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自民党

2012/08/06

理解苦しむ解散戦略

 自民党の考えていることが理解できない。いや正確に言えば「一刻も早く政権の座に戻りたい」という意図が見え見えでいまの状況下での政治のあり方としては容認し難い、ということである。いま、解散・総選挙などに現(うつつ)を抜かしているときか。政治が処理すべき問題が山と積まれているときに、だれが総選挙を求めているのか。民主党政権が機能不全に陥っているときこそ、経験豊富な自民党は問題解決のために手助けすべきなのに、これではまるで「空き巣ねらい」のようなものではないか。

 日本はいま危機的な状況に陥っている。毎週金曜日、首相官邸のそばで行われる反原発の集会は、主催者発表の何分の一かしか人数はいないにしても、40年以上もこの手のデモがなかった日本としては大きな出来事だ。集会参加者の掲げるプラカードは「原発反対・再稼働阻止」から「オスプレイ反対」「消費税反対」「野田内閣打倒」にまで幅広いものになっている。普天間基地配備予定のオスプレイに関しては、近々、沖縄で大々的な反対の県民集会が行われる予定だ。

 一方で、政府は将来のエネルギー政策、具体的には原子力発電の割合をどうするかで、「国民の声」を聴取している。このやり方はいかにも稚拙(ちせつ)だ。「将来は脱原発」を方針として掲げておいて2030年には(1)原発ゼロ(2)原発15%(3)原発20〜25―の三つの選択肢の中から選ばせるという。3択では2番目を選ばせたいのだな、という政府の意図が見えている。

 また将来、脱原発という方針を政府が掲げるということはやはり政府も危ないエネルギーと考えているのだと思わせる。ならば原発ゼロと主張したい人が8割ぐらいになるのはあたり前で、そもそも原発は必要なのではないかと考えるような人は意見を述べる場には出てこない。政府は(2)の意見に集約させたいという意図から、このような形での「国民の声」を聞く場を設定したのだろうが、結果として反原発の社会的風潮を拡大させることになっている。加えて反原発の集会には首相経験者を含め、国会議員の姿も多く見受けられる。政治家としての任務を放棄した忌むべきポピュリズムである。

 自民党は原発政策に関してはなぜか沈黙している。3・11以前の原発政策に間違いがあり、これは「人災」と国会の事故調査委員会が報告書で指摘した。責任のかなりの部分は、原発安全神話に加担した自民党にある。同じことはオスプレイにも言える。もう10年以上前からオスプレイの沖縄配備問題は存在していたのに、国民に説明することをしなかった。ふってわいたような形で配備計画を知らされ、そのことの意味よりも危険性だけ報じられれば、だれだって反対する。飛行機なのだから絶対に落ちないとは言えないが、米軍全体の事故率よりオスプレイは低いとか、オスプレイ配備で日本および極東の安全保障がどうなるか、具体的には尖閣諸島問題への効果などについて政治は何も国民に語ってこなかった。

 民主党政権は「ご説明」と「ご理解願いたい」しか戦略を持たない。原発でもオスプレイでも、何もかもが地元自治体、地元住民に「ご説明」「ご理解」で乗り切ろうとしている。政治にとってもっとも重要なことはこの国をどうするのかの青写真を描き、説明し、実行することだ。いやがられることをいかに決断し、実行するかである。このごろしきりに「国民の声」という言葉を聞く。国民の声とは何か。1億2千万人もの国民の声が一つであるわけがない。国民の声に耳を傾けるというのは実は決断を先送りするための政治の逃げ口上なのだ。

 これらの問題に口を閉ざしたまま、自民党は野田首相に解散を迫るのだという。選挙で何を訴えたいのか。ただ政権の座に戻りたいという邪心だけではないのか。自民党がよしんば政権の座に戻れたとしても、参議院のねじれは解消しない。いずれの難しい問題も自民党ならばうまく処理できるとはとても思えない。政権を失ってから自民党はどれだけ変わったのか。むしろ野党のいやらしさが身についただけではないのか。野田首相を追い込む前に、福島の使用済み核燃料棒を処理することのほうが先ではないのか。ただ物欲しげなだけの政党が、政治の信頼を回復できるとは思えない。

(政治ジャーナリスト、四国新聞特別コラムニスト)

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