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総選挙終盤

2012/12/11

「脱原発」の疑問

 最大の争点になるべき原発が争点になっていない。ほとんどの政党・候補者が「脱原発」もしくはそれに近いことを主張しているからだ。脱原発とは何か。明日から、たばこをやめるようなわけにはいかない。原発から離れたくとも離れられないのだ。政治はそれを語らない。

 事故を起こしすでに廃炉が決定している福島第1原発の1〜4号機。まだ核燃料棒が残ったままだ。どのようにして廃炉にするのかも決まっていない。おそらくは建屋ごとコンクリートか水で覆うことになるのだろうが工程も決まっていない。そのほかにわが国にはまだ50基の原発が存在している。「再稼働反対」を唱(とな)えている人たちは、止まっていれば安全と勘違いしているかもしれない。そこに原子炉があり、核燃料棒がある限り、危険度に差はないのだ。むしろ管理体制からは稼働している方が目が行き届くのかもしれない。

 わが国には使用済み核燃料が1万9千トンある。これを再処理してプルトニウムを取り出し、原発の燃料とするのが核燃料サイクル。現在はフランスなど外国に頼んでいるが、自力処理のため青森・六ケ所村に再処理工場を建設、来秋完成する。核兵器の原料となりうる核分裂性プルトニウムは英国やフランスに預けている23トン、国内に6・3トンもある。原発を動かさないとするとこのプルトニウムの処理が大問題になってくる。米国は増える一方の日本のプルトニウム保有量に危機感を抱き、減らすように警告を発している。

 原発内部にいまある核燃料棒をどう取り出してどう処分するのか。地層処分といって地下300メートル以下に埋めるのが現在の構想だが、日本学術会議はこれに疑問を呈した。放射能が自然消滅するには10万年かかるので、数百年管理できるような貯蔵施設を造るよう提案している。その間に新たな処分技術の向上を待つというものである。いずれにしろ「2030年代までに」などという短期的視野で片づくものでもないし、片づけるべきものでもない。

 いま世界中が日本を注目している。福島の原発事故について日本がどのように原因究明をし、世界に公表するかを待っている。日本の原発建設の技術は世界でもっとも高いといわれている。日本には原発を建設できる企業が日立、東芝、三菱重工と3つある。米国はGEだけ、フランスもドイツも1社しかない。海外が期待しているのは、福島の事故は、非常用電源が使用不能になったこと、すなわち津波に対応できないようなところに電源を置いた設計ミスと考え、非常用電源が確保されていれば安全、というようなアドバイスを世界に伝えてくれることを求めているという。

 しかしながら、少なくとも政治のレベルでは「脱原発」の方向へ向かっている。政権奪還をめざす自民党は「3年以内に再稼働について結論を出す」としかいっていない。まして福島の事故処理や核燃料サイクルについては言及なしだ。そればかりか多数の政党の党首の第一声が福島だった。大事なことを語らずに、復興に取り組むという姿勢だけを見せるのは、真実から目をそらすことにならないか。

 隣の中国は原発大国になりつつある。新華社が伝えたところでは、中国では15年末ごろまでに41基が稼働し、これにより発電容量は4200万キロワットに達し、世界の10分の1を占めるという。同時にさらに20基の原発を着工するという。韓国でもインドでもアジア全体の電力は原発という傾向が強まっている。その中で、日本だけが原発を使わずして、コスト面で対抗できるのか。またアジアで原発事故が起こった場合、日本には技術者はおりません、で済まされるのかどうか。

 10年後には原発ゼロと宣言しているドイツ。太陽光パネルでは世界一だという。足りない電力はフランスの原発に頼る。フランスはドイツへの供給のために原発の新設を検討中だ。そのドイツ、冬は天候不順で太陽が照らず、太陽光パネルによる発電は安定性に欠けるといわれ、高騰する電力料金に音を上げ、国外へ移転する工場が増えているという。知り合いのドイツのジャーナリストは「メルケル首相が退陣すれば原発はまた復活するよ」と語る。

 放射能が福島周辺の人々の健康に与える影響が心配だ。それは間違いないが、それと同じぐらい心配なのが、瓦礫(がれき)の中のアスベストだ。そして原発を動かさないことによる経済への影響、核燃料の処理や廃炉について何も語らない政治もまた心配の種である。

(政治ジャーナリスト、四国新聞特別コラムニスト)

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