げると、アイナメを半分口に入れた30センチほどのソイが釣れた。鮨屋(すしや)で出てくる白身の高級魚である。高齢者ばかりの旧島民のために同行した医師が、メスを使って、ソイを刺し身にしてくれた。

 海岸から山のほうを見上げると、移動するヒグマの群れが見える。択捉富士と呼ばれる山は、富士山のような円錐(えんすい)形で、水平線からいきなり富士山がそびえ立つような美しい山である。

  あれから20年以上すぎ、ロシアはかなり豊かになった。ロシアの今後は極東地域の発展にかかっているといわれ、ロシアの首都をモスクワからウラジオストクに移そうという構想もあるほどだ。プーチン大統領は1期目の大統領就任時から、日本海から欧州へ、鉄道でつなぐという構想を抱いている。韓国の釜山から北朝鮮、中国、そしてシベリア鉄道をつなげ、欧州へとつなぐ。これにより海上輸送よりも1カ月も短縮できることになり、ロシアの極東、シベリア地域は発展する。そのためには日本の資金と鉄道や原発の技術力が必要だという考えのようだ。

 勝者も敗者もいない解決とは何か。現状のまま、なら当然、日本の負け、4島全面返還ならロシアの負け。ということになれば、島の数でいえば、これまでロシアが認めたことのある2島と4島の間の「3」という数字が浮かび上がる。中ロ国境のアムール河下流の島の領有権をめぐる対立はかつて戦争まで引き起こしたが、面積二分という方法で解決した。北方領土にこの方式をあてはめると、歯舞、色丹、国後3島と択捉島の5分の1ということになる。そこから3島論の可能性がささやかれるようになったが、日本側は国境線の画定と領有権の確認さえできれば、さまざまな形はありうるとしているので、バリエーションはたくさん考えられる。

 2月下旬に安倍訪ロの地ならしのために森喜朗元首相が特使としてモスクワを訪れ、かねて親交のあるプーチン大統領と1時間以上話し込んでいる。安倍首相も意欲的で、4月の安倍・プーチン会談はかなり期待が持てるものになりそうだ。

 問題は日本国内の議論である。世論調査などでは日本側の譲歩もやむなしという考えの人が増えているが、「アリバイ外交」、すなわち国民に言い訳ばかり繰り返してきた政治家たちが、譲歩の決断ができるかどうかだ。また外務省のロシア専門家の間では二つに意見が別れており、これを一本化できるかどうかは安倍首相の指導力にかかっている。領土問題解決のタイミングはプーチンの在任中以外にはない。すなわち、いまである。それとも、この先100年も同じことを言い続けるのかどうか。決断の時期も迫っている。

(政治ジャーナリスト、四国新聞特別コラムニスト)

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