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閉 塞

2011/02/28

「救国内閣」検討しては

 政治の役割は国家を運営することだが、日本ではそれができなくなっている。舵(かじ)取り役不在の巨船は、ただ漂流するばかり。だから国際社会で熱い眼差(まなざ)しを向ける国はない。壊れた羅針盤はこの国を奈落へと誘う。最大の危機は、この国が危機に直面しているということに国民が気づかずにいるということだ。

  チュニジアから始まった中東・アフリカ地域の大混乱は、世界史を書き換えるほどのビッグバン(大爆発)ともいうべきもので、独裁国家が民主勢力に倒されるというような単純なものではない。

  世界のすべての要素を根底から覆してしまうほどの大激動なのだ。にもかかわらず、この国の政治家たちは、イスラムについてスンニ派とシーア派の区別もつかないせいか日本がどう立ち向かうのか国会で議論さえもしていないのである。

  この国の政治に間違いなく欠けているものは、自らの責任を認める潔さである。うまく行かないことは必ず自分以外のところにその原因がある。自分は間違っていない。悪いのはあいつの方だ、と声高に叫ぶ。与党対野党の関係ばかりか、同じ政党の中でも悪玉を作りたがる。口では国民のためになどと連呼してみせるが、次の選挙でどう生き残るかしか頭にない。一つ一つの問題の処理に、選挙に有利か不利かの価値観だけで当たるので、国政はうまく運ばない。

  そしていま、来年度予算審議が暗礁に乗り上げている。予算関連法案、とくに国債発行に必要な特例法案が成立しないと財政に大きな穴があく。過去にはこのようなケースでは首相退陣か衆議院解散・総選挙を野党側に約束して成立にこぎつけるという手法がとられた。今回はそれでもうまく行きそうもない。菅首相はそのいずれも強く否定しているし、自民、公明などの野党側は「首相の首を差し出されても協力できない」と拒否しているからだ。

  硬直した与野党関係に民主党の内部対立が絡む。「判決までの党員資格停止」の処分を受けた小沢一郎元代表の怒りはすさまじく、もはや倒閣をめざしているとしか見えない。野党側が内閣不信任決議案を提出すれば、同調しかねない空気が広がっている。菅首相も民主党執行部も小沢問題の処理を間違えたと思う。この微妙な時期に、すなわち党がまとまっていなければならない時期に、処分を下すというのは、どういう発想なのだろうか。代表選で国会議員の票でいえば、ほぼ二分するほどの200票を獲得した元代表を処分して、結束をはかろうとするのはどう考えても無理だった。世間の受けを狙い、同時に野党の協力を仰ごうという考えかもしれないが、どちらもうまく行かなかった。小沢氏の「強制起訴」は検察審査会によるものであって、99・8%有罪になる検察による起訴とは明らかに違う。無罪の判決が下る可能性もささやかれる中で、政権交代に貢献した大物政治家を追放しては、波が立たぬはずはない。

  民主党政権誕生以降、外交はすべて大きくつまずいた。米国、中国、ロシア、韓国。どの国とも関係はよくない。たとえば北方領土問題は、ちょっとした首相の発言で完全に解決への芽をつんでしまったといえるだろう。この政権の外交は、相手国に向かって何かを求めるのではなく、国内に向けて弁解するだけのアリバイ外交である。それで何かが進むほど外交は甘くない。領土問題は政治家が政治生命をかけて取り組まなければできるものではない。保身と言い訳の外交は国際社会に恥をさらけ出すだけである。

  内政・外交ともに閉塞(へいそく)からどう抜け出すか。もはや与党が、野党が、などと言っていられるような状況ではない。いずれの問題も一つの政党で担いきれないほど大きいのだ。おそらく選択肢はそう多くない。菅首相がだれかに交代しても、あるいは解散・総選挙でも問題解決にはならない。時間がかかりすぎるからだ。国民新党の亀井静香代表が提唱している「救国内閣」構想は検討に値すると思う。与野党の枠組みを一時取り払って、国家的な大問題を処理するための組閣をする。一定の期間がすぎたら、ただちに内閣を解く。予算関連法案の処理と、財政再建への道を開き、外交戦略を打ち立てる。これだけできれば十分である。問題なのは国民の反応である。世論は政治の妥協を嫌う傾向にある。「大政翼賛会」という言葉がよくメディアに登場する。党利党略なら論外だが、国家のためであれば、むしろ世論は後押しするぐらいの寛大さがあっていい。

  日本の閉塞状況を作ったかなりの責任は自民党と公明党にもある。いまの民主党だけの責任ではなく、政治全体の責任なのである。そしてこのような政治家や政党を選んだ国民にも大きな責任があることをわれわれは自覚しなければならない。

(政治ジャーナリスト、日本経済新聞客員コラムニスト)

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