天気予報を見る
 
新聞購読申込
連載TOP > 連載 > 田勢康弘 愛しき日本 > 記事詳細

連載

 
 
 

世襲制限

2009/06/14

それだけが争点なのか

 子供が親の地位や職業を継ぐのが「世襲」で、歌舞伎役者でも落語家でもあるいは相撲取りでも大概は美談である。唯一、美談にならないのが政治家だろう。それを禁止、もしくは制限しようという話で政界は大騒ぎしている。世襲政治家ファミリーの典型のような党首が「政権交代」をかけて競っているさなかに、この議論、選挙目当ての茶番のようにしか見えないのだが。

  世襲政治家を全面的に肯定するつもりはもちろんない。しかしながら、禁止するとか制限するとか、そんなことが果たしてできるだろうか。政党のルールとして公認しない、という話なら、政党で勝手に決めればいい。世間を巻き込んで大騒ぎすることもないだろうに、大騒ぎするのは選挙目当てだからだろう。

  第一、世襲とは何か。親や祖父母が政治家で、子供が同じ選挙区で続いて立候補すること、などという定義づけが行われているが、それならば、かつて首相をつとめた肥後藩主細川家18代目の細川護煕氏は世襲でなかったことになる。だれもが「細川」の名を意識し、メディアもさんざん美談のように報じていた。麻生太郎首相も、鳩山由紀夫民主党代表も、選挙区が違ったりするので世襲ではないということになる。おかしくないか。

  たしかに世襲議員は多い。衆議院議員のほぼ3人に1人が身内に政治家がいたことになるらしい。これほど増えると、政治家になりたいという若い人の政界参入の道をふさいでいることになるのはその通りだろう。批判を覚悟でいえば、それでも選ぶのはその選挙区の有権者なのだ。悪い世襲政治家が選ばれたとしたら、その責任の半分は選んだ有権者と、そういう世襲政治家を公認した政党にあるのではないか。

  世襲政治家がどんどん増えるのには理由があると思う。ひとつは保守政治家に多い「後援会」組織の存在である。地元の政治家が引退するとき、後継者をどうするかが政党支部や後援会で議論になる。後援会を解散、もしくは分裂させないためには同じ姓を引き継ぐ人物を担ぐのがもっとも無難な道である。養子にしてまで名前にこだわるのはそのためである。

  中川秀直元自民党幹事長はもともと「佐藤」姓だったが、岳父中川俊思氏のあと出馬した。その中川氏は現在秘書をしている実の息子の俊直氏に選挙区を引き継ぐ考えはない、と明言し、世襲制限の旗振り役となっている。しかし憲法は職業選択の自由を保障しているので、法律で禁止や制限することは無理だ。米国ではブッシュ親子が大統領になったし、夫婦で大統領ということも起こりそうになったばかりである。ケネディ家はジョセフ・ケネディからはじまって何人の政治家を誕生させただろう。

  世襲が多いのは政治家という職業には「うまみ」があるから、と考えている人も多いだろう。でもそんなにうまみがあるだろうか。40年、日本の政治家を見てきたが、お金に困っていない政治家はごく一部で、多くの政治家は苦労している。選挙にも政治活動にもお金がかかる。国が支給する歳費は年間2700万円ほど。これでも高すぎるという批判もあるだろうが、国が面倒をみてくれる3人の秘書以外の秘書やスタッフの生活は個人の資金から出す以外にない。少しでもお金を残すために事務所経費をごまかしたりするのだ。

  普通の勤め人が選挙に出ようとすると、まず会社を辞めなければならない。なけなしの金をすべてつぎ込んでももちろん足りない。親類や知り合いから頼み込んでかき集める。当選すればいいが、落選、とくに供託金没収などということになれば生活もできなくなる。もとの会社にはまず戻れない。つまり選挙に出るということはハイリスク、ローリターン、いやノーリターンかもしれないほど割の合わないことなのである。

  そのうち選挙に出る人が枯渇する日が来るかもしれない。野心家でもなければめったに選挙など考えないのが普通だ。かつて政策新人類と呼ばれた若手政治家たちはほとんどが2世、3世の政治家だった。高学歴で役所や金融機関などに勤めた経験があるから、役人と勝負できたという側面もある。いささか物騒な隣の国では3代目の「世襲」独裁体制に移行するかどうかで世界を騒がせている。100年に1度の経済危機というこの時期に「世襲」が総選挙の最大の争点とすれば、何とも情けない。

(早稲田大学大学院教授、日本経済新聞客員コラムニスト)

47CLUB(よんななクラブ)

47CLUB
全国の良質な品々を厳選してお届け

盆栽

盆栽
産地香川から盆栽文化をお届け

オンラインショップ情報

ショップ情報
オススメの買い物サイトをご紹介

讃岐囲碁サロン

讃岐囲碁サロン
ネットで世界の囲碁ファンと対局!

みみより新聞

みみより新聞
視覚障害者向けニュースサイト

住宅展示場情報

住宅展示場
家造りに関する情報盛りだくさん

健康新聞

健康新聞
元気な暮らしに役立つ情報を紹介

ちょこっと広告・パネット

パネット
四国新聞を伝言板として使おう!

求人情報紙・ジョブ

ジョブ
週刊発行!チラシタイプの求人情報

おりーぶ通信

おりーぶ通信
女性通信員のページ

▲このページのトップに戻る
購読のお申込みは0120-084-459

SHIKOKU NEWS 内に掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。 すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。

Copyright (C) 1997- THE SHIKOKU SHIMBUN. All Rights Reserved.