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空白の1年

2012/03/19

「国家」運営できぬ国

 今頃悔いても仕方がないが、東日本大震災の直後に、大連立政権をつくるべきだった。原発事故対策、被災地復興、消費税引き上げ、これだけでもやり遂げておくべきだった。悪夢の日から1年すぎたのに、何もできていない。この国はもはや国家運営ができなくなってしまっている。あるのは選挙のことだけしか考えていない政治と、まったく政治を信用しなくなっている国民との大きなずれである。

 民主党政権はものを決めるためのルールを持たない。だから朝から晩まで議論を続ける。同じ話の堂々巡りが続く。「野党の協力を仰ぎたい」などというが、野党からすれば、だれと話をすれば物事が通じるのかがさっぱり分からないという。「政治主導」を掲げて意思決定のメカニズムから官僚を締め出した。危機管理の情報を持っているのは官僚だから、締め出したら当然、情報は入ってこない。情報もなく、経験も判断力もない政治家同士が延々と議論しても何も決まらない。

 福島原発事故でどのようにして廃炉に持っていくのか。核燃料棒をどう処理するのか、何も決まっていないし、展望もない。ただひたすら「除染」だという。除染の費用がどのぐらいになるのかさえ不明だ。20兆円という数字もあるが、いくらカネを使っても洗い流せるものではない。山をどうするのか。森をどうするのか。地上に残る放射線量よりも、太平洋に流れ出たもののほうがはるかに多い。「住み慣れたふるさとへ戻りたいという住民に寄り添って少しでもその可能性を追求したい」と政府はいうが、これこそ究極の大衆迎合主義ではないか。すべてを除染することなどできないのだから、どこまで進めるのか線引きすべきだ。そのうえで住民が戻れない地域を確定して、そのことをはっきりと伝え、次善の策を考えるのが、ほんとうの政治の責務だろう。

 被災地を復興しようにも膨大ながれきの山がそれを阻む。「絆」の大合唱の一方で、処理を引き受けるのはごめん、という日本全体を覆う自己中心主義。これが日本のいまの姿なのだ。新しい日本をつくるチャンスという話はよく聞くが、結局は何も変わらない。むしろいかにも情けない国家の姿が浮かび上がるだけだ。

 福島原発事故の直後、自衛隊のヘリコプターがバケツに水を汲(く)んで、空からかけた。風でうまく水がかからない。あの場面は日本国民にとって忘れられない屈辱として後世に残るだろう。科学技術大国だったはずの日本の現実なのである。「安全神話」が危機管理を形骸化させた。もしもの際のために福島原発に用意したロボットも、「国民を不安に陥れる」という理由で廃棄されていた。「想定外」という言葉が政府関係者や東京電力幹部から出る。想定できないような事態に備えるのが危機管理のはずなのに、責任逃れのために使っているのだ。

 「がんばろうニッポン」とか「がんばれ東北」とか「絆」とか美しい言葉が乱舞する陰で、何か大事な事が見過ごされている。まずは「責任」である。これだけの大惨事でありながら、賠償論議を別にすれば、責任論はあまりない。業務上過失を問われて当然の気もするが、逮捕者も出ていない。「絆」キャンペーンは国民にがまんしろと言っているようなものだ。戦時中の「ほしがりません勝つまでは」と似ていないだろうか。

 大震災の報道の仕方も問題だと思う。あれだけの災害でありながら、日本人は立派だ、という海外の称賛を額面どおりに受け取っていないだろうか。大震災から1年でどれだけ被災地でひどい犯罪が起こっているかを多くの人は知らない。津波の映像には流される人が映っていない。散乱する遺体もメディアは報じない。代わりに犬が屋根の上で生きていたとか、美談だけが連日報じられる。もっとほんとうのことを国民は知らなければならないし、メディアも伝える義務がある。

 私は国家運営という視点で日本の政治を40年以上見て来た。さまざまな危機があったが、今回は危機管理がうまくいったな、といえるようなケースはひとつもなかった。つねに事後の「反省」ばかりである。ほんとうの意味で危機管理を考えるなら、政治休戦をして大連立を組むべきだった。英国などは何度もそうしている。この期に及んで論議を重ね、与野党妥協の道を模索しているようでは遅すぎる。危機管理の要諦は「最悪に備えよ」であり、復興のそれはあくまでもスピードだからだ。

(政治ジャーナリスト、四国新聞特別コラムニスト)

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