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日中ジャーナリスト会議

2011/10/03

うつむく日本 自信の中国

 「あなたは誰? と日本に問いたい。日本は何を目指しているのかさっぱり分からない」。今回で6回目になる日中ジャーナリスト会議に出るため、北京へ行ってきた。冒頭のセリフは中国のもっとも影響力のあるニュースキャスターが日本側に放ったものである。その時々の日中関係に影響されながら、けんか腰だったことも少なくない。そして今回は、うつむき加減の日本と、自信みなぎる中国のコントラストがくっきりと出ていた。

 中国にはほぼ毎年出掛けているが、そのたびに変化の大きさに驚かされる。日本にいて描いている中国のイメージと、実際に見るのとでは相当な差がある。高速鉄道や地下鉄の事故と、それを覆い隠そうとする当局。あるいは軍事費の拡大と尖閣諸島問題で見せる中国の脅威。GDP(国内総生産)で日本を抜いて世界第2位になった傲慢(ごうまん)な国。それが大方の日本人のいまの中国観ではないだろうか。

 北京の街ははち切れんばかりのエネルギーにみちていた。繁華街は深夜まで人があふれ、交通渋滞も昼夜の区別なく続いていた。排気ガスで空はどんよりと曇る。車を減らすために北京市は乗り入れ許可の車のナンバーを奇数の日と偶数の日で分けることにした。しかし、車は減らない。2台持つ人が増えただけだった。多くの市民の関心は不動産だった。土地は国有なので売買できるのは「使用権」だが、高級マンションは東京より価格が高い。万里の長城近くに別荘を持つのが大流行しているという。

 街を走っている車は東京やニューヨークより高級車が多いように思う。王府井などの繁華街では欧州のブランドの店がそろい、だれが買うのだろうかと不思議になるほど高価な商品が並ぶ。バブル全盛のころの東京よりお金のにおいがする。

 でも、会議に出席した中国の代表的ジャーナリストたちの発言は日本に対して驚くほど温かいものだった。大震災、福島原発事故への関心は強く、震災直後には被災地から何時間もテレビが生中継した。たくさんのことを日本から学ぼうという雰囲気がいま中国に出始めているという。日本人の冷静さ、勤勉、そして思いやり。日本を知ろうと日本に関する書物や映画、音楽がブームになっている。ルース・ベネディクトという米国の女性人類学者が戦後すぐに書いた「菊と刀 恥の文化」の中国語訳が長い間、ベストセラーを続け、「おくりびと」や「ノルウェイの森」という日本映画、それにアニメ映画が人気を呼んでいる。

 中国政府はネットでの書き込みから民主的な運動につながり独裁体制の崩壊につながった中東のようになることをことさら警戒している。ジャーナリストたちは「そのためには一定の規制はやむを得ないが、いまの中国で体制崩壊までつながる可能性は相当低い。共産党支配のこの体制以外にこの巨大な国家を支配できるものはないからだ」と口をそろえる。あるジャーナリストは「中国はだんだん個人の存在が大きくなっている。その逆に国家がだんだん小さくなってきている」と語った。高速鉄道事故などで政府当局の批判がメディアで当たり前のように行われている。私はこう述べた。「中国のジャーナリストの報道ぶりには緊張感を感じる。国家の圧力とときに戦いながら、徐々に社会を変えていることには頭が下がる。半面、日本では原発報道などでジャーナリズムの責務をきちんと果たしてきたかどうか反省すべきことがたくさんある」。

 日中双方ともにこれまでは極端な報道が目立った。中国で反日的なデモが行われたりすれば大きなニュースになり、逆に歴史認識などで中国メディアは日本を批判する。極端な報道が重なるとジャーナリストでさえも、歪(ゆが)んだイメージを互いに持つようになる。毎回の会議で修正していても、歪みは生じている。

 双方の意見が一致したのは、欧州の通貨危機にどう対処するかをめぐる議論のときだった。このままで行けば、アジアの通貨危機に拡大する恐れがある。日中が間断なく情報を交換し合い、共同して行動することが大事ではないかという意見でほぼ集約された。同時にかつてあったアジアの通貨統合については今回のユーロの危機で、文化や歴史の違う国同士が共通の通貨を持つことの難しさを知ったとする見方が有力だった。日本と中国で交互に開かれている日中ジャーナリスト会議。固く冷たい氷の塊のようなときもあったが、心を開けば、氷は溶けて行くことを互いに知ったことが、まずは一番の収穫だった。

(政治ジャーナリスト、日本経済新聞客員コラムニスト)

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