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原発補償

2011/05/02

誰がどこまで支払うか

 東京電力への損害賠償請求に絡んで、米国の弁護士事務所が動き出している。スリーマイル島の原子力発電所事故の経験を活(い)かせるのでぜひ一緒に組まないか、と日本の弁護士事務所に働きかけているという。東電福島第1原子力発電所の事故は、補償、損害賠償の規模でも世界最大級になることは確実である。いったい、だれがどのようにして、どこまでの範囲で支払うのか。風評被害といえば、日本そのものが風評被害の被害者である。どこで線を引くのか。どこまでを東電が支払い、国民の税金は、果たしてどの程度使われることになるのか。

 原子力損害賠償法には一見矛盾しているように受け取れる2通りのことが定められている。まず原発の事故による損害は、全額、電力会社が支払い義務を負うとしている。一方で「異常に巨大な天災地変」の場合、事業者の責任が免除されることになっている。今回の大震災と大津波が「異常に巨大な天災地変」に当たるかどうか。東電は「(免責になるという)理解もあり得ると考えている」(清水正孝社長)と控えめながら期待感をにじませている。

 しかし政府は「安易に免責等の措置がとられることは経緯と社会状況からあり得ないと私の個人的見解として申しあげておく」(枝野官房長官)と全面否定だ。菅首相も「一義的には東電の責任であり、免責ということは違うと思う」と述べる一方で「国策ということで原発を進めてきたので、当然、国の責任は免れない」と賠償責任は国にもあることを認めた。

 原子力損害賠償法では地震、津波、噴火などによる原発の事故発生については「政府補償契約」で1事業所あたり最大1200億円を国が支払い、残りは事業者である東電が支払うことになっている。一種の保険である。今回がこのケースなのか、それとも「異常に巨大な天災地変」なのか、最終的には裁判に持ち込まれる可能性もある。

 補償や賠償額がどの程度になるか不明だが、米国の金融機関は「10兆円」という数字をはじきだしている。その程度ではすまない、という観測もある。国の「原子力損害賠償紛争審査会」(会長・能見善久学習院大教授)は賠償の範囲についての目安として第1次指針をまとめた。(1)避難や廃業など政府指示による損害(2)漁業者の操業断念による減収など航行危険区域の損害(3)風評被害も含めた出荷制限による損害などを明記している。

 具体的な金額には一切言及していない。政府は東電に対し、この指針に基づいて仮払いを行うよう促しているが、だれにどれだけ支払うべきか調整するのはかなり難しい問題だ。この指針の範囲以外でも相当な賠償請求が行われるものとみられ、賠償の総額はそれこそ天文学的なものになりそうだ。とくに因果関係の証明が難しい風評被害のどこまでが賠償の対象となるのか。原発事故の結果「日本は危ない」と思われ、日本中の観光地で国内外からの予約取り消しが相次いだ。これらをどう考えるか、大いにもめそうな気配である。

 福島第1原発の6機はすべて廃炉になる見通しだが、廃炉にするための費用も数千億円といわれている。放射性物質がもれないようにするためにもこれから先、最低でも30年間は膨大な費用と人員を必要とする。これだけの負担を東電がすべて行うのは不可能だ。普通なら倒産だが、電力事業をどうするのかを考えるとそういうわけにもいかない。といって国有化するつもりも政府にはない。電力部分を切り離して分社化し、売りに出すのもひとつの方法だが、政府にはその考えもないようだ。

 原子力発電所の建設計画を認可した原子力安全保安院や原子力安全委員会にも当然責任はあるはずだが、もっぱら東電が矢面に立たされている。民間企業でありながら地域独占企業であり、国策推進事業でもあるという東電の立ち位置の複雑さが賠償問題を難しくしている。

 福島原発が津波で破壊された直後、東電の対応が遅れた、すなわち水素爆発を防ぐために空気を外へ排出する「ベント」が遅れたことや、水をかけて冷却する作業にすぐ入れなかったのは、東電が廃炉にしたくなかったからだといわれている。水をかける、とくに海水をかけることは廃炉につながり、そうなると保険は適用できないということで保険会社と東電の間で論争があったという話も聞こえる。

 おなじ被災地でも岩手や宮城は復興についての議論を始めやすいが、福島はこの先の展望がまったく見えてこない。世界中に広まった危険な地名としての「FUKUSHIMA」が元の「福島」に戻るには、まだまだ日本のすべてのサポートが必要だ。

(政治ジャーナリスト、日本経済新聞客員コラムニスト)

 四国新聞特約コラム「田勢康弘 愛しき日本」を一冊にまとめた「国家と政治 危機の時代の指導者像」が10日、NHK出版から刊行されます。これまでに掲載されたコラムの約8割に当たる47編と、東日本大震災を受けた書き下ろしで構成。新書判、233ページ、780円(税別)。

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