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普天間問題

2010/07/26

絶望的、世界の不信怖い

 沖縄へ行ってきた。普天間問題がどうなるのかを探るために、沖縄の指導的立場にある人々に会って話を聞いた。おそらく本音では「普天間移設容認」と思われるような人も、ここまできてしまった以上、決着は困難という見方だった。楽観論に立つ人には一人も会わなかった。ある人が「菅直人政権は処理できずに普天間基地はいまのまま残るだろう」と述べると、周りにいた人たちはみな大きくうなずいた。

  鳩山由紀夫前首相が普天間問題決着の期限としていた5月末は、まったく進展を見ないまま、首相退陣で過ぎて行った。次なるめどは「8月末に名護市辺野古地区に移設する具体的位置や工法を決める」という日米合意。続いて11月初旬に予定されるオバマ大統領来日の際の首脳会談で決着させる―というのが期待していたスケジュールだった。

  この日程通りでうまく行くと考えている政府関係者はいまや一人もいない。「工法」すなわち埋め立てなのか、それとも鳩山氏がこだわった杭(くい)を打ち込んで上に滑走路を載せるという方式なのかも日米間はおろか政府部内での調整さえ行われていない。というよりは、進展させるため政治家が動いている気配さえ感じられないのだ。手のつけようがなく放り出している、といったほうがいいかもしれない。もともと菅首相は普天間に関心を示していなかった。鳩山政権の副総理だったにもかかわらず、普天間に関して印象に残るような発言はまったくしていない。決着の難しさを知っていたから、さわらぬ神にたたりなし、ということだったのだろう。

  自民党時代の日米合意をもう一度見直し、新しい日米関係構築のシンボルにしたいと意気込んでいた民主党。国外、県外というアドバルーンはすぐにしぼんでしまい、結局は自民党時代の案に戻ってしまった。しかし戻ったのは内容だけで、決着に必要な政治的環境は当時と似て非なるものになっている。沖縄の人々の心は大きく傷つけられ、容認派でさえ「反対」といわざるを得ないような県内世論ができあがっている。

  日米合意をたてに力ずくで政府が移設を強行しようとすれば、きっとガソリンをかぶって火を放つ人が現れるだろう。そうなれば、一歩も前には進めない。沖縄というところはそういうところなのだ。本土の人たちがそれを忘れていてはこの沖縄では何事もうまくいかない。沖縄の知人はそういう。たしかに自民党政権下ではたくさんの政治家、官僚が沖縄にネットワークを作った。そのうえで壊れやすい卵をくるむようにして物事を進めた。山中貞則、梶山静六、橋本龍太郎、小渕恵三、野中広務、鈴木宗男とたくさんの自民党政治家が沖縄へ飛び込んでいった。

  その積み重ねの上に沖縄があった。あまり似合わないかりゆしウエアを着た鳩山前首相が日帰りで説得に出かけても、火に油を注ぐだけなのは当たり前のことだ。

  民主党は沖縄をどう考えているのか。執行部は普天間問題への影響を懸念して参院選で沖縄選挙区の候補擁立を見送った。小沢一郎元幹事長が擁立を検討していた人物が県内移設反対だったからだ。本気で説得しようという気がなくてどうやって解決させるつもりなのだろう。一方で日米間で合意していた米海兵隊のグアム移転も予定の14年から先延ばしになりそうだ。海兵隊員が現段階でどの程度沖縄にいるのか判然としないが、約束では海兵隊員8千人、その家族9千人が移転するとして移転費用の大半を日本政府が負担することになっている。先延ばしにより、日本側の負担分がさらに増えるだろうとみられている。

  日本側の対応の遅れが、米政府の失望を誘ったようにも見えるが、日米双方で普天間問題棚上げ、すなわちこのまま現状を固定化してしまう方向へ向かいそうだ。9月中旬には辺野古のある名護市の市議選がある。この時期は民主党の代表選と重なる。オバマ訪日の直後の11月中旬には沖縄県知事選がある。仲井真弘知事が再出馬するのかどうかが最大の焦点だ。出馬を否定していないという理由で民主党は再出馬に期待をかけているが、容認派だった知事も、ただちに辺野古移設を認めるというわけにはいかないだろう。

  結論をいえば普天間問題の解決は絶望的だ。政党間の利害や責任論などはどうでもいい。大事なのは、これによって国際社会で日本がまったく信用されなくなってしまうのではないかということだ。加えて財政危機に拉致問題。日本がどうするのかを世界中が冷ややかな眼で見ている。

(政治ジャーナリスト、日本経済新聞客員コラムニスト)

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