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参院選後

2010/07/13

敗北民主に3つの難問

 有権者の心の何とうつろいやすいことか。劇的な政権交代から、まだ1年になっていないのである。自民党にお灸(きゅう)をすえ、民主党に政権を委ねるという大胆な道を選択したばかりの「有権者の心」は、民主党を今回、惨敗に追い込んだ。問題をすぐに解決してくれるような青い鳥はどこにもいない。政治家もそして有権者であるわれわれも、現実を直視して、財政再建などの問題に取り組まねばならない。急がなければならない。嘆いてばかりいられないのだ。

  消費税を取り上げようとした菅直人首相の姿勢は、決して非難されるべきものではない。財政状態の深刻さから目をそむけ、国民においしい言葉だけ並べるのでは、政治はあまりにも無責任すぎる。ただし、取り上げるのは間違いではなかったが、説明の仕方があまりに稚拙だった。いつの時代でも、どこの国でも「増税」を国民が歓迎するはずがない。しかし政治のもっとも重要な役割は国民に税負担をお願いすることなのである。財政再建に取り組んできた古今東西のケースを分析してみると、はじめに増税ありき、という手順でうまくいったケースはほとんどない。ムダの削減などの手を尽くしたうえで、国民にていねいに増税について説明する。時間をかけ、かつ理屈の通る説明をしてはじめてうまく行くのである。

  菅首相がやらなければならないことは3つある。まずは自らの責任問題。首相は続投の方針を示したが、過去の例をみても、そう簡単に責任を問う声が収まるとは思えない。3年前の参院選は安倍晋三内閣のときだった。自民党は37議席と大敗したが、安倍首相は衆議院で300議席を超えていることも理由にして続投に意欲を示した。なぜ、責任を取らないのか、という声を無視しようとしたが、結局は1カ月後に体調不良で突然首相を辞任した。

  民主党も衆議院で300を遥かに超える。状況はよく似ているが、これほどの惨敗を喫し、その後もながく首相の座に居続けられた例はあまりない。

  2番目の問題は参議院で与党が過半数を確保できないために、どこかと連立を組まないとすべての法案が廃案になってしまう事態も考えられる。民主党はかつて衆参の「ねじれ」を理由に自民党が示す日銀総裁人事などを次から次へと葬ったことがある。その逆のことをされるかもしれないのだ。

  公明党は民主党との連立をかなり強い調子で拒んでいるので、可能性があるとすれば、みんなの党だろう。渡辺喜美代表の口ぶりにも参院選後、変化が感じ取れる。新たな連立のパートナーを探すのはそう簡単ではない。みんなの党と国民新党では郵政問題などまったく考えが違っている。

  3番目の問題は9月末の民主党代表選である。「静かにしていろ」と菅首相から屈辱的なことをいわれた小沢氏が、淡々とした気分でいるはずがない。はらわたが煮えくり返っているのではないか。決して過去を水に流さないタイプの政治家だけに、菅首相引きずりおろしに動くのではないかと思われる。

  代表選でだれかを対抗馬として担ぐか、あるいは自らが代表選へ立候補するか。また他党へ手を突っ込んで、大物政治家を一本釣りして本会議での首相指名選挙で大勝負に出る可能性もある。かつて細川護煕氏を擁立したし、海部俊樹氏や渡辺美智雄氏を首相に担ぎだそうとしたこともある小沢氏のいわば得意技だ。みんなの党の渡辺代表を首相にという親子2代にわたる手も可能性の範囲内にあるだろう。

  この3つをうまく処理できたとしても問題は何も解決しない。財政再建と普天間問題は民主党だけの力では絶対に解決できない。頭を下げてでも自民党とともに解決にあたるべきだ。この2つの問題に限定し、期限を切った連立内閣がもっとものぞましい。民主党と自民党が互いに非難合戦に明け暮れているだけでは何も決められないし、迷惑するのは国民である。

  民主党はまず自分たちは政権党なのだということを自覚しなければならない。権力を握っているのにいつまでも「反権力」的な気分でいるのは間違いだ。国家を運営するということはきれいごとばかりではできないこともあるのだ。座標軸を与野党の間に置くのではなく、国家や国民に合わせると、道が開けてくるのではないか。

(政治ジャーナリスト、日本経済新聞客員コラムニスト)

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