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民主代表選

2010/09/06

閉塞状況打開かけ互角

 3カ月前には想像もできなかったことが起こるかもしれない。「小沢一郎内閣総理大臣」が誕生するかもしれないのだ。もちろん、現段階では菅直人首相と小沢氏と、互角の勝負というべきなのだが、政局はともすると「意外性」の方向へ流れやすい。ドラマを求めて動くことが少なくないのだ。菅首相勝利ではドラマ性に欠けるし、その後の展開も想像がつくような気がする。小沢氏はどんな総理になってどんな政策を手がけるのか。イメージがまったくわかない。閉塞(へいそく)状況を打ち破るには何をするかわからぬ小沢氏のほうが…という空気が広まりつつある。

  民主党の国会議員でも小沢氏と1時間以上話したことのある人は極めて少ない。だから、小沢氏が菅首相との共同記者会見や、テレビ出演などで笑顔をまじえて長い時間話すのを目にして民主党の政治家でさえ驚いているのである。「剛腕」「独裁」「無愛想」「数多くの疑惑」「怖い政治家」という印象を抱いていた一般の人々はもっとびっくりしているのではないだろうか。小沢さんは笑うんですね、とか意外に説得力のある話し方をするんですね、命懸けでこの国を立て直すという使命感のようなものが感じられる、などという声が、筆者のもとにもたくさん届いている。

  菅首相もまた、そこまで激しい言葉を使うかと驚くほど舌鋒鋭い。「カネと数の古い政治」にはもうおさらばしなければならない、と言い切った。ついこの前まで「幹事長を辞めたという事実は重い」と小沢氏をかばっていた首相が、野党なみの鋭さで小沢氏に切り込んだ。菅陣営には「やりすぎ」という声もあるようだが、この人は攻めに徹したときのほうが持ち味がでる。

  いずれにしろ選挙になってよかった。「トロイカ体制」という言葉で人事を含めた妥協が成立するというのが最悪のケースだった。自民党政権時代、小渕恵三首相が倒れたあと、いわゆる5人組の密室の協議で「森喜朗後継」が決まったのと同じことになってしまったからだ。第一、鳩山由紀夫前首相の動きは何がねらいだったのかさっぱりわからない。トロイカ体制とは小沢氏を幹事長などの重要ポストで処遇することと受け止められていたが、案外、仲介に動いた鳩山氏自身の処遇もからんでいたのではないか。「鳩山外相」説が、まだ消えていない。

  世論調査では国民の支持は菅首相8割、小沢氏2割と菅首相が圧倒的だが、この割合の差はどんどん縮まっているように思う。菅氏への支持は小沢氏がいやだからという消極的なものが多い。しかしテレビなどでの露出が増えるにつれ、小沢氏の好感度が急速に高くなっているとすれば、6割、4割ぐらいになるかもしれない。これが地方議員の投票や党員・サポーター票に反映されると、やや優勢といわれる国会議員票を合わせて小沢氏先行という見方につながる。

  小沢氏が勝ったら、どうなるだろう。勝っても首相にならないという可能性はご本人が否定したことにより消えた。内閣発足時の支持率は中曽根内閣発足時の20%台前半よりもっと低くなるかもしれない。政治とカネの問題をメディアが指摘し続ければ、1ケタまで下がる可能性もある。中曽根内閣は矢継ぎ早にさまざまな政策を手がけ、しだいに支持率を回復し、結局5年政権が続いた。逆に発足時に高い支持率の内閣は短命に終わることが多い。あまり高いと下がるしかないからだ。

  円高株安、シャッター街が常態化する地方、社会全体に充満する雇用不安。この閉塞状況を打破するにはだれを国家運営の責任者にするのがいいのか。これほど拮抗した争いは自民党時代でも角福戦争や大福戦争ぐらいしかなかった。まったくタイプの違う2人の政治家が言葉を武器に本気で戦う。その結果は自民党か民主党かという選択よりも、もっと大きな違いにつながるかもしれない。その意味で、民主党代表選挙は戦後政治史の中でも特筆すべき重要なものになるだろう。

  この20年ほどの間、政治の論点の軸は「小沢」対「反小沢」であった。長いその論争に決着をつけるかどうか。一方でこのところの「内閣支持率至上主義」ともいうべき傾向にどのような変化があるのかも注目される。代表選のあと、新たな連立枠組みとなるのかどうか、あるいは与党分裂・政界再編につながるのかどうか。あらゆる可能性を秘めながら、日本の将来を左右する重要な結果は14日に出る。

(政治ジャーナリスト、日本経済新聞客員コラムニスト)

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