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政治不信

2012/02/06

冷めた目で歴史に学べ

 決めなければならないこと、議論しなければならないことがたくさんあるのに、国会がまるで学級崩壊のようになっている。揚げ足取り、いじめ、サボタージュ。攻める野党も防戦に回る与党も、お粗末極まりない。一刻の猶予も許されないいまの日本。政治に過大な期待は禁物だが、それにしてもいまや「政治」そのものが、問題解決を阻む大きな障害となっている。この体たらくにため息しか出て来ない。

 中曽根康弘元首相が実に的確なことを言っている(1日読売新聞朝刊)。

 「私は首相になって会いに来た人に、二つの心得を言っている。野田首相にも話した。一つは与党内で自分の味方になる人材で一緒に死んでくれる人、すなわち『運命共同体』を一日も早く作ることだ。私の場合は官房長官の後藤田正晴氏、幹事長の金丸信氏だった。もう一つは、サミットなどで連携できる首脳を探し、手紙などを出して相互協力を実現することだ。外交とは武器を持たない戦争、講和だ」

 後藤田、金丸氏ともに、もともと中曽根氏との関係が良かったわけではない。ともに田中角栄氏側近で、当時は「田中曽根内閣」などと揶揄(やゆ)されたものだ。考え方も性格もまったく違う他派閥の人物をうまく使いこなし、中曽根政権は多くの成果を残した。「首相の心得」としてはこれ以上のものはないと思う。野田首相にとっての「運命共同体」は果たしてだれなのか。鳩山由紀夫、菅直人の民主党二人の首相に比べ、野田首相はがんばってやっていると思うのだが、首相をサポートする態勢がまったくできていない。それどころか首相の足を引っぱるようなことが頻発しているのである。

 選挙介入を疑われた沖縄防衛局長の有権者リスト作成と職員への「講話」。前任の局長が不用意な発言の責任を取って辞任してから一カ月しかたっていないのに、なぜ? という疑問がわく。おそらく選挙があるたびに同じことをしていたので、問題になるなどとは想像もしなかったのだろう。自民党政権時代から続いていたものと見られる。

 この問題を含めて田中直紀防衛相への風当たりが強い。たしかに閣僚としての資質を疑いたくなるような国会答弁が相次いでいる。しかしながら、追及する野党側はポイントを稼ごうとしてほとんどいじめに近いような質問ばかり浴びせているように見える。一昔前には国会でこのようなやり取り、すなわちクイズまがいの質問を浴びせて閣僚が立ち往生することはあまりなかった。それは答弁の半分は「政府委員」すなわち各省の局長クラスが行っていたためだ。当然、質問する野党議員より知識経験ともに豊富であり、答弁もうまい。厳しい野党質問にも「かねて先生のご達見には敬服いたしておりました。手前どものような下僚に、お答えできるほどのものを持ち合わせてなどおりませぬが…」などと持ち上げておいて追加質問をゆるさぬような見事な論理を展開する官僚の技をたくさん見て来た。それがそうでなくなったのは、政府委員の答弁を原則禁止してしまったからだ。すべての質問に政治家が答える。官僚主導から政治主導への変化の一端だが、言葉尻ばかりのつまらない応酬になってしまった。この傾向が続くと、役人のような答弁のできる政治家がいい政治家だということになりかねない。器用な答弁はできなくとも、国民にとっていい政治家ということもあるはずだ。

 いまの日本は非常時である。前例を踏襲していればすむような状況ではない。震災復興、福島原発の処理、厳しい経済運営、それに何よりも財政再建と問題は数えきれないほど多い。それなのに政治は得か損かだけで動いているように見える。総選挙でどちらが勝つか、また政治家個人で見れば、自分が当選するためには何が必要か、を基準に動いている。国家国民などと口にはしても、それが本心とはとても思えない。そこまで政治不信は深いものになっている。

 行き詰まった政治が、強い指導者を求めてさまようのは、歴史が証明するところだ。石原慎太郎東京都知事を軸とする「石原新党」への期待も、橋下徹大阪市長らの「維新の会」にそそがれる熱いまなざしもそのあらわれである。しかしながらこうした流れがなかなか政治再生に結びつかないこともまた歴史の教訓である。古い政治家を新しい入れ物に詰め替えただけでは政治の再生はおぼつかない。国民にとっては冷めた目もまた必要なのだ。

(政治ジャーナリスト、四国新聞特別コラムニスト)

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