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楽観主義のすすめ

2007/12/17

来年は皆で明るい年に

 英語にHalf empty  Half fullということわざがある。目の前にあるコップ半分の水を「もう半分しかない」と考えるか「まだ半分もある」と考えるか。前者は悲観主義、後者は楽観主義、同じことでも楽観的に考えたほうがいいと強調したいときに使われる。日本人は断然悲観主義的である。「もう半分しかない」といつも嘆いている。

  師走も押し迫り、あわただしさの中で来し方を振り返る。大変な一年であった。今年を象徴する漢字が「偽」という文字であったことが何よりもとんでもない一年だったことを物語っている。政治とカネをめぐる数々のウソや偽の領収書、社会保険庁のデータ紛失のウソ、これでもかこれでもかと出てくる食品をめぐる偽装、国技相撲での新弟子死亡事件から大麻栽培の大学ラグビー、極めつけは政権を投げ出してしまった戦後最年少の首相。

  今年の四文字熟語で秀逸だったのは「突然変異」ならぬ「突然返位」であった。学力はいつのまにかどんな国か想像もつかないようなところに負け、地域格差で各地は意気消沈している。こんなことでいいのだろうか、日本はどうなってしまうのだろうかとわれわれの不安は拡大するばかりである。「ここにあった大型店はことし撤退しました」「ごらんの通り駅前商店街は貸し店舗の張り紙ばかりです」。全国至る所で同じセリフを聞く。

  一方で東京ばかりが豊かに豪華になっていくように見える。一個千八百円のベルギー産のキャベツがすぐに売り切れる都心のスーパー。一泊七万円よりの外資系ホテルは、一カ月以上前でないと予約できないのだという。テレビ番組の大半は東京で制作され、芸能人がふざけているだけの番組が全国を制覇し、それにあこがれる若者たち。

  こんな東京のどこがいいのか、どこが豊かなのか。覚悟を決め勢いをつけて乗り込まないと電車の中に入れないラッシュアワーで定年まで往復三時間通い続ける東京の勤め人。道路に線を引いただけの幅五十センチほどの道を、車にひかれそうになりながら駅まで通う。相当な税金を払っているのに、政治の世話になったという実感がまったくないままの都会の居住者。

  発想を変えて楽観的に考えたら、想像もつかないような明るい明日が見えてくるのではないか。豊かないまのほうが、貧しかった昭和三十年代よりずっと幸せといえるだろうか。裸電球の下のちゃぶ台で一家全員がすくないおかずを分け合って夕食をたべ、みなでラジオの番組を聴いていたころのほうが、身内が殺しあうような現代よりも、人間的だったのではないか。

  老舗までこんな偽装を、と怒るよりも、どこもみな同じようなことをしていたのに、やっと悪事がばれるような社会になったのだ、と考えれば、どうです、気分も晴れるというものでしょう。日本はだめだ、だめだと嘆くよりも、いいところは何かと目を皿のようにして探してみる。あった、あった、こんなデータがある。英国のBBCと米メリーランド大学が世界三十三カ国の人々が他国をどう見ているかを調べたら、中国と韓国以外の国が日本をもっとも世界に貢献する国だと答えたという。

  悲観的なものの方がニュースになりやすい日本では、あまり大きく扱われなかったが、日本も捨てたものではないのである。まだ、ある。日本以外では考えられないことが。たとえば電車の中での居眠り。夜の公園を女性が一人で歩くこと。街の至る所にある屋外の自動販売機。日本の治安がいかにいいかということの証明である。来年は日本の良さを意識して、みんなで明るい年になるようにしたいものだ。気は持ちよう、というけれど、国のレベルでもおなじことだと思う。あれがない、これがない、どうして自分たちだけが、と悲観的に考えるより、ほんとうに何が必要なのかを考える、そういうきっかけをつかむ年になればいい。

  「偽」はいずれ化けの皮がはがれる。政治家の公約も、役人の弁解も、見せ掛けの豊かさも、そして大学さえ入れてやれば、といううわべだけの学歴も、害にしかならない時代が来たのである。大事なことは他と比較して現実を悲観するのではなく、自らどのような目的のために何をすべきなのかを考える、そういう価値観を次の世代に植えつけてやることである。乾ききった砂漠でやっと手にした一杯の水が、どれほど貴重でどれほどおいしいかを教えてやることである。

  ほしいものは何でも手に入る世の中は決して幸せを生み出さない。親が、教師が毅然とした生き方をしていれば、言葉がなくても子供たちはそこから自然に何かを学ぶ。親の背中が指し示す「生き方」ほど尊いものはない。まだまだ「半分もある」のだ。

(早稲田大学大学院教授、日本経済新聞客員コラムニスト)

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