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核廃絶

2010/08/08

キャンペーン先頭に立て

 暑さは、寒さよりも怒りや悲しみの度合いを強めるのではないか。広島と長崎、その爆心地に立つと、強烈な照り返しに目まいを感じながら、そう思う。人類はなぜ、核爆弾という大量殺戮(さつりく)器を発明し、なぜ、いまだに保有し続けるのか。世界を平和にするためと称して、いかに美しい理想を並べたててみても、核廃絶につながらないようでは、意味がない。日本ができること、そしてやらねばならぬこと、それは核廃絶キャンペーンの先頭に立つことだ。

  「INORI」というシャンソン歌手クミコが歌う曲がロングヒットを続けている。2歳で被爆した女の子が闘病中、薬の袋で鶴を折る。千羽に届けば、暖かい家に帰れると信じて。12歳で亡くなったその子は広島平和公園の「原爆の子」像のモデルである。さらりとした詩であり、どちらかといえば淡々としたメロディーである。

  詩を読んだときには、それほどの感動はなかった。しかし不思議なことに何度か曲を聴いているうちに、もう涙を抑えられなくなる。何の罪もないこの子の命を奪ってしまった人間という生き物の悲しさに、人は涙するのだ。あれから65年、われわれはいかなる教訓を得たのか。いかなる努力をしてきたのか、と自問してみる。広島の平和公園。肌を焼く照り返し。被爆した人たちの熱さや痛さや苦しみは、いかばかりだったのか。

  長崎の爆心地の周りの緑に目をやり、蝉(せみ)時雨に身を委ねていると、人間の罪深さと、己の力のあまりの微細なことに驚くしかない。ポツダム宣言を「無視」したのは、日本の弱さの裏返しだった。あそこで降伏の決断ができていれば、原爆投下はふせげたのではないか、というやりきれない「IF」が脳を駆け回る。

  広島の「平和記念式典」にはことし初めて駐日米大使と国連事務総長が出席した。ルース米大使の出席は核廃絶を掲げるオバマ大統領の指示に基づくものである。国内政治でかなり厳しい批判を浴びているオバマ政権のパフォーマンスに見えなくもないが、出席は歓迎すべきことで、これを近い将来のオバマ大統領の広島、長崎訪問につなげていかなければならない。

  日本にとって悩ましいのは、被爆国としての果たすべき役割と共に、米国の同盟国としての立場があるからだ。秋葉広島市長は平和宣言で米国の「核の傘」からの脱却と、非核3原則の法制化を求めた。この手の宣言で、国にここまで具体的な要求を突きつけたことはあまりないだろう。民主党政権といえども、簡単に「イエス」といえるようなテーマではない。菅首相は「核の傘」に言及せず、仙谷官房長官は「改めて法制化する必要はない」と記者会見で答えた。いずれも自民党政権時代と同じ姿勢である。

  核廃絶を唱えつつ、一方で米国の核の傘の中にいるという矛盾。秋葉市長のように核の傘から出るという選択は、日米同盟関係を破棄しないかぎりはまずあり得ない。核の傘に依存している状況で米国に向かって核廃絶へ具体的に踏み出すようにと求めることもなかなか難しいだろう。だれが日本を守っているのか、という米国民の反発も想定される。

  10年ほど前、米国の海軍戦争大学で行われたグローバル・シミュレーションに参加したことがある。中国が南シナ海周辺を軍事的に支配したという前提で、国連安保理を舞台に各国がどのような行動をとるかというなまなましいシミュレーションである。私の役回りは日本大使、費用負担を求める声にどう対応するかが問われる役どころだ。刻々と状況が変わる。米国も第7艦隊を集結させる。各国が廊下などでロビー外交を展開する。

  こうしたシミュレーションを米国のCIA(米中央情報局)やホワイトハウス、ペンタゴンの情報担当者らが観察している。「あなたはあのときどうしてあのような発言をしたのか」と途中で質問されたりする。現実もおそらくこのような手順、雰囲気だろうと思うほどだ。私が参加したのは日本からは外務省や防衛関係者が出ないからだ。国会で追及されるのを恐れているためのようだ。すなわち、そのようなものに出ると、戦争に捲(ま)き込まれる、という「捲き込まれ論」を警戒しているらしい。

  理想は大事だが、そればかりではうまくいかない。現実的な経験と戦略などがあって初めて核廃絶のために何をすべきかが浮かんでくる。理想と現実的対応、そのバランスが大事だということは論を待たない。

(政治ジャーナリスト、日本経済新聞客員コラムニスト)

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