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欧州危機

2011/10/17

「対岸の火」はアジアへ

 ギリシャに端を発した欧州危機について書く。と、ここまでで読むのをやめようとする読者もいるだろう。なんだか小難しそうな話だし、欧州の話だから関心もないし、日本に住む自分には関係ない、と思っているあなた。そうではないのですよ。日本の経済、あなたの生活が脅かされそうなのですよ。かなりの確率で。簡単にいえば、いま欧州で起こっていること、そしてこれから米国やアジアに広がって行く問題は「民主主義の統治能力が市場のスピードについて行けない」ことで、いずれの国も政治の機能不全状態に陥っているということなのである。

  ギリシャの救済策がさまざま論じられてきたが、世界中の専門家の中で救済が可能だという見方は極めて少ない。救済できないことを前提にデフォルト(国家債務不履行)処理をしてIMF(国際通貨基金)の手で再建への道をさぐるという道しか事実上、残っていない。財政を引き締めて賃金を半分にするという救済の条件をギリシャ国民がのむとは思えないからである。欧州各国が血相を変えて対応に走り回っているのは、ギリシャからアイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアと広がって行くのではないかと恐れているからだ。

  経済規模の大きいフランスも大変だ。欧州全体からドルが消えつつあるのだ。欧州の銀行はユーロよりもドル建て決済のほうが多いが、ギリシャ国債など不良資産を大量にかかえ経営が悪化している。国際ルールの自己資本比率に満たなくなり、アジアから貸し付けを引き上げるなど、懸命に資金をかき集めている。

  韓国ウォンやシンガポールドルなどアジアの通貨が下落しているのはドル高になっているからである。とともにアジアで稼いでいた多国籍企業の業績が悪化し、アジア、とくにこれからは中国からの撤退が相次ぐようになると、確実にアジアの危機到来となる。中国が風邪を引けば日本は肺炎になるといわれるような現状では日本への影響は計り知れない。

  ならばどうなるのか。結局は言葉も歴史も違う国々が一つの統一通貨ユーロのもとに結集するという基本設計に無理があったのだ。通貨は一つでも、EU各国の財政は別々だから、ドイツとギリシャが同じ通貨でここまできたことのほうが不思議なのだ。

  「われわれにはシエスタ(昼食のあとの昼寝の習慣)の文化はない」と北欧やドイツなど欧州の北部の国々は南欧の「怠惰」を皮肉っている。問題の発火点だったギリシャをユーロから閉め出すという考え方もあるが、それでは問題の解決にはならず、ギリシャの次はどこだ、となるだけだ。そこでドイツではドイツがユーロを離脱するという議論が台頭している。すなわち新しい「マルク」の復活である。その場合ドイツの銀行が保有する債権はユーロ建てなので、そのままでは銀行が破綻することから、銀行国有化は避けられまい。ドイツのほかにオランダ、フィンランド、オーストリアの4カ国で第2ユーロという構想も出ている。

  欧州危機の影響をもっとも受けるのはアジアである。欧州の金融機関は、自国の経済の規模を無視して膨張し、アジアに多額の貸し出しをした。それを一気に回収に動けば、アジア経済は立ち往生する。もともとユーロという統一通貨はノーベル経済学賞受賞者ロバート・マンデル氏の「最適通貨圏」理論に基づくものだが、あまりにも参加国が多く、範囲も広すぎたのではないか。

  わが国では財務省や金融関係者、学者などは日夜真剣に議論しているようだが、政治の世界では「対岸の火事」である。住専処理の際の対応の誤りがいかに事態を悪化させたかを教訓として欧州に伝えようという動きも見られない。円高をどうするか、デフレからどう脱却するかという固定的な視野でしか見ていない。日本のメガバンクにはアジアの金融資産を引き受けてくれないかという打診が欧州から来ているという。それも驚くほど巨額なのだ。円高のいま日本にとっては、半値近い額で手にすることができる。「チャレンジ(挑戦)バット・コウシャス(慎重に)ですかね」というところらしい。

  福島原発の放射線を抑え込み、被災地を復興させ、財政再建へ動きつつ、欧州の混乱による信用収縮の危機を乗り切らなければならないのだ。政治の現状を嘆いてばかりいて済むような状況ではない。

(政治ジャーナリスト、日本経済新聞客員コラムニスト)

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