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原発

2011/08/01

ウソと隠蔽の歴史

 中国の高速鉄道事故で事故車両を壊して穴を掘って埋めている映像を見て、都合の悪いことを隠そうとするとんでもない国、と私たち日本人は思った。その直後、わが国の経済産業省原子力安全・保安院が原発シンポジウムで地元住民を動員し、肯定的な発言をしてもらうよう中部電力と四国電力に依頼していたことが発覚した。驚くことはない。どの国でも政府とは都合の悪いことは隠そうとしたり、何かを仕組んだりするものなのだ。とくに原子力に関しては世界中、隠蔽(いんぺい)とウソの歴史である。

  玄海原発のシンポジウムで九州電力が社員や子会社の人たちに出席を求めていたいわゆるやらせ問題が発覚したとき、こんなことはどこでもやっているはずだ、と感じた。上から言われなくとも愛社精神で参加した社員もいるかもしれない。日本とはそういう国なのである。言い換えれば、組織が個人を守ることはないが、個人は組織を守るのである。その結果、具合が悪いことになれば、個人は詰め腹を切らされる。記者会見で九電の社長が「そんな大問題ですか」と述べたことが象徴している。社長といえども組織は守ってくれずに詰め腹を切らされるのだ。

  福島の東電原発事故発生以降、どれだけの情報の隠蔽が行われ、ウソが飛び交ったか。原子炉は炉心溶解(メルトダウン)していることはないし、放射性物質は人体に影響を及ぼすようなレベルではない、そう説明してきたのではなかったか。数字をあげていかに安全かをテレビで説いていた「専門家」たちはその後、見かけなくなったが、どこで何をしているのだろうか。

  原子力発電ほど安上がりで安全なエネルギーはない、と日本国民は信じ込まされてきた。安いはずである。使用済み核燃料の処理や、今回のような事故の際の費用をまったく計算に入れていないのである。津波がくれば地下に置いた非常用電源が使えなくなることぐらい気がつかなかったのか。福島原発は米国の設計図で建設されたが、米国は竜巻を恐れているために地下に置いたのだという。それをそのまま日本に持ち込んだのだとしたら、何たることか。

  原発の事故はどこの国の政府にとっても具合が悪い。情報隠蔽は原発の歴史そのものなのである。1986年のチェルノブイリ事故は、事故そのものをゴルバチョフが知らなかった。1957年英国ウインズケール原発事故を英国国民が知るのは30年後だった。米国でもスリーマイル原発事故は有名だが、海軍軍事用試験炉の事故は全容不明である。それよりも深刻なのは原子力潜水艦の事故だ。軍事目的のため、ほとんど公表されない。世界中の海の底に原子炉を積んだままの原潜が眠っているのである。その数はまったくわかっていない。

  「人体に影響ない」はずの放射性物質が風に乗って東日本全域に飛び散り、刈り取りの後屋外に積んであった稲わらが汚染し、大問題になっている。その稲わらを食べたと思われる牛の肉が日本全国に3000頭も出荷されたのだ。出荷停止の福島などでは国が全頭買い上げる。そのカネはいずれ東電に請求される。天井知らずの賠償額になるが、東電をつぶすわけにはいかないので国が支援することになる。何のことはない。国民はさんざん苦しんだ上で東電の分も税金で払うことになるのである。

  54基の原発がすべて止まると大変なことになると政府も電力会社も経済界も言う。電力と復興資金の両方で「足りない足りない」の大合唱である。ほんとうに足りないのだろうか。ここまで真実を知らされてこなかったので、つい疑いたくなる。原発を残すためのプロパガンダなのではないかと。

  原子力のやっかいなところは、運転を止めればそれで終わりとならないことだ。脱原発を宣言したドイツでさえ、2022年目標である。放射性物質の漏れを防ぐのに、10年はかかるのである。菅首相が脱原発を宣言したとしても20年や30年先の話である。したがって「脱」も「維持」もそう変わらないのだ。政治的にどう表現するかの違いだけだ。首相が延命のために「脱」を口にしたことを多くの国民が感じ取っている。これもまた誠実さを欠いた原発にかかわるウソの一つだろう。日本を将来、いかなる国にするのかという国家戦略なしに原発の是非を論じてみても意味のないことなのである。

(政治ジャーナリスト、日本経済新聞客員コラムニスト)

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