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隣人中国とつきあう法

2013/03/04

対米依存過多は危険

 中国とはどうつきあっていけばいいのか。もう何千年も昔から隣同士で、互いに無視することのできない存在だった。良好な関係のときもあったが、いがみ合ってきた時間のほうがはるかに長い。だから、いまの状態をそう悲観することはない。好き嫌いを超えてつきあわざるを得ないほど互いの存在はあまりにも大きい。外交、とりわけ領土問題が絡むと世論は激しやすい。日中の深刻な対立を日本以上に憂いているのが米国だ。米国にとっては同盟国日本との関係と同じぐらい中国も重要だろう。米国頼みばかりではなく、日本が自らどう日中関係を打開していくのか考えなければならない。

  米国に住んでみると、米国における中国の存在感の大きさに驚かされる。15年ほど前になるが、ハーバード大学の研究所に1年あまり在籍したことがある。キャンパスの中で見かけるアジア系学生の7割ぐらいは中国人だった。中国研究と日本研究の人員数、レベル、史料の豊富さすべてにおいて10倍以上の差があった。おまけにどの講義をのぞいてみても最前列を占めているのは大概、中国か韓国からの学生で、日本の学生たちは最後列とほぼ決まっていた。

  国家としての歴史の浅い米国では、歴史ある国に対する独特のあこがれにも似たような感情を抱く人が多い。もちろん、日本も歴史ある国だが、やはり中国にはかなわない。親しい米国人が言っていた。外交官で日本担当を希望する人が激減し、中国希望者が急速に増えているという。知日派で名前が浮かぶ米国の要人は、いつになっても同じ顔ぶればかりで、しかも大半が共和党人脈である。オバマ政権との人のつながりは極めて細いがそれにもかかわらず、今回の安倍首相訪米は見事とほめていいほどのできだった。

  そんな中で中国の習近平指導部の人事情報として外相に王毅・国務院台湾事務弁公室主任を起用するというニュースが飛び込んできた。元の駐日大使で、歴代大使の中でももっとも日本の各界と人脈を持つ人物と言ってもいいだろう。筆者もかなり長いつきあいだが、日本についての知識、日本語の確かさ、記憶のよさ、いずれも舌を巻く。だから日本には王毅ファンがたくさんいるが、おそらく嫌いだという人はほとんどいないだろう。しかし、注意しなければならないのは、だからといって日中関係がうまく行くとは限らない。むしろかえって難しくなるかもしれないのだ。中国指導部では「日本に近い」と見られることはかなりのマイナスになる。胡錦濤氏は常に「日本に近い」という批判にさらされてきた。尖閣諸島問題での強硬姿勢にはそのことが影響しているという観測もある。王毅氏が将来、さらに上のポストへ上がっていくには、一段と対日姿勢を厳しいものにすると思われる。

  オバマ大統領と安倍首相の会談で米国がもっとも重視したのは、尖閣諸島問題に対する日本の姿勢について問い質(ただ)すことだった。安倍首相は自制的な対応を強調したが、大統領はタカ派とよばれる首相にしては抑制がきいていると安堵(あんど)したのではないか。同盟国だから、何か軍事的問題でも生ずれば、米国が対応してくれるだろうと、漠然と日本では考えている人が多いだろう。しかしながら、歴史的にみれば、米中の関係は日米よりも長く、しかも対立を含みながらもかなり深い。第2次大戦では米中はともに戦勝国仲間なのである。したがって、もしもの際にはどちらにも加担しないということも考えられるのである。日米の関係からして、自衛隊のヘリが中国海軍のレーダー照射を受けた件について詳細を把握していないはずがない。にもかかわらず、小野寺防衛相は確実な証拠があるとして公表することもありうるような態度を示した。これについて米国は中国を批判するようなことはしていない。それどころか、同じ時期に、北朝鮮の核実験に対する国連安保理の制裁決議で米国案に中国が賛成しているのだ。

  日本では今回の「照射」問題が深刻に受け止められているが、いささか過剰ではないだろうか。安倍外交を進めるための国内向けの空騒ぎだったようにも見える。

  冷静にならなければならない。功をあせり、結論を急いでもよい結果は生まれない。くれぐれも警戒しなければならないのは、政治家が外交で世論におもねることである。世論は勇ましい方へ傾きがちだ。選挙を意識する政治家はそれに迎合しがちになる。いわゆるポピュリズム(大衆迎合主義)にナショナリズム(民族主義的国家主義)が結びつくことがもっとも危険だ。まもなく中国は習近平体制に入り、日中関係もまた新たな局面を迎える。

(政治ジャーナリスト、四国新聞特別コラムニスト)

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